国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
紙本著色世界図〈/八曲屛風〉
ふりがな
:
しほんちゃくしょくせかいず〈/はっきょくびょうぶ〉
解説表示▶
員数
:
一双
種別
:
絵画
国
:
時代
:
桃山時代
年代
:
西暦
:
作者
:
寸法・重量
:
(各)縦178.6センチ 横486.3センチ
品質・形状
:
紙本著色 屛風装
ト書
:
画賛・奥書・銘文等
:
伝来・その他参考となるべき事項
:
指定番号(登録番号)
:
2120
枝番
:
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2023.06.27(令和5.06.27)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
所在都道府県
:
東京都
所在地
:
保管施設の名称
:
所有者名
:
国(文化庁保管)
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
詳細解説
オランダ製壁掛け世界図(1609年版、ブラウ作製カエリウス改作)を主な典拠とする大型の屛風絵で、右隻には上部に王侯騎馬図、その下に28都市図とポルトガル地図を並べ、左隻には中央に世界地図、左右に42の諸国人物図を配する。我が国の初期洋風画にみられる諸画題を網羅的に併置することが特徴的で、精緻で崩れの少ない描写は見応えがある。初期洋風画のなかで屈指の優品である。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
一つ書
なし
添付ファイル
なし
解説文
オランダ製壁掛け世界図(1609年版、ブラウ作製カエリウス改作)を主な典拠とする大型の屛風絵で、右隻には上部に王侯騎馬図、その下に28都市図とポルトガル地図を並べ、左隻には中央に世界地図、左右に42の諸国人物図を配する。我が国の初期洋風画にみられる諸画題を網羅的に併置することが特徴的で、精緻で崩れの少ない描写は見応えがある。初期洋風画のなかで屈指の優品である。
詳細解説▶
詳細解説
本作は、右隻に王侯騎馬図、ポルトガル地図、二十八都市図、左隻に世界地図と諸国人物図を描くもので、類作として「レパント戦闘図・世界地図」(重要文化財、兵庫・香雪美術館蔵)、「四都図・世界図」(重要文化財、兵庫・神戸市蔵)、「泰西王侯騎馬図」(重要文化財、兵庫・神戸市蔵及び東京・サントリー芸術財団蔵)等が知られる。 本作と関係するオランダの世界図として、地図製作者ウィレム・ブラウによる1607年の世界図(写真版のみ現存)、これをアムステルダムで印刷業を営んだカエリウスが1609年に改訂した大型の壁掛け世界図(現存せず)、1609年版をもとに改訂されたカエリウスによる1619年刊行の世界図(フランス・パリ国立図書館蔵)が知られる。これらとの比較により本作は、現存しない1609年版カエリウス図を主たる典拠として制作されたと考えられる。 本作の図像は、オランダ製世界図にその典拠の多くを求めることができるが、『ロヨラ伝』(1610年刊行、刊行地アントウェルペン)、オルテリウス『世界の舞台』(1570年初版、刊行地アントウェルペン)、天正18年(1590)から二年間日本に滞在したポルトガル人地図製作者モレイラによる日本地図(現存せず)、『古代ローマ皇帝図集』(1587~89年頃、刊行地アントウェルペン)など、これとは別な典拠が想定されるものも含まれており、制作者が豊富な地理関係資料、天文関係資料をも参照し得る状況にあったことを示唆する。これをふまえると特殊な制作背景が想定され、徳川家康が慶長16年(1611)9月20日に「御覧」になったと『駿府記』に伝える「南蛮世界図屛風」を本作に比定する説もある。 本作は類作にみられる諸要素を広く採録していることに特徴がある。謹直で精緻な描写もひとつの特徴で、陰影法はもとより、人物や都市の背景描写に空気遠近法への強い興味が示され、地図に丹念に描き込まれた波や人物の背景に描かれた樹木などに見られる細やかな筆致は、原画となった銅版画の描写を意識したものとも解される。他作例のように金地金雲が画中に入り込むこともない。以上、本作は我が国の初期洋風画のなかで屈指の優品として高く評価することができる。