国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(建造物)
各棟情報
名称
:
旧朝香宮邸
ふりがな
:
きゅうあさかのみやてい
棟名
:
本館
棟名ふりがな
:
ほんかん
旧朝香宮邸 本館 外観
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員数
:
1棟
種別
:
近代/住居
時代
:
昭和
年代
:
昭和8
西暦
:
1933
構造及び形式等
:
鉄筋コンクリート造、建築面積1,214.60㎡、二階建一部三階建、一部地下一階、煙突附属
創建及び沿革
:
棟礼、墨書、その他参考となるべき事項
:
指定番号
:
2626
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2015.07.08(平成27.07.08)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
重文指定基準1
:
(一)意匠的に優秀なもの
重文指定基準2
:
(一)意匠的に優秀なもの
所在都道府県
:
東京都
所在地
:
東京都港区白金台五丁目二六番
保管施設の名称
:
所有者名
:
東京都
所有者種別
:
都道府県
管理団体・管理責任者名
:
旧朝香宮邸 本館 外観
解説文:
詳細解説
旧朝香宮邸は港区白金台の台地上に位置し,朝香宮鳩彦王の住宅として昭和8年に竣工した。設計は宮内省内匠寮工務課,設計担当技師は権藤要吉で,主要室の内装設計をフランス人のアンリ・ラパンが担当した。本館は,鉄筋コンクリート造二階建,一部三階建である。外観は装飾を排した意匠としているが,内部はガラスのレリーフ,照明器具,壁画,彫刻などで装飾している。旧朝香宮邸の本館は,簡明な意匠の外観としながら,内部は当時最新のフランスの芸術作品を主要室に配し,濃密で洗練されたアール・デコ意匠でまとめられている。宮内省内匠寮による邸宅建築の頂点のひとつとして意匠的に優れており、価値が高い。邸宅を構成している建築群や庭園も併せて保存を図る。
関連情報
(情報の有無)
附指定
添付ファイル
なし
写真一覧
旧朝香宮邸 本館 外観
旧朝香宮邸 本館 一階大客室
旧朝香宮邸 本館 一階大食堂
旧朝香宮邸 本館 二階書斎
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旧朝香宮邸 本館 外観
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旧朝香宮邸 本館 一階大客室
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旧朝香宮邸 本館 一階大食堂
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旧朝香宮邸 本館 二階書斎
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解説文
旧朝香宮邸は港区白金台の台地上に位置し,朝香宮鳩彦王の住宅として昭和8年に竣工した。設計は宮内省内匠寮工務課,設計担当技師は権藤要吉で,主要室の内装設計をフランス人のアンリ・ラパンが担当した。本館は,鉄筋コンクリート造二階建,一部三階建である。外観は装飾を排した意匠としているが,内部はガラスのレリーフ,照明器具,壁画,彫刻などで装飾している。旧朝香宮邸の本館は,簡明な意匠の外観としながら,内部は当時最新のフランスの芸術作品を主要室に配し,濃密で洗練されたアール・デコ意匠でまとめられている。宮内省内匠寮による邸宅建築の頂点のひとつとして意匠的に優れており、価値が高い。邸宅を構成している建築群や庭園も併せて保存を図る。
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詳細解説
旧朝香宮邸 四棟 本館、茶室、倉庫、自動車庫、正門 旧朝香宮邸は、港区白金台の台地上、周囲を森に囲まれた中に所在する。 朝香宮家は、久邇宮朝彦親王の第八王子鳩彦王が、明治三九年に創設した宮家である。 新邸の建設は大正一〇年、白金御料地であった現敷地が新邸建設用地として下賜されたことにはじまる。設計は宮内省内匠寮工務課が行い、設計担当技師を権藤要吉(一八九五~一九七〇)が務めた。本館の主要室の内装設計はフランスの画家・室内装飾家のアンリ・ラパン(Henri RAPIN 一八七三~一九三九)が担当した。設計は昭和五年一二月から進められ、同六年三月には新築工事仕様書が完成、施工は戸田利兵衛(戸田組、現・戸田建設株式会社)が請け負った。四月二二日に地鎮祭が行われ、同八年四月三〇日に竣工した。茶室は少し遅れて同一一年に上棟した。 鳩彦王と允子夫人は、大正一四年七月パリで「現代装飾美術・産業美術国際博覧会」を視察、後にアール・デコと称される当時最新のデザインの潮流に触れており、新邸の建設にあたっても内装にラパンの起用を要望するなど積極的に関与した。「アール・デコ」は、装飾芸術の意味で、一九二〇年代から三〇年代前半にかけてフランスを中心にヨーロッパで流行したデザイン思潮であり、幾何学的形態を強調した装飾を特徴とする。 建物は昭和二二年まで鳩彦王が居住していたが、皇籍離脱とともに居を離れ、その後は吉田茂が外務大臣、首相公邸として使用した。同三〇年から四九年の間は迎賓館として使用され、同五六年東京都所有となり、同五八年東京都庭園美術館として開館した。平成二四年から二六年に新館の建替えと庭園等の整備が実施され、現在に至る。 敷地は東西約221m、南北約177mのほぼ台形で、中央やや北寄りに本館が東面して建つ。本館北東隅に供待所を置き、本館南東隅から東へ内庭境門及び塀が延びる。本館南は庭園で、西寄りに池を配し池の北に茶室が建つ。本館の北には倉庫、その東隣に自動車庫が建つ。敷地南東隅に正門を開き、正門北に門衛所が建つ。旧朝香宮邸本館は、平成五年三月二二日付けで東京都指定有形文化財(建造物)に指定されている。 本館は、鉄筋コンクリート造、二階建一部三階建、一部地下一階で、北に煙突を附属する。 平面は中庭を中心としたロの字形配置で南半を客間や住居とし、東から北を事務部、西を厨房部とするなど、当時の宮内省内匠寮設計の邸宅に共通する配置とする。南半一階は東に玄関を開き、中央東寄りに大廣間を配して西を喫煙室とし、南面は東より第一應接室、小客室、次室、大客室、大食堂、小食堂の接客室を並べ南面にテラスを付す。二階は廣間を介して殿下、若宮、妃殿下、姫宮の居間、寝室を交互に並べ、浴室や納戸を附属する。南東隅の部屋は書斎とし、北に書庫を附属する。三階は南東隅は展望台で、西端をウインターガーデンとする。一階事務部は東面北寄りと北面に出入口を設け、受付外套室、事務官室、事務室、家丁運転手室や物置などとし、一階厨房部は厨房を中心として北に包丁室、南に食器庫、裁縫室、配膳室を並べる。事務部地下は機罐室とし、厨房部地下には食品庫や物庫を置く。 外壁は基礎廻りを布石状の石張りとする他は扁平な薄黄色のリシン掻き落とし仕上とし、縦長の方形の窓を並べ、屋根は陸屋根で一部庇状に水平に張り出す。装飾は一階北面の大食堂パラペットに廻した幾何学模様のテラコッタなど一部に留まり、極力装飾を控えた簡素な意匠で統一する。 内部意匠は外部とは対象的に華やかなアール・デコで濃密に装飾する。特に一階の大廣間、大客室、小客室、次室、大食堂と二階の書斎、殿下御居間はラパンの設計により、各部屋とも直線や円弧を組み合わせた幾何学的な構成を主とする。壁面や建具、照明器具にラパン自らの壁画やガラス工芸家のルネ・ラリック、マックス・アングラン、彫刻家のブランショなど、アール・デコを代表する芸術家によるフランス直輸入の芸術作品を用いる。 一階大廣間は寄木張りの床、合板張りの壁面で、北面には大理石レリーフを嵌め、天井全面の格子枠に円形の照明を並べる。玄関境の鋼製扉には有翼の女性像を象ったガラスレリーフを嵌める。大客室は壁面や天井廻りの柱形やデンティル、壁上部の壁画、ガラス製の大シャンデリア、幾何学模様のエッチングガラスを嵌めた扉など、最も意匠の密度が高い。小客室は壁全面に緑色を基調とした壁画を張る。次室は壁を朱色の人造石とし、中央に大型の磁器製噴水器を据える。大食堂は小壁や柱形を大理石張りとし、壁面に銀色の石膏レリーフを嵌め、天井からはパイナップルとざくろを象ったガラス照明を吊り、北面の暖炉上は果物などの壁画で飾り、窓下には魚介を象った鋼製グリルを嵌める。二階書斎は八角形平面で床は寄木、壁面を合板張とし、四隅のうち出入口を除く三所にニッチ状に本棚を設け、周囲に細い丸柱を八本立てる。殿下御居間は半円形の漆喰塗ヴォールト天井とし、北面に暖炉を設け壁に細い丸半柱を並べ、灰色を基調とした壁布を張る。 他室は宮内省内匠寮によるが、大理石やタイル、鋼製グリルや照明器具を幾何学的な文様で飾っている。一階小食堂は床の間を設けるなど、和風意匠を用い、二階ベランダ、三階ウインターガーデンは装飾を極力排し、床や壁の一部を白と黒の石畳模様とする。全体を概ね独自のアール・デコで統一しながらも、各部屋ごとに趣向を変えた工夫を見せる。 供待所は、桁行8.0m、梁間4.0m、鉄筋コンクリート造平屋建、陸屋根で、水平庇と丸窓により本館と統一した外観とする。内部は二室で西から供待兼商人溜と物置とする。 内庭境門及び塀は、本館南東隅から東へ伸びる塀で、本館玄関前と内庭を区切る。鉄筋コンクリート造、総延長68.0mで、本館寄りに門を開き、西に丸窓を付す。 茶室は、設計を中川砂村、大工棟梁を平田雅哉が務めた数寄屋造の茶室で、「光華」の名を持つ。木造平屋建で、平面は南西より四半敷の立礼席、十二畳の広間、四畳半の小間を雁行形に配置し、立礼席北に立水屋、広間北に水屋、小間の北東に手洗所を置く。屋根は本体を桟瓦葺、庇をこけら板を銅板で包んだこけら葺とする。 倉庫は、桁行18.2m、梁間6.5m、鉄筋コンクリート造二階建で、屋根を陸屋根とする。基礎を高くして床高を高め、外壁はリシン掻き落とし仕上とし、南面と東面中央に出入口を開き、各面に両開鉄扉の窓を並べ、それぞれ水平庇を付す。内部は各階とも中央に廣間と階段を置き、両脇を倉庫とする。倉庫内部は板床、壁は竪板張とする。 自動車庫は、桁行15.0m、梁間6.5m、鉄筋コンクリート造平屋建で、屋根は周囲にパラペットを立ち上げた陸屋根とし、南面正面には横長の水平庇を付す。平面は西寄り三分の二を車庫、東を作業室及び物置とする。前面にコンクリート土間の洗場を附属する。 正門は、間口5.0mで、東西に脇門が付き、袖塀を左右に延ばす。門柱及び袖塀は鉄筋コンクリート造で、下部を三段布基礎状石張とし、上部を白セメント塗仕上として傘石を載せる。鉄扉も当初材が残り、菱格子の中に唐草文様を施した華やかな意匠を見せる。 門衛所は、桁行13.0m、梁間7.0m、鉄筋コンクリート造平屋建、L字形平面で、庇を出した陸屋根とし、東側一間は一段下げた水平庇を大きく張り出す。 旧朝香宮邸の本館は、簡明な意匠の外観としながら、内部は当時最新のフランスの作家の作品を主要室に配し、濃密で洗練されたアール・デコ意匠でまとめ上げており、意匠的に優れている。昭和初期、我が国有数の設計組織であった宮内省内匠寮による邸宅建築の頂点のひとつとして価値が高い。倉庫や自動車庫も統一された意匠でまとめられ、茶室や庭園も邸宅を構成する要素として重要で、土地と併せて保存を図る。 【参考文献】 『朝香宮邸のアール・デコ』(財団法人東京都文化振興会 一九八六年) 『東京都の近代和風建築』(東京都教育委員会 二〇〇九年) 牟田行秀「東京都指定有形文化財「旧朝香宮邸」その誕生と変遷」『文化財の保護 第四四号』(東京都教育庁地域教育支援部管理課 二〇一二年) 『アール・デコ建築意匠 朝香宮邸の美と技法』(東京都庭園美術館 二〇一四年)
関連情報
附指定
供待所
内庭境門及び塀
門衛所
関連情報
附指定
附名称
:
供待所
附員数
:
一棟
関連情報
附指定
附名称
:
内庭境門及び塀
附員数
:
一基
関連情報
附指定
附名称
:
門衛所
附員数
:
一棟