国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(建造物)
各棟情報
名称
:
小玉家住宅
ふりがな
:
こだまけじゅうたく
棟名
:
主屋
棟名ふりがな
:
しゅおく
小玉家住宅 主屋
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員数
:
1棟
種別
:
近代/住居
時代
:
大正
年代
:
大正12頃
西暦
:
1823頃
構造及び形式等
:
台所部、座敷部、中二階部よりなる
台所部 木造、建築面積93.61㎡、一部二階建、東面浴室及び便所附属、鉄板葺、南面座敷部に接続
座敷部 木造、建築面積305.60㎡、西面庇付、鉄板葺
中二階部 木造、建築面積57.89㎡、鉄板葺、北面座敷部に接続
創建及び沿革
:
棟礼、墨書、その他参考となるべき事項
:
指定番号
:
02533
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2008.12.02(平成20.12.02)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
重文指定基準1
:
(一)意匠的に優秀なもの
重文指定基準2
:
所在都道府県
:
秋田県
所在地
:
秋田県潟上市飯田川飯塚字飯塚68番地
保管施設の名称
:
所有者名
:
所有者種別
:
管理団体・管理責任者名
:
小玉家住宅 主屋
解説文:
詳細解説
小玉家は醸造会社の創業家で、主屋は木造平屋建、文庫蔵は土蔵造3階建、米蔵は木骨煉瓦造3階建、車庫は煉瓦造で、これらの建物は大正12年に建てられた。
主屋は、座敷の外側に土縁を廻らした座敷部や、床を高くした中二階部などを連結させたつくりとなり、庭園観賞を意識した接客空間を構成する。秋田杉など吟味された良材を用いて精緻に施工され、優れた意匠をもつ近代和風住宅である。
また敷地内の3棟の土蔵は、近代構法に伝統技法を融合させた洗練されたつくりで、価値が高い。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
小玉家住宅 主屋
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小玉家住宅 主屋
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解説文
小玉家は醸造会社の創業家で、主屋は木造平屋建、文庫蔵は土蔵造3階建、米蔵は木骨煉瓦造3階建、車庫は煉瓦造で、これらの建物は大正12年に建てられた。 主屋は、座敷の外側に土縁を廻らした座敷部や、床を高くした中二階部などを連結させたつくりとなり、庭園観賞を意識した接客空間を構成する。秋田杉など吟味された良材を用いて精緻に施工され、優れた意匠をもつ近代和風住宅である。 また敷地内の3棟の土蔵は、近代構法に伝統技法を融合させた洗練されたつくりで、価値が高い。
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詳細解説
小玉家住宅 四棟 主屋、文庫蔵、米蔵、車庫、土地 小玉家は、明治一二年創業になる小玉醸造株式会社の創業家で、旧羽州街道沿いに屋敷地を構えており、周辺には、醸造用の煉瓦蔵や分家屋敷などが建ち並んでいる。 創業当初は醤油や味噌の醸造を専らとし、醸造所の一郭に居を構えていた。大正二年に清酒の醸造を始め、同九年に約一五〇メートル南方の敷地を取得、翌年住宅建設に着手し、同一二年頃、主屋以下、文庫蔵、米蔵、車庫が完成した。施主は小玉友吉で、主屋の大工棟梁は半田嘉蔵と伝える。小玉友吉(一八七三~一九五〇)は初代久米之助の長男で、家業の傍ら、奥羽本線羽後飯塚駅や郵便局・銀行出張所の誘致、周辺地域の耕地整理、臨済宗開得寺の開創などを手がけ、地域の振興に尽力した。 敷地は東西に長く、西面を旧街道に接し、周囲に堀と石塀を廻らす。敷地中央に建つ主屋は、座敷部の南北に、中二階部と台所部を配置し、台所部北面に文庫蔵を建て、座敷部と中二階部の東南面には池泉回遊式の庭園が広がる。また文庫蔵の西側、旧街道沿いには車庫と米蔵が並ぶ。 座敷部は、桁行二一・七メートル、梁間一一・五メートル、入母屋造、鉄板葺で、四周に軒庇を廻らせる。平面は、文庫蔵にいたる廊下で東西に二分され、廊下西側に、玄関を中心にオエや旧帳場などを配し、玄関正面には入母屋屋根の車寄を構える。廊下の東側は六間取型で、南列は、西から応接間、仏間、中の間を並べ、北列は寝室、茶室、奥座敷とする。また奥座敷から中の間南側の菊慈童の間にいたる続き座敷の外側に土縁を廻らす。このような鍵座敷型配置の外縁に土縁を廻らし、さらに奥座敷の南正面に接客用の座敷(中二階部)を連接する間取は、秋田地方で発達した両中門造民家の部屋構成との類似性が窺えるもので、小玉家の主屋は当地方の伝統民家平面の近代的な発展形態ともいえる。 座敷部各室の天井は棹縁天井を基本とし、室境は襖、側廻りは腰障子を建てる。主要部材には秋田杉の良材を使用し、主な室には鉄刀木などの銘木を用いた座敷飾を備え、棚板などに漆塗を施す。特に、応接間では床脇に琵琶床を設けて、天井には三尺幅の杉板を張り、奥座敷では、座敷飾を備えるほか、庭側の柱を省いて土縁越しに眺望を得る。土縁は切目縁で、天井は化粧屋根裏とし、周囲に腰付ガラス戸を入れる。 中二階部は、桁行一〇・四メートル、梁間五・六メートル、入母屋造、鉄板葺で、四周に軒庇を廻らせる。座敷部より床を約一・五メートル高くして高床とし、主室と控の間を並べ、東南面に縁を廻らせて、庭園を望む。縁は槫縁で、天井は化粧屋根裏とし、周囲に腰付ガラス戸を建てる。現在は外周の床下を煉瓦壁としているが、これは冬季の床下の冷気対策として後世に施工したもので、当初は吹放しであったことが古写真などにより知られる。 台所部は、桁行一四・六メートル、梁間一一・八メートル、平屋建一部二階建、両下造、鉄板葺で、東側に浴室や便所を接続する。座敷部寄りに内玄関を構え、その北側に、居間、食堂、台所、下台所を並べる。食堂と台所はもとひと続きの土間で竈があり、現在の居間が食堂として使われていた。各室とも居住のため内装が改変されているが、主要軸部は旧規をとどめている。 文庫蔵は、棟札により大正一二年の上棟である。土蔵造三階建、桁行一一・四メートル、梁間四・六メートル、切妻造、桟瓦葺で、南面に蔵前を設け、東面に鞘をかける。一階は半地下式で土間とし、東面に扉を開き、二階南面を出入口として、石段上に掛子塗の重厚な塗戸を開く。小屋は洋小屋とし、外壁は漆喰塗で腰に焼過煉瓦を積む。軒は方杖の先に実肘木をおいて軒桁を受ける、当地方に特徴的な技法とする。 米蔵は、木骨煉瓦造三階建、桁行一三・八メートル、梁間六・三メートル、切妻造、桟瓦葺で、東面の出入口に蔵前を設け、主屋の下台所と繋ぐ。一階は土間で二階と三階は床板を張り、西妻に窓を穿ち、鉄扉を開く。小屋は洋小屋である。外壁は、腰を焼過煉瓦積として水切にデンティルを表す。上部は洗出し仕上で、石積風に目地を切り、四隅の柱型には幾何学紋の飾りを象る。 車庫は、煉瓦造、桁行一二・〇メートル、梁間五・九メートル、切妻造、桟瓦葺である。平面は東西に三分して中央室を車庫とし、南面の半円アーチの出入口に鉄扉を開き、東室は旧漬物場で、西室は旧薪置場である。小屋は組まず、煉瓦壁で直接母屋を受ける。外壁は、腰廻り、柱型、軒廻りなどに、意匠的に焼過煉瓦を用いる。 小玉家住宅の主屋は、秋田地方の民家の部屋構成を継承しつつ多様な庭園観賞を眼目とした接客空間を構成し、かつ吟味された秋田杉や銘木を用いて精緻に施工されており、近世民家形式を基底に近代的な発展を遂げた和風住宅として重要である。また敷地内の三棟の蔵は、近代構法に伝統技法を融和させたつくりで、洗練されている。 小玉家住宅の各建物は、優れた意匠をもつ近代和風住宅として高い価値があり、また地域の近代化を牽引した醸造家の屋敷構もよく保たれていることから、宅地と併せて保存を図る。 【参考文献】 『秋田県近代和風建築総合調査報告書』(秋田県教育委員会 二○○四年)