国宝・重要文化財(美術工芸品)
 主情報
名称 夜寝覚抜書(金銀泥下絵料紙)
ふりがな よわのねざめぬきがき
夜寝覚抜書(金銀泥下絵料紙)
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員数 1巻
種別 書跡・典籍
日本
時代 南北朝
年代
西暦
作者
寸法・重量
品質・形状
ト書
画賛・奥書・銘文等
伝来・その他参考となるべき事項
指定番号(登録番号) 02507
枝番 00
国宝・重文区分 重要文化財
重文指定年月日 1998.06.30(平成10.06.30)
国宝指定年月日
追加年月日
所在都道府県 東京都
所在地 台東区上野公園13-9
保管施設の名称 東京国立博物館
所有者名 国(文化庁)
管理団体・管理責任者名
夜寝覚抜書(金銀泥下絵料紙)
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解説文:
 『夜寝覚』は、菅原孝標女の作といわれる平安時代後期の王朝物語であり、現在完本は伝わっていない。現存諸本には三巻本系統の前田本と五巻本系統の島原本等の二系統があり、前田本の上巻が島原本の巻一・二に、中・下巻が巻三・四・五に相当し、いずれも江戸時代の写本である。『夜寝覚』の構成は四つの部分からなり、第一部が上巻、第二部が中間欠巻、第三部が中・下巻、第四部が末尾欠巻に当たる。
 『夜寝覚』の内容は、源氏太政大臣の娘中君(寝覚上)が前関白左大臣の息権中納言(内大臣)と相思の関係にあって二児を産みながら、さまざまな外的事情に妨げられ、「夜の寝覚絶ゆるよなく」て、数奇の生涯を送るというものである。
 本巻は、その内容からみて『夜寝覚』中の文や和歌を適宜抄出し、一巻に散らし書きしたものであることが知られる。
 体裁は巻子装で、表紙に藍地唐花文色糸金襴、見返は金銀泥水辺鳥草片輪車模様金銀砂子散、軸に牙印可軸を装している。外題、首題は存しない。
 料紙には斐紙を用い、金銀泥にて水辺と水禽と片輪車、芦原と浜千鳥、下弦月と雲霞と雁行、小屋と柴垣など風物を描き、一部芦手絵をまじえた華麗な装飾料紙であり、紙背にも金銀切箔砂子野毛散にて雲霞引を配している。
 本文は『夜寝覚』の欠巻部分である中間部分と末尾部分に相当しており、その欠巻部分の両方から九首の和歌を中心に適宜抄出している。この九首の和歌のうち、「さきにほふはなもかすみもみやこにてみしなからなるはるのあけほの」と、「かきりとていのちをすてしやまさとの夜半のわかれににたるそらかな」の二首は、広沢の地に隠棲している場面を述べている中間部分に収められているものであり、また「しほれわひ我ふるさとのおきの葉にみたるとつけよあきのゆふかせ」と、「しらさりし山ちの月をひとりみて世になき身とやおもひいつらむ」の二首は、寝覚上の偽死事件や蘇生後の様子を描いている末尾部分に収められているものである。いずれの和歌も『拾遺百番歌合』にみえる。ところが、「あはれなとかけをならへて山の葉にすみはつましき契なりけん」などの五首は『拾遺百番歌合』や『風葉和歌集』に見いだすことのできない新出の和歌として注目される。
 本巻に奥書はないが、後光厳院宸翰と伝えられている。おそらく子女の手本として染筆されたものであろうが、本巻のように下絵の装飾料紙に流麗な筆致で書写されたものは比較的伝来稀なものである。
 本巻は南北朝期を下らない古写本で、抜書ではあるものの『夜寝覚』の今まで不明であった欠巻部分を補い、物語の解明に寄与するものであり、その美麗な料紙とあいまって文学史上に貴重なものである。
関連情報
    (情報の有無)
  附指定 なし
  一つ書 なし
  添付ファイル なし