国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
紙本著色梓弓図〈岩佐勝以筆〉
ふりがな
:
しほんちゃくしょくあずさゆみず
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員数
:
1幅
種別
:
絵画
国
:
日本
時代
:
江戸
年代
:
西暦
:
作者
:
岩佐勝以
寸法・重量
:
品質・形状
:
ト書
:
画賛・奥書・銘文等
:
伝来・その他参考となるべき事項
:
指定番号(登録番号)
:
2026
枝番
:
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2008.07.10(平成20.07.10)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
所在都道府県
:
京都府
所在地
:
京都府京都市上京区下長者町通新町西入薮之内町85番4
保管施設の名称
:
国(文化庁)
所有者名
:
国(文化庁)
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
詳細解説
岩佐又兵衛勝以(1578~1650)は近世初期に風俗画を中心に独創的な画風を展開した画家。もと福井の金屋家に伝わった金谷屏風は又兵衛の後半生の最も基準となる作品で、和漢の故事人物図十二図を自由に隣り合わせたものであったが、明治時代末頃に解装されて分散した。十二図中九図が重要美術品に認定されている。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
一つ書
なし
添付ファイル
なし
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解説文
岩佐又兵衛勝以(1578~1650)は近世初期に風俗画を中心に独創的な画風を展開した画家。もと福井の金屋家に伝わった金谷屏風は又兵衛の後半生の最も基準となる作品で、和漢の故事人物図十二図を自由に隣り合わせたものであったが、明治時代末頃に解装されて分散した。十二図中九図が重要美術品に認定されている。
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詳細解説
本図は福井の豪商である金屋家に伝来し、明治末年ころに屏風装を解かれて分散した押絵貼屏風六曲一双一二図のうちの一図である。 本図は伊勢物語第二十四段に取材し、長い都勤めの不在から突然帰った夫と、約束の月日が過ぎても夫が戻らず、別の男と結婚しようとした妻とが歌を詠み交わす場面を描いている。伊勢物語二十四段を描いた図様として、慶長年間(一五九六~一六一五)に何度も版行され、大きな影響力を発揮した嵯峨本伊勢物語の図様では、門の前で戸をたたく男と、家の中には女の姿を描いている。こうした物語図としては男女がともに描かれるのが通常であるが、本図では男だけを切り取って図面いっぱいに立ち姿とする大胆な構成である。霞の中に沈んだ門と松という道具立てに囲まれて男が佇む空間は極度に狭く、戸が男の前に立ちはだかっているようである。頭をやや傾けて戸の向こうに耳を澄ますような男の様子、霞のかかった薄暗い空間、男の頭上に垂れる松の枝が、何事かが起こりつつある予感を漂わせる。きわめて簡潔な図様でありながら、「山中常磐絵」(重要文化財、静岡・MOA美術館)に見る舞台空間のような画面構成に通じる効果が発揮されている。堂々たる体躯とどこか奇矯な風貌をもった男は、岩佐又兵衛勝以(一五七八~一六五〇)が作り出した独特の人物像であり、強烈な印象を与えるが、人物の周辺に施された彩色をみると、弓、矢、門などの細部描写に非常にうすい朱色と青色を用いた繊細な描写がなされており、画家の筆力の確かさがうかがえる。 作者の岩佐又兵衛勝以は近世初期に独創的な画風を展開した画家であるが、寛永十七年(一六四〇)制作の仙波東照宮所有の「三十六歌仙額」(重要文化財)を除いて年記のある作例がなく、作風展開にはまだ未解明な点が多いため、本図の制作時期の特定は難しい。しかし、描写の細部をみると、男の黒い袍の裾は極端に短く、弓の一部は左袖の中に隠れているかのように描かれ、表袴の裾が細いなど、図像的に得意な表現が見受けられる。旧樽屋屏風中の同じ内容内容を描く「伊勢物語図」(個人蔵)では形態はより自然であるが、本図には認められる京都時代の風俗画の大作に通じる人物表現の特異さと力強さは影を潜めている。こうした点は、本図が、樽屋屏風、「和漢故事説話図」(福井県立美術館)といった作例よりも早い時期の制作であることを示唆する。 本図は、又兵衛の人物表現の特色が色濃くあらわれた代表作であり、しかも細繊な線描、淡彩による繊細な描写が優れており、又兵衛の福井時代の代表作である金谷屏風の中でも、官女観菊図とともに傑出した作例である。