国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
絹本著色如意輪観音像
ふりがな
:
けんぽんちゃくしょくにょいりんかんのんぞう
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員数
:
1幅
種別
:
絵画
国
:
日本
時代
:
鎌倉
年代
:
西暦
:
作者
:
寸法・重量
:
品質・形状
:
ト書
:
画賛・奥書・銘文等
:
伝来・その他参考となるべき事項
:
指定番号(登録番号)
:
01909
枝番
:
00
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
1991.06.21(平成3.06.21)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
所在都道府県
:
滋賀県
所在地
:
保管施設の名称
:
所有者名
:
法蔵寺
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
福をもたらす如意宝珠【によいほうじゆ】(如意)と智恵を意味する法輪【ほうりん】(輪)をあわせた「如意輪」を名とするこの観音は奈良時代から信仰されているが、平安時代以降六観音【ろくかんのん】のひとつとして位置付けられひときわ重視された。特に六臂【ろつび】の如意輪観音像は、各手を六道【ろくどう】に配して六道すべてからの救済に験【しる】しある尊像として貴ばれた。また、増益【ぞうやく】・敬愛【きようあい】・息災【そくさい】を祈る密教修法【みつきようしゆほう】の本尊としても用いられた。
如意輪観音の像容は二臂から十二臂までさまざまであるが、最も普通に造像されたのは六臂像である。本像は右第一手の掌を右頬にあて思惟【しゆい】のさまを表し、第二手は胸前で如意宝珠を持つ。右第三手は立てた右膝にあずけ、垂らした手に念珠【ねんじゆ】を握る。左第一手を左膝後方で光明山【こうみようせん】に突き、第二手は胸脇で、先に赤色の花をつける蓮華の茎を握る。左第三手は肘を屈して左肩先で輪宝【りんぽう】を摘んでいる。このような像容は、金剛智【こんごうち】訳『観自在如意輪菩薩瑜伽法要【かんじざいによいりんぼさつゆがほうよう】』や、その同文異訳である不空【ふくう】訳『観自在菩薩如意輪瑜伽【かんじざいぼさつによいりんゆが】』に説くところとほぼ合致するが、肉身の色は白色であり経の説く金色とは異なる。
六臂の如意輪観音像例としては高雄曼荼羅【たかおまんだら】や伝真言院曼荼羅【でんしんごんいんまんだら】の胎蔵界蓮華部院【たいぞうかいれんげぶいん】中の如意輪観音像があるが、単独像としてはボストン美術館とフリア美術館に平安時代の遺例があるものの、重要文化財の指定を受けているものとしては、鎌倉時代後期以降の作品四点(奈良国立博物館本、金剛寺本、宝厳寺本、岡山普門院旧蔵本)があるにすぎない。以上の単独画像例はいずれも海波に洗われる岩山上に表されているが、本図は背景を全く描いておらず、密教修法本尊として純粋な姿を示していると思われる。連眉【れんび】の顔貌や六臂の姿態は、以上に挙げた単独画像例よりも高雄曼荼羅および伝真言院曼荼羅中の像に近似しており、古様を強くとどめている。特に、伝真言院曼荼羅中の像とは細部にいたるまで合致するところが多く注目される。また、特異な裙裾【もすそ】の表現から天台密教【てんだいみつきよう】との関わりを指摘する意見もある。着衣の輪郭や褶に金泥線を多用することも特徴的である。
条帛や裙は無紋であり全体的に装飾性に乏しいが、菩薩をかたどる描線にはのびがあり、白色を生かした微妙な色調を作りだしているなど本図の画技には見るべきものがある。平安仏画の余韻を残す本図の制作時期は鎌倉時代も早期に遡るとみられ、すぐれた作行きの密教像の大作としてきわめて価値高い。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
一つ書
なし
添付ファイル
なし
解説文
福をもたらす如意宝珠【によいほうじゆ】(如意)と智恵を意味する法輪【ほうりん】(輪)をあわせた「如意輪」を名とするこの観音は奈良時代から信仰されているが、平安時代以降六観音【ろくかんのん】のひとつとして位置付けられひときわ重視された。特に六臂【ろつび】の如意輪観音像は、各手を六道【ろくどう】に配して六道すべてからの救済に験【しる】しある尊像として貴ばれた。また、増益【ぞうやく】・敬愛【きようあい】・息災【そくさい】を祈る密教修法【みつきようしゆほう】の本尊としても用いられた。 如意輪観音の像容は二臂から十二臂までさまざまであるが、最も普通に造像されたのは六臂像である。本像は右第一手の掌を右頬にあて思惟【しゆい】のさまを表し、第二手は胸前で如意宝珠を持つ。右第三手は立てた右膝にあずけ、垂らした手に念珠【ねんじゆ】を握る。左第一手を左膝後方で光明山【こうみようせん】に突き、第二手は胸脇で、先に赤色の花をつける蓮華の茎を握る。左第三手は肘を屈して左肩先で輪宝【りんぽう】を摘んでいる。このような像容は、金剛智【こんごうち】訳『観自在如意輪菩薩瑜伽法要【かんじざいによいりんぼさつゆがほうよう】』や、その同文異訳である不空【ふくう】訳『観自在菩薩如意輪瑜伽【かんじざいぼさつによいりんゆが】』に説くところとほぼ合致するが、肉身の色は白色であり経の説く金色とは異なる。 六臂の如意輪観音像例としては高雄曼荼羅【たかおまんだら】や伝真言院曼荼羅【でんしんごんいんまんだら】の胎蔵界蓮華部院【たいぞうかいれんげぶいん】中の如意輪観音像があるが、単独像としてはボストン美術館とフリア美術館に平安時代の遺例があるものの、重要文化財の指定を受けているものとしては、鎌倉時代後期以降の作品四点(奈良国立博物館本、金剛寺本、宝厳寺本、岡山普門院旧蔵本)があるにすぎない。以上の単独画像例はいずれも海波に洗われる岩山上に表されているが、本図は背景を全く描いておらず、密教修法本尊として純粋な姿を示していると思われる。連眉【れんび】の顔貌や六臂の姿態は、以上に挙げた単独画像例よりも高雄曼荼羅および伝真言院曼荼羅中の像に近似しており、古様を強くとどめている。特に、伝真言院曼荼羅中の像とは細部にいたるまで合致するところが多く注目される。また、特異な裙裾【もすそ】の表現から天台密教【てんだいみつきよう】との関わりを指摘する意見もある。着衣の輪郭や褶に金泥線を多用することも特徴的である。 条帛や裙は無紋であり全体的に装飾性に乏しいが、菩薩をかたどる描線にはのびがあり、白色を生かした微妙な色調を作りだしているなど本図の画技には見るべきものがある。平安仏画の余韻を残す本図の制作時期は鎌倉時代も早期に遡るとみられ、すぐれた作行きの密教像の大作としてきわめて価値高い。