国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
木造地蔵菩薩立像快慶作
ふりがな
:
もくぞうじぞうぼさつりゅうぞうかいけいさく
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員数
:
1躯
種別
:
彫刻
国
:
時代
:
鎌倉
年代
:
西暦
:
作者
:
快慶
寸法・重量
:
品質・形状
:
ト書
:
足枘に巧匠法眼快慶、開眼行快の銘がある
画賛・奥書・銘文等
:
伝来・その他参考となるべき事項
:
指定番号(登録番号)
:
3572
枝番
:
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2010.06.29(平成22.06.29)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
所在都道府県
:
大阪府
所在地
:
大阪市都島区網島町10-32
保管施設の名称
:
公益財団法人藤田美術館
所有者名
:
公益財団法人藤田美術館
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
詳細解説
足枘銘により仏師快慶の法眼時代の作で、弟子の行快が玉眼を担当したことが知られる。細部に渡り周到な彫刻と入念な仕上げがなされ、撫で肩の華奢な体型や、衣文の線的な処理の仕方に快慶晩年の作風の特徴をよく示している。光背は他像より転用の可能性がある。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
一つ書
なし
添付ファイル
なし
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解説文
足枘銘により仏師快慶の法眼時代の作で、弟子の行快が玉眼を担当したことが知られる。細部に渡り周到な彫刻と入念な仕上げがなされ、撫で肩の華奢な体型や、衣文の線的な処理の仕方に快慶晩年の作風の特徴をよく示している。光背は他像より転用の可能性がある。
詳細解説▶
詳細解説
左手に宝珠を持ち右手に錫杖を持つ通形【つうぎょう】の地蔵菩薩像である。右足枘の銘文より快慶【かいけい】の法眼【ほうげん】時代の作であることが知られる。したがってその製作は快慶の法橋位の事蹟が知られる下限の承元二年(一二〇八)から、すでに没している嘉禄三年(一二二七)までの間に絞られる。もう一方の足枘には「開眼行快【かいげんぎょうかい】」とあり、快慶の他の作例の銘文(東京藝術大学大日如来坐像「開眼円…」、京都・醍醐寺不動明王坐像〈重要文化財〉「御眼巧匠【こうしょう】円阿弥陀仏」)を参照すれば、「開眼」が玉眼製作の意であることが推定され、本像の玉眼を行快が担当したことがわかる。 檜材の割矧造【わりはぎづくり】。頭躰幹部は一材からなり、両耳を通る線で前後に割り矧ぎ内刳【うちぐり】し、割首して、玉眼を嵌入する。両肩外側部を矧ぐ(右肩は割矧であることが確認できる)。両袖内側に別材を矧ぎ、うち右袖分は外側に翻る部分に一材を矧ぐ。左腕は袖口に前膊半ばより先を挿し込み矧ぎし、さらに手首先(後補)を矧ぐ。右腕は袖口に挿し込み矧ぎ(一材製)。両足先はそれぞれ別材を矧ぐ。X線透過撮影写真によると、膝から脛辺にかけて巻紙状(か)の納入品の存在が確認される。表面は黒漆塗白下地彩色。彩色文様は、袈裟の条葉は青下地に太切金【きりがね】で縁取し、その内側に切金で亀甲繋文【きっこうつなぎもん】、田相は丹地に四つ目入七宝【しっぽう】繫文を地文に、青、緑で遠山文様。内衣は白地に切金で雷文【らいもん】繫文。覆肩衣は内区を金地に緑、青、丹の彫塗による蜀江文【しょっこうもん】風の文様、外区を青地に蓮華唐草文とする。裙は丹具で内区は雷文繫繁文、外区は蓮華唐草文様をそれぞれ切金で表す。台座は蓮肉一材製で、これに蓮弁三段を打ち付け、蓮肉の底に足した丸板材に蓮弁二段を打ち付ける。蓮弁先に水晶製垂飾をつける。敷茄子は上下二材製。雲は基部一材に各雲頭を矧ぎ、背面に雲脚を矧ぐ。框座は一材製、それぞれの入隅部に銅板金具を打ち付ける。なお、光背は古作ながら、周縁部の円相に表された種子が文殊種子であることから、転用の可能性がある。 その像容は、雲に乗り、右足を前に踏み出して、来迎の相を示している。乗雲の地蔵は、南都では春日信仰を背景にして鎌倉時代以降に展開したものとされている。本像は明治三十九年(一九〇六)に撮影された古写真により、興福寺に伝来していたことが確認できる。こうした来歴から、春日地蔵として造られた可能性も考えられる。 作風は、なで肩で肉付けを減じ、頬の肉も少なく、本躰に施された彩色文様も切金をまじえた細やかなもので、全体に繊細さを感じさせる。法橋時代の奈良・東大寺公慶堂像(重要文化財)と比べると、衣文の襞が煩瑣となり、線的・絵画的な趣が増している点に、快慶晩年の風がうかがえる。 発色の良い彩色が鮮やかに残るのは貴重で、快慶法眼時代の美作として注目されることに加え、この時期の快慶工房の製作の様相を知るうえでも重要な作として位置づけられる。