国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(建造物)
各棟情報
名称
:
三越日本橋本店
ふりがな
:
みつこしにほんばしほんてん
棟名
:
棟名ふりがな
:
三越日本橋本店 外観(北東から見る)
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員数
:
1棟
種別
:
近代/商業・業務
時代
:
昭和
年代
:
昭和2
西暦
:
1927
構造及び形式等
:
鉄骨鉄筋コンクリート造、建築面積8,490.88㎡、七階建、地下一階、塔屋六所付
創建及び沿革
:
棟礼、墨書、その他参考となるべき事項
:
指定番号
:
02645
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2016.07.25(平成28.07.25)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
重文指定基準1
:
(一)意匠的に優秀なもの
重文指定基準2
:
(三)歴史的価値の高いもの
所在都道府県
:
東京都
所在地
:
東京都中央区日本橋室町一丁目7番地
保管施設の名称
:
所有者名
:
株式会社三越伊勢丹
所有者種別
:
その他
管理団体・管理責任者名
:
三越日本橋本店 外観(北東から見る)
解説文:
詳細解説
三越日本橋本店は,関東大震災で被災した大正期の建物の鉄骨をいかしつつ,昭和2年に鉄骨鉄筋コンクリート造七階建として完成し,その後の増築に伴い,昭和10年に五層吹抜けの中央大ホールを設置するなど,充実が図られた。横河工務所による一貫した設計により,外観はやや簡略化しつつも西洋古典様式に則った意匠で統一されている。内部では劇場の三越ホールが格調ある色調で彩られ,中央大ホールや特別食堂はアール・デコ意匠とするなど,全体として極めて上質な意匠の空間が創出されている。各時代において様々な集客のための仕組みを取り入れながら増改築を重ねており,我が国の百貨店建築の発展を象徴するものとして価値が高い。
関連情報
(情報の有無)
附指定
添付ファイル
なし
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三越日本橋本店 外観(北東から見る)
三越日本橋本店 中央大ホール
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三越日本橋本店 外観(北東から見る)
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三越日本橋本店 中央大ホール
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解説文
三越日本橋本店は,関東大震災で被災した大正期の建物の鉄骨をいかしつつ,昭和2年に鉄骨鉄筋コンクリート造七階建として完成し,その後の増築に伴い,昭和10年に五層吹抜けの中央大ホールを設置するなど,充実が図られた。横河工務所による一貫した設計により,外観はやや簡略化しつつも西洋古典様式に則った意匠で統一されている。内部では劇場の三越ホールが格調ある色調で彩られ,中央大ホールや特別食堂はアール・デコ意匠とするなど,全体として極めて上質な意匠の空間が創出されている。各時代において様々な集客のための仕組みを取り入れながら増改築を重ねており,我が国の百貨店建築の発展を象徴するものとして価値が高い。
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詳細解説
[近代 商業・業務] 三越日本橋本店 一棟 東京都中央区 株式会社三越伊勢丹 三越日本橋本店は、日本橋の中心部、三井本館の南に位置する。三越は三井家による呉服店「越後屋」を祖とし、延宝元年(一六七三)に創業、天和三年(一六八三)の現位置への移転以来、店舗を構えてきた。明治三七年、株式会社三越呉服店となり、以降他に先駆けて欧米の百貨店を目指した経営を行ってきた。大正三年、鉄骨煉瓦造五階建の本館を新築し、大正一〇年に高塔を載せた西館を増築したが、大正一二年の関東大震災による火災で被害を受け、躯体の鉄骨や床スラブを生かしながら昭和二年に鉄骨鉄筋コンクリート造七階建として完成した。この際、意匠は内外とも全面的に更新され、六階の三越ホール設置などが行われた。その後昭和一〇年に南へ増築するとともに中央大ホール、特別食堂を設け、戦後の昭和三一年と三九年に増築し、一街区をしめる現在の規模となった。設計は新築から後の増築まで横河工務所が一貫して行い、その多くで中村伝治(一八八〇~一九六八)が主担当を務めた。横河工務所(現・株式会社横河建築設計事務所)は、我が国における鉄骨構造の先駆者である横河民輔(一八六四~一九四五)が、明治三六年に日本橋区三代町楓河岸に開設した設計事務所で、民間の商業建築を得意とした。平成一一年四月に東京都選定歴史的建造物に選定され、平成一七年から二〇年にかけて免震工法による耐震改修工事が実施された。 建物は東西一〇五・五メートル、南北七九・八メートルの規模を持つ鉄骨鉄筋コンクリート造、七階建、地下一階、塔屋六所付である。およそ六メートルグリッドで柱を立てる構造を基本とし、北側六間分が昭和二年建築部分で、南半最南部一間を除く西から一一間分が昭和一〇年、南半東から六間分が昭和三一年、南半西の最南一間分が昭和三九年増築部である。 平面は、建物のほぼ中心に中央大ホールを配置し、周辺を売場とし、ホールの東西にエスカレーターを置くほか、各所にエレベーター、階段を配す。六階から七階の北東には三越ホール、七階南西には特別食堂を配する。出入口は北面中央、東面北寄りを主たる客用出入口とするほか、東面南寄り、南面中央にも客用出入口を設け、西面北寄りに搬入口を置く。屋上は広場とし、北西隅に高塔を建てる。地下一階の東には地下鉄三越前駅へ直通する入口を持つ。 外観は、昭和二年建築部は三層構成とし、基部にあたる一階は石積風の花崗岩張で、二階から五階は白色小口タイル張とし、柱頭飾を持つ太い柱形を林立させ、各階毎の楣で繋ぐ。六階部分の下部はコーニスを廻らしてエンタブレチュア風に装飾し、上部にもアーキトレーヴを廻らし、頂部にアンティフィクサを並べる。東面北寄りの門形の出入口廻りは、彫刻や照明器具による華麗な装飾を付し、出入口両脇にブロンズ製の獅子像一対を置く。屋上の高塔は頂部に尖塔を立て、四面に「丸に越」の紋を付す。全体的に古典様式の文脈で構成されるが、アーチを用いない水平、垂直線を強調した構成や、高塔のアール・デコ風の装飾など、新しい様式も取り入れる。また昭和一〇年以降の増築部についても、意匠をやや簡略化しつつも昭和二年建築部の外観との統一感を持たせている。 内部では、中央大ホール、三越ホール、特別食堂、出入口、階段、エレベーター廻りの内装がそれぞれの改築時の姿を良くとどめている。 中央大ホールは五層吹抜の大空間で、南寄りの大階段は、二階で左右に分かれ、南にパイプオルガンを置き、天井はステンドガラスをヴォールト状に配したトップライトとする。柱や梁、手摺廻りは大理石張とし、手摺グリルやガラスなどをアール・デコ風の装飾で飾る。 三越ホールは、二層吹抜で東にステージを設け、客席後方に二階席を持つ劇場である。壁面と天井は大理石、木彫、石膏整形やステンドグラスなどにより装飾され、グレーを基調として様々な紋様や幾何学模様をペイント彩色で着色する。 特別食堂は、フランスの室内装飾家ルネ・プルー(Rene Prou 一八八九~一九四七)によるアール・デコで飾られる。緑色大理石の丸柱や柱頂部の持送り、壁付のグリルなどが当時の潮流を示している。 その他、出入口や階段、エレベーター廻りは大理石の壁材や装飾など、各時代の意匠や部材を良くとどめる。 三越日本橋本店は、戦前期の商業建築を多数建築した横河工務所による一貫した設計により、外観はやや簡略化しつつも西洋古典様式に則った意匠で統一しつつ、内部では重厚な色調で彩られた三越ホール、幾何的意匠の中央大ホール、特別食堂など各時代の先駆的な意匠を採用し、全体として極めて質の高い空間を創出しており意匠的に優秀である。最新の様々な集客のための仕組みを取り入れながら増改築を重ねて発展した、我が国の百貨店の歴史を象徴するものとして重要である。 【参考文献】 『株式会社 三越一〇〇年の記録』(株式会社三越 二〇〇五年) 『三越日本橋本店本館調査報告書』(株式会社三越伊勢丹ホールディングス 二〇一五年)
関連情報
附指定
建築図面
三越本店改修増築設計図・構造図
関連情報
附指定
附名称
:
建築図面
附員数
:
二、一一五枚
関連情報
附指定
附名称
:
三越本店改修増築設計図・構造図
附員数
:
三冊