国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
絹本著色地蔵十王像
ふりがな
:
けんぽんちゃくしょくじぞうじゅうおうぞう
解説表示▶
員数
:
1幅
種別
:
絵画
国
:
時代
:
鎌倉時代
年代
:
西暦
:
作者
:
寸法・重量
:
縦82.8センチ 横38.0センチ
品質・形状
:
絹本著色 掛幅装
ト書
:
画賛・奥書・銘文等
:
伝来・その他参考となるべき事項
:
指定番号(登録番号)
:
2117
枝番
:
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2023.06.27(令和5.06.27)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
所在都道府県
:
大阪府
所在地
:
保管施設の名称
:
所有者名
:
公益財団法人阪急文化財団
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
詳細解説
十王に裁かれた後、六道に転生した衆生を地蔵菩薩が救済する様子を一幅のうちに表現した作例である。画面構成の範(はん)は中国宋~元時代の作例にあると考えられるが、十王の服制(ふくせい)にはより古様な形式を取り入れるなど、全体の図様には独自性が強い。地蔵の静かで慎ましい顔立ちや、着衣等にみる細緻な截金(きりかね)文様、穏やかな自然描写から、鎌倉時代後期の作とみられる。我が国では一画面に地蔵と十王をあらわす作例は数少なく、本作はその中でも古い例として貴重である。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
一つ書
なし
添付ファイル
なし
解説文
十王に裁かれた後、六道に転生した衆生を地蔵菩薩が救済する様子を一幅のうちに表現した作例である。画面構成の範(はん)は中国宋~元時代の作例にあると考えられるが、十王の服制(ふくせい)にはより古様な形式を取り入れるなど、全体の図様には独自性が強い。地蔵の静かで慎ましい顔立ちや、着衣等にみる細緻な截金(きりかね)文様、穏やかな自然描写から、鎌倉時代後期の作とみられる。我が国では一画面に地蔵と十王をあらわす作例は数少なく、本作はその中でも古い例として貴重である。
詳細解説▶
詳細解説
波間にそそり立つ岩山に坐す地蔵菩薩を中心に、その下方に十王、二使者、善悪二童子、冥を配した地蔵十王像である。地蔵が持つ宝珠からは雲気がたなびき、その中に六道を象徴するモチーフが描かれる。 地蔵と十王の組み合わせは、唐時代の成立とされる『仏説預修十王生七経』に説くものが早く、我が国では同経をもとに作られたと考えられている『仏説地蔵菩薩発心因縁十王経』が平安時代末より流布した。以降、これらの経典に依拠し、十王の裁きを受けた衆生を地蔵が救済することを祈る地蔵十王信仰が鎌倉時代を通して興隆した。 本作のように地蔵十王を一図に描く例は、中国では古くは五代~北宋時代の敦煌出土品に求められ、呉越時代の江南地域にも類例が遺るほか、朝鮮半島でも高麗~朝鮮時代の作例が多い。我が国においては鎌倉時代から室町時代初め頃の作が数点知られるが、六道の図像を伴う例は、本作以外では米国・フリア美術館本が知られるのみである。本作は中国・朝鮮半島の大半の作例と異なり、地蔵は被帽ではなく、道明和尚や獅子を伴わないなどの特徴がある。 また、我が国には宋元時代の浙江省寧波で作られた、地蔵と十王を一幅ずつに描く形式の地蔵十王像が多数伝わり、それを鎌倉時代以降に模した作例も遺る。これらは形式が大きく異なる一方、その多くに六道の図像が描かれるなど、敦煌出土品に遡る表現が部分的に認められる。 以上を勘案すれば、本作の図様構成は、東アジアにおける地蔵十王像の伝播の過程において、五代~北宋時代に成立した地蔵十王像の構成を基盤に、寧波等の宋元画の形式を加味しつつ成立したものと考えられる。 本作の岩山は地蔵菩薩が居するとされる佉羅陀山とみられるが、これに見られる紅葉した木々の描写は平安時代末から鎌倉時代の来迎図に頻出するとともに、鎌倉時代の補陀落山の表現とも通ずる。また、地蔵の着衣の截金文様や、その静かで慎ましい顔立ちは鎌倉時代後期の様式を示していることから、本作の制作時期は鎌倉時代後期に置くことができる。 本作は鎌倉時代以降、我が国において地蔵十王信仰が盛んになり、その図様が多様に展開した中で生まれた特色ある一作に数えられる。我が国では類例の少ない単幅の地蔵十王像のうち古例に属するとともに、我が国ひいては東アジアの地蔵十王像の展開を考える上で欠かせない作例として高く評価されるものである。