国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
紙本著色地獄草紙断簡(解身地獄)
ふりがな
:
しほんちゃくしょくじごくぞうしんだんかん(げしんじごく)
解説表示▶
員数
:
1幅
種別
:
絵画
国
:
時代
:
平安時代
年代
:
西暦
:
作者
:
寸法・重量
:
縦26.1センチ 横90.5センチ
品質・形状
:
紙本著色 掛幅装
ト書
:
画賛・奥書・銘文等
:
伝来・その他参考となるべき事項
:
指定番号(登録番号)
:
2123
枝番
:
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2023.06.27(令和5.06.27)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
所在都道府県
:
滋賀県
所在地
:
保管施設の名称
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所有者名
:
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
詳細解説
沙門(僧侶)の堕ちる地獄を描くことから「沙門地獄草紙」とも称される絵巻物の断簡。本断簡は第六段にあたる詞と絵で、生きものを殺した僧侶が堕ちる解身地獄をあらわし、獄卒による責め苦の様子や、僧侶たちの苦しみを表情豊かに描き出す。沙門地獄草紙は、地獄草紙、餓鬼草紙、病草紙などとともに、後白河法皇の蓮華王院宝蔵に保管されていた「六道絵」の一部である可能性を指摘される優品である。本作はその断簡のひとつとして極めて貴重である。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
一つ書
なし
添付ファイル
なし
解説文
沙門(僧侶)の堕ちる地獄を描くことから「沙門地獄草紙」とも称される絵巻物の断簡。本断簡は第六段にあたる詞と絵で、生きものを殺した僧侶が堕ちる解身地獄をあらわし、獄卒による責め苦の様子や、僧侶たちの苦しみを表情豊かに描き出す。沙門地獄草紙は、地獄草紙、餓鬼草紙、病草紙などとともに、後白河法皇の蓮華王院宝蔵に保管されていた「六道絵」の一部である可能性を指摘される優品である。本作はその断簡のひとつとして極めて貴重である。
詳細解説▶
詳細解説
沙門の堕ちる地獄を描くことから「沙門地獄草紙」とも称される、もと七段からなる絵巻の断簡である。本絵巻はかつて「辟邪絵」一巻とともに益田孝(鈍翁、1848~1938)の所蔵であったが、第二次世界大戦後、二巻とも段ごとに分断された。 この「沙門地獄草紙」は、一段ずつ、詞とそれに対応する絵とで各地獄をあらわし、詞、絵ともに平安時代後期の作風を示す。「地獄草紙」(国宝、東京国立博物館および奈良国立博物館蔵)、「餓鬼草紙」(国宝、東京国立博物館および京都国立博物館蔵)のほか、「辟邪絵」(国宝、奈良国立博物館蔵)や「病草紙」(一部国宝、京都国立博物館ほか蔵)などとともに、後白河院(1127~92)の御願により建立された蓮華王院宝蔵保管の「六道絵」の一部である可能性が指摘される優品である。 本断簡は「沙門地獄草紙」第六段にあたる詞と絵で、生きものを殺した僧が堕ちる解身地獄をあらわす。絵は詞の記述をよく反映し、まな板の上で僧を細かく切り刻み、なますにする獄卒たちの様子や、その側で刻まれるのを待つ僧たちの苦悶を表情豊かに描き出している。 本断簡を含め、「沙門地獄草紙」に登場する地獄は、高麗版大蔵経所収の三十巻本『仏名経』に編入された「宝達菩薩問答報応沙門経」の説く沙門地獄と一致することから、これが主な典拠であると考えられる。我が国では九世紀前半頃から、三十巻本に先行するとされる十六巻本『仏名経』を所依経典として、道場に三千仏図とともに地獄変屛風を置き、仏名悔過を修することが宮中の年中行事となり、九世紀後半には南都僧の主導によりこれが諸国に広まった。「沙門地獄草紙」はこのような悔過儀礼の場に置かれた地獄変屛風との関係を考えさせる重要な作例である。さらに本断簡については、寛和元年(985)成立の源信著『往生要集』に説かれる等活地獄の記述との共通性が認められる点においても注目される。 以上のように、本断簡は平安時代の絵巻の名品でもある「沙門地獄草紙」の断簡のひとつであり、我が国の六道絵の展開を考えるうえで欠かせないものとして極めて貴重である。