国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
絹本著色釈迦三尊像
ふりがな
:
けんぽんちゃくしょくしゃかさんぞんぞう
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員数
:
1幅
種別
:
絵画
国
:
時代
:
鎌倉時代
年代
:
西暦
:
作者
:
寸法・重量
:
縦82.8センチ 横39.4センチ
品質・形状
:
絹本著色 掛幅装
ト書
:
画賛・奥書・銘文等
:
伝来・その他参考となるべき事項
:
「住吉絵所」と住吉広尚による法眼源慶筆とする鑑定書2通、源慶についての書き付け1枚が付属する。
指定番号(登録番号)
:
2132
枝番
:
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2024.08.27(令和6.08.27)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
所在都道府県
:
愛知県
所在地
:
保管施設の名称
:
所有者名
:
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
詳細解説
釈迦と騎象普賢・騎獅文殊からなる三尊である。同様の構成になる釈迦三尊は、日本では平安時代後期に末法思想とともに盛行する法華経信仰や十六・十八羅漢信仰のなかで造形が展開された。本作はその美麗な画趣と比較的小品であることから、法華経を受持した貴顕の念持仏として作られた可能性がうかがわれる。繊細な截金文様を駆使し、獅子と白象の動勢を抑えた、美麗で温雅な画面には院政期仏画の趣を残す一方、絵具の色調や面部のバランス、精密な細部描写には鎌倉時代の傾向が示される。釈迦三尊のみを1幅にあらわす作例は日本では鎌倉時代以降にしばしばみられるが、そのほとんどは宋画受容が顕著で、13世紀半ば以降のものである。そのなかにあって本作は13世紀後半には下らない古例として重要視される。制作当初の姿をよくとどめ、後世の補加筆が少ないことも特記される。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
一つ書
なし
添付ファイル
なし
解説文
釈迦と騎象普賢・騎獅文殊からなる三尊である。同様の構成になる釈迦三尊は、日本では平安時代後期に末法思想とともに盛行する法華経信仰や十六・十八羅漢信仰のなかで造形が展開された。本作はその美麗な画趣と比較的小品であることから、法華経を受持した貴顕の念持仏として作られた可能性がうかがわれる。繊細な截金文様を駆使し、獅子と白象の動勢を抑えた、美麗で温雅な画面には院政期仏画の趣を残す一方、絵具の色調や面部のバランス、精密な細部描写には鎌倉時代の傾向が示される。釈迦三尊のみを1幅にあらわす作例は日本では鎌倉時代以降にしばしばみられるが、そのほとんどは宋画受容が顕著で、13世紀半ば以降のものである。そのなかにあって本作は13世紀後半には下らない古例として重要視される。制作当初の姿をよくとどめ、後世の補加筆が少ないことも特記される。
詳細解説▶
詳細解説
釈迦と騎象普賢・騎獅文殊からなる三尊を小幅内にあらわした作である。 日本では平安時代以降、騎象の普賢菩薩の影向を説く法華経普賢勧発品に拠りながら、法華経見返絵などに釈迦と普賢・文殊の三尊がああらわされた。一方、釈迦三尊は、釈迦の滅後に正法を護持する役割を担った十六ないし十八羅漢とも組み合わされ、仁平2年(1152)の高陽院での羅漢供では釈迦三尊と十八羅漢とが並んで奉懸された(『兵範記』)。このように釈迦三尊は、平安時代後期に末法思想とともに興隆する法華経信仰や十六・十八羅漢信仰の中で造形が展開された。その中で本作は、繊細な截金文様を駆使し、獅子と白象の動勢を抑えて、美麗で温雅な画面に仕上げる点で院政期仏画の趣を残す。比較的小さな画面に三尊を収めることから、法華経を受持した貴顕の念持仏として作られた可能性がうかがわれる。 他方、本作には、寒色系の絵具を多用する点や、目尻をやや吊り上げ、眉を大きく弓なりに反らせるといった面部のバランス、細部の精密な描写に鎌倉時代の傾向が示される。釈迦の衣の金泥による強い照暈や、金彩を駆使した着衣の文様の緻密さは、益田家旧蔵「普賢十羅刹女像」(重要文化財、個人蔵)や「春日曼荼羅図」(重要文化財、宝山寺蔵)などに近い。したがって本作の制作時期は、鎌倉時代前半から半ば頃とみるのが穏当である。 一画面に釈迦三尊のみをあらわす日本の作例は鎌倉時代以降にしばしば見られ、梅林寺本(重要文化財)、頼久寺本(重要文化財)、宝厳寺本(重要文化財)などがあるが、いずれも宋画の受容が顕著で、13世紀後半以降のものが大半である。そのなかにあって院政期仏画の趣を残す本作は、13世紀半ばまでに制作された古例として重要視される。欠失や補加筆が少なく、制作当初の姿を留める点でも価値が高い。