国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(建造物)
各棟情報
名称
:
旧醸造試験所第一工場
ふりがな
:
きゅうじょうぞうしけんじょだいいちこうじょう
棟名
:
棟名ふりがな
:
旧醸造試験所第一工場 全景
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員数
:
1棟
種別
:
近代/産業・交通・土木
時代
:
明治
年代
:
明治37
西暦
:
1905
構造及び形式等
:
煉瓦造、建築面積923.30㎡、仕込部、階段部、製麹部、機械部よりなる
仕込部 二階建、鉄板葺
階段部 三階建、地下一階、一部平屋建鉄板葺
製麹部 平屋建
機械部 平屋建、鉄板葺
創建及び沿革
:
棟礼、墨書、その他参考となるべき事項
:
指定番号
:
02618
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2014.12.10(平成26.12.10)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
重文指定基準1
:
(二)技術的に優秀なもの
重文指定基準2
:
(三)歴史的価値の高いもの
所在都道府県
:
東京都
所在地
:
東京都北区滝野川二丁目六番
保管施設の名称
:
所有者名
:
国(文部科学省)
所有者種別
:
国
管理団体・管理責任者名
:
公益財団法人日本醸造協会
旧醸造試験所第一工場 全景
解説文:
詳細解説
醸造試験所は,日本酒の研究を行って醸造技術と品質の向上を図るため,明治政府が設立した研究施設である。第一工場は中核施設の大規模な煉瓦造建造物で,明治37年に竣工した。設計は大蔵技師の妻木頼黄である。
断熱のため厚い壁体に空気層を設けた中空壁とし,天井はヴォールト天井,二階床は鉄骨梁に煉瓦ヴォールトを架けるなど,高い建築技術が用いられている。
旧醸造試験所第一工場は,妻木頼黄がドイツのビール醸造施設を応用して設計した煉瓦造工場建築である。当時最新鋭の設備を備えた日本酒醸造施設として,また大規模な複合煉瓦造建築物としても技術的に高い価値がある。醸造に関する唯一の国立研究機関の施設として,日本酒造りの近代化と酒類産業の発展に貢献しており,歴史的価値が高い。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
旧醸造試験所第一工場 全景
旧醸造試験所第一工場 仕込部貯蔵室
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旧醸造試験所第一工場 全景
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旧醸造試験所第一工場 仕込部貯蔵室
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解説文
醸造試験所は,日本酒の研究を行って醸造技術と品質の向上を図るため,明治政府が設立した研究施設である。第一工場は中核施設の大規模な煉瓦造建造物で,明治37年に竣工した。設計は大蔵技師の妻木頼黄である。 断熱のため厚い壁体に空気層を設けた中空壁とし,天井はヴォールト天井,二階床は鉄骨梁に煉瓦ヴォールトを架けるなど,高い建築技術が用いられている。 旧醸造試験所第一工場は,妻木頼黄がドイツのビール醸造施設を応用して設計した煉瓦造工場建築である。当時最新鋭の設備を備えた日本酒醸造施設として,また大規模な複合煉瓦造建築物としても技術的に高い価値がある。醸造に関する唯一の国立研究機関の施設として,日本酒造りの近代化と酒類産業の発展に貢献しており,歴史的価値が高い。
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詳細解説
旧醸造試験所第一工場 一棟 旧醸造試験所第一工場は、石神井川の南、滝野川の台地上に位置する。醸造試験所は日本酒の研究を行って醸造技術と品質の改良を図り、講習により技術を広く普及させることを目的に、明治政府が設立した研究機関である。明治三十四年(一九〇一)に設立が決まり、明治三十七年五月九日、大蔵省醸造試験所として創立した。以後日本酒の品質向上に貢献し、また酒類製造の講習により技術者の養成に努めた。昭和二十年空襲で建物の多くを焼失したが、第一工場の主要部は焼失を免れた。平成七年には主機能を東広島市へ移転したが、第一工場は技術講習の機能を存続し、現在でも講習が実施されている。 第一工場は醸造試験所の中核施設で、明治三十六年二月一日に起工、十一月三十日に工事が完了し、翌三十七年三月には機械設置を含めて竣工したとみられる。建築設計および監督は大蔵技師の妻木頼黄(一八五九~一九一六)が務め、宮崎善吉が工事を請け負った。妻木頼黄は、幕府旗本の長男として江戸に生まれ、明治十一年に入学した工部大学校造家学科でジョサイア・コンドルに学んだ後、明治十五年に渡米、アメリカ・コーネル大学で学士号を取得した。明治十九年より臨時建築局勤務となり、官庁集中計画の一環で議院建築の研究のためドイツに留学し、その後内務省や大蔵省に勤務、数多くの官庁建築を手がけた。建物はドイツのビール醸造施設の建築設備を応用した設計がなされ、空気層を設けた断熱性能の高い煉瓦造躯体と、ドイツのゲルマニア社製の醸造用機械により温度調整と清浄な空気の供給を可能とした。 建物は仕込部、階段部、製麹部、機械部からなる大規模な煉瓦造建造物で、建築面積九二三・三〇平方メートルである。 外観は化粧煉瓦の小口積を表し、要所に柱型と胴蛇腹をつくる。切妻の妻壁を立ち上げ、壁頂部はロンバルド帯風の意匠を施し、中央には丸窓を設ける。窓は欠円アーチの開口とし、窓台および迫台石、要石に石材を用いて変化をもたせる。 仕込部は全体の東半部であり、酒の発酵、貯蔵を行う。下層を半地下式の地階とする階高の高い二階建で、外観は瓦棒鉄板葺切妻屋根を二連に並べた形となる。平面は地階、二階ともに北に廊下を付し、南を三室に分け、地階は両端を貯蔵室、中央を清澄室とし、二階は両端を醗酵室、中央を酒母室とする。地階は外壁三枚半厚、間仕切三枚厚で、二階は外壁三枚厚、間仕切二枚半厚とする。壁面空気層は高さ六段ごとに平積三段とするほか、間仕切壁に二か所、外周壁に一か所の開口部と排気筒を設ける。地階貯蔵室および清澄室は半円形のヴォールト天井、地階廊下天井は鉄骨梁に煉瓦ヴォールトを架けた耐火床とし、二階天井は鉄骨梁と生子鉄板の上に木屑層を置いたコンクリートスラブとしている。床はコンクリート土間、壁は漆喰塗とする。 階段部は仕込部の西に附属する。三階建地下一階の階段室およびエレベーター室、三階建の廊下北半、平屋建の廊下南半からなり、瓦棒鉄板葺の屋根は階段室および廊下北半を切妻造、廊下南半を片流れとする。階段室は木造および石造の階段とし、エレベーターとともに廊下と仕込部各階廊下を接続する。廊下北半は一階は廊下、二階は空気濾過室、三階はタンク室とし、床を耐火床とする。 製麹部は南に位置する平屋建部分で、製麹および蒸米の冷却を行う。細長いヴォールト天井の部屋を五連並べ、南三室を蒸米冷却室、北一室を製麹室、その間を廊下とする。屋根は陸屋根であるが、当初は東西棟二連の切妻造であった。外周壁三枚厚、間仕切り壁二枚半厚で、間仕切り壁には通風口を壁頂部まで通す。製麹室は内面を白色施釉煉瓦の小口積とし、北の製氷室との間は中空壁とする。 機械部は製麹部の北に位置する平屋建、東西棟で切妻造瓦棒鉄板葺である。東から製氷室、機械室、汽罐室と並び、汽罐室西には張出しを付す。当初は汽罐室にボイラーが二基、機械室に蒸気機関と圧迫機、製氷室には製氷機と淡水冷却槽などの最新設備が設備され、各室を適温に調整していた。 旧醸造試験所第一工場は、妻木頼黄がドイツのビール醸造施設を応用して設計した煉瓦造工場建築である。中空壁や耐火床による断熱、通風装置、温度調整設備などの当時最新鋭の技術を用いた日本酒醸造施設として、また大規模な複合煉瓦造建築物としても技術的に高い価値がある。わが国唯一の醸造に関する国立の研究機関として日本酒造りの近代化と酒類産業の発展に大きく貢献した施設であり、歴史的価値が高い。 【参考文献】 『旧大蔵省醸造試験所第一工場(独立行政法人酒類総合研究所赤レンガ酒造工場)調査報告書』(独立行政法人酒類総合研究所 二〇一四年)