国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(建造物)
各棟情報
名称
:
来迎院多宝塔
ふりがな
:
らいごういんたほうとう
棟名
:
棟名ふりがな
:
来迎院多宝塔
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員数
:
1基
種別
:
近世以前/寺院
時代
:
室町後期
年代
:
弘治2
西暦
:
1556
構造及び形式等
:
三間多宝塔、こけら葺
創建及び沿革
:
棟礼、墨書、その他参考となるべき事項
:
指定番号
:
02493
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2006.12.19(平成18.12.19)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
重文指定基準1
:
(五)流派的又は地方的特色において顕著なもの
重文指定基準2
:
所在都道府県
:
茨城県
所在地
:
茨城県龍ケ崎市馴馬町
保管施設の名称
:
所有者名
:
来迎院
所有者種別
:
管理団体・管理責任者名
:
来迎院多宝塔
解説文:
詳細解説
来迎院は,弘治2年(1556)頃に境内が整えられた天台宗寺院で,多宝塔も同時期に建てられた。
多宝塔は,下層を方三間とし内部に須弥壇が置かれ,上層を円形平面とし腰組付の縁を廻らし,こけら葺の屋根の上に相輪を戴く。当地で活躍していた前嶋大工の手になり,同大工による薬王院本堂(水戸市,重要文化財)などと共通する意匠をもつ。
来迎院多宝塔は,均整の取れた外観で,北関東地域における室町期の特徴を細部に良く示す多宝塔として,高い価値がある。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
来迎院多宝塔
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来迎院多宝塔
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解説文
来迎院は,弘治2年(1556)頃に境内が整えられた天台宗寺院で,多宝塔も同時期に建てられた。 多宝塔は,下層を方三間とし内部に須弥壇が置かれ,上層を円形平面とし腰組付の縁を廻らし,こけら葺の屋根の上に相輪を戴く。当地で活躍していた前嶋大工の手になり,同大工による薬王院本堂(水戸市,重要文化財)などと共通する意匠をもつ。 来迎院多宝塔は,均整の取れた外観で,北関東地域における室町期の特徴を細部に良く示す多宝塔として,高い価値がある。
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詳細解説
来迎院多宝塔 一基 来迎院は、茨城県龍ケ崎市に所在する天台宗寺院である。永正一四年(一五一七)に、天台宗寺院の逢善寺がこの地に開いた草堂を来迎院の創始と伝え、弘治二年(一五五六)に延暦寺より覚仙上人が第一世として入山し、開祖となった。創建後の経緯は詳らかでないが、江戸後期の境内建物の普請時に東叡山寛永寺の援助を受けた記録が残り、近世には寛永寺と関係があったことが窺える。 寺地は市内北西より延びる舌状の稲敷台地東端の裾に位置し、境内西奥に本堂が東面して建ち、境内東側の前面道路から本堂正面に至る参道の北側に多宝塔が南面して建つ。 来迎院多宝塔は三間多宝塔で、相輪の刻銘により、弘治二年に当地の守護であった江戸崎城主土岐治英の支援を受けて建立されたことが判る。また建立時には、当地で活躍していた前嶋大工が普請に関わった。前嶋大工は、現在のつくば市近辺を拠点に活動した大工で、関連する遺構に重要文化財西蓮寺仁王門(天文一二年(一五四三))、同薬王院本堂(天文二〇年(一五五一))などがあり、いずれも来迎院多宝塔と同類の細部意匠を備えている。 建立後の経緯は詳細を欠くが、安政七年(一八六〇)に上層の軒廻り解体を含む修理と屋根葺替が行われ、昭和三六年に屋根のこけら葺が鉄板葺に改められた。平成一〇年から一三年にかけて保存修理が行われ、改変部分が復された。 下層は方三間で、内外ともに円柱を用い、四周に切目縁を廻す。内部は来迎柱を入側筋より二一センチメートル後退させ、前面に須弥壇を置き、内部を弁柄塗とする。天井は井桁に組んだ梁組を現し、中央方一間に鏡天井を張り、周囲は化粧屋根裏とする。側廻り各面の中央間は両開桟唐戸、両脇間は二重の板壁として、外側を横板張、内側は縦板張とする。組物は出組、中備は中央間に斗のみを付ける。軒支輪を廻し、軒は二軒繁垂木とする。 上層は下層地垂木上に組んだ柱盤の上に十二本の円柱を円形に立て、貫、長押、台輪で固める。心柱は柱盤上に架け渡した柱踏に立てる。軸部周囲には腰組付の縁を廻し、高欄を設ける。腰組は出組で支輪を付け、縁下に漆喰亀腹をつくる。柱間は幣軸付の板壁とする。組物は放射状の四手先組とし、小組小天井、軒支輪を廻す。軒は二軒繁垂木とする。 屋根は上下層ともこけら葺とし、相輪を上げる。 来迎院多宝塔は、関東以北に残る数少ない多宝塔であり、均整の取れた外観をもつ。細部意匠は、和様を基調としつつ木鼻などに禅宗様を採り入れており、室町期の北関東における特徴を良く示し、価値が高い。同地方で活躍した大工、前嶋家の技術的特徴を知る上でも重要である。 【参考文献】 『茨城県指定有形文化財 来迎院多宝塔保存修理工事報告書』(来迎院 二〇〇三年)