国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
木造阿弥陀如来及両脇侍坐像
ふりがな
:
もくぞうあみだにょらいおよびりょうきょうじざぞう
解説表示▶
員数
:
3躯
種別
:
彫刻
国
:
時代
:
鎌倉時代
年代
:
西暦
:
作者
:
寸法・重量
:
像高 中尊100.6センチメートル 左脇侍65.3センチメートル 右脇侍63.6センチメートル
品質・形状
:
ト書
:
画賛・奥書・銘文等
:
伝来・その他参考となるべき事項
:
指定番号(登録番号)
:
3634
枝番
:
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2017.09.15(平成29.09.15)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
所在都道府県
:
京都府
所在地
:
保管施設の名称
:
所有者名
:
廬山寺
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
詳細解説
来迎阿弥陀と呼ばれる、臨終者の許に出現した阿弥陀と両脇侍の像。脇侍は天衣が後方に強くなびく様子を表すことで、来迎のスピード感を強調している。勢至菩薩は元来、往生者に差し掛ける天蓋を執っていたとみられ彫像では珍しい。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
一つ書
なし
添付ファイル
なし
解説文
来迎阿弥陀と呼ばれる、臨終者の許に出現した阿弥陀と両脇侍の像。脇侍は天衣が後方に強くなびく様子を表すことで、来迎のスピード感を強調している。勢至菩薩は元来、往生者に差し掛ける天蓋を執っていたとみられ彫像では珍しい。
詳細解説▶
詳細解説
廬山寺方丈に本尊として安置される等身坐像の阿弥陀如来と両膝をそろえて坐る観音・勢至【せいし】菩薩である。ヒノキ材製で、中尊は正中線で矧ぐ寄木造【よせぎづくり】、両脇侍は前後に割矧ぐ割矧造【わりはぎづくり】になり、各漆箔仕上げ。阿弥陀が来迎印【らいごういん】を結び、観音が両手で蓮台を前方に捧げ持つ姿の来迎形に表し、脇侍の天衣【てんね】や腰布、裙裾【くんすそ】が後方になびきながら翻る風動表現により来迎の速さを示している。勢至は通行の合掌ではなく左手を上にして棒状の持物【じもつ】を執る形状であることが注意される。上体を前傾させて持物を左前方に捧げる構えである点は、阿弥陀来迎図の菩薩衆のなかで観音の後方で天蓋を差し掛ける菩薩の姿に通じる。奈良法華寺阿弥陀三尊童子像(国宝)には天蓋を執る勢至が描かれており、阿弥陀来迎を三尊で表す場合に天蓋を持つ菩薩の役割を勢至に付与することがあったものと考えられ、本勢至も往生者に天蓋を捧げる姿だったと推定される。 穏やかな顔立ちや浅くなだらかな衣文には定朝様の継承をうかがわせるものの、峰に肉をもたせた衣文線や胸が張り胴部を絞った体型には次代の風が認められる。こうした点は大阪大通寺阿弥陀如来像(重要文化財、建仁三年(一二〇三)頃)に通じるもので京都仏師による一三世紀初頃の作とみるべきと思われる。 観音・勢至間では観音が癖のない像容を示すのに対し、勢至は凝った髪型にするなど細部形式で異なる。このほか衣文表現では勢至が煩瑣【はんさ】で枝分かれするものを多用し、構造では観音が天冠台を共木で彫出するのに対し勢至は地髪に段差を設けて別材で造っている。このような違いは時代の差までは認めがたく担当仏師の差とみるのが妥当であろう。阿弥陀と観音は作風が近く、堅実な彫技をみせ勢至より優れた出来映えを示していることから、阿弥陀と観音に主要な仏師が当たったと考えられる。 脇侍が衣の表現により来迎の速度と臨場感を表出している点は巧みで、これは興福院の阿弥陀聖衆来迎図(重要文化財)にみられるような来迎の速さを希求する当時の信仰に応えた表現であろう。鎌倉時代前期における来迎の場面の彫像化の展開を考えるうえで彫刻史上に重要な一作と評価される。