国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
絹本著色不動明王二童子像
ふりがな
:
けんぽんちゃくしょくふどうみょうおうにどうじぞう
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員数
:
1幅
種別
:
絵画
国
:
日本
時代
:
鎌倉
年代
:
西暦
:
作者
:
寸法・重量
:
品質・形状
:
ト書
:
画賛・奥書・銘文等
:
伝来・その他参考となるべき事項
:
指定番号(登録番号)
:
01934
枝番
:
00
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
1995.06.15(平成7.06.15)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
所在都道府県
:
静岡県
所在地
:
静岡県熱海市桃山町26-2
保管施設の名称
:
財団法人エム・オー・エー美術文化財団MOA美術館
所有者名
:
世界救世教
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
本図は大自在天【だいじざいてん】および烏摩妃【うまひ】を踏み立つ不動明王と矜羯羅【こんがら】・制〓迦【せいたか】の二童子を表している。不動明王の火焔の一部が補筆となっている。
不動明王が降三世明王【ごうさんぜみようおう】のように大自在天と妃の烏摩を踏む図像は『別尊雑記【べつそんざつき】』(『覚禅鈔【かくぜんしよう】』にも同一図像収載)および『不動儀軌【ぎき】』(田中本)に収録されているが、本図の不動明王の姿勢や二童子を伴うことなどはこれらの図像集掲載の図像とは異なるもので、ほかに例をみないものである。降三世様不動像の典拠として、『覚禅鈔』不動法に『大日経疏【だいにちきようしよ】』説として不動降三世同体説を挙げており、不空訳『底哩三昧耶経【ちりさまやきよう】』に依拠するとも考えられている。
不動明王は腰をひねって向かって右方に顔を向ける姿で、多くの遺品が顔を左に向けるのに対して珍しい。『別尊雑記』所収の降三世様不動明王も右向きだが、こちらは身体も右に向け、動勢も激しい。これに対して、『不動儀軌』本像では姿態は近似するものの顔の向けるむきが反対である。
制〓迦童子は特異な面相だが、姿勢は青蓮院蔵不動明王二童子像(国宝)と同様であり、矜羯羅童子は醍醐寺蔵不動図像(重要文化財)中の玄朝【げんちよう】様二童子像に則っており、伝統的な図様といえる。明王足下の大自在天は両膝を立て、烏摩妃は両手で明王の足を受けているが、降三世明王画像の遺例においては大自在天が両足を伸ばし烏摩妃は片手で明王の足を支えるというように、他にみられない独特の図柄を示していることも特記されよう。また、諸尊の服飾における彩色は金銀を交えず、文様は単純な花文を中心とした古様なものである。諸尊の服飾に平安時代に流行した宝相華【ほうそうげ】の意匠を多く用いていることも注目される。以上のように、本図は古い図様に依って制作されたと見られる。
また、不動明王の右足を受ける烏摩妃の面貌は、鎌倉時代前期の作とされる石山寺蔵仏涅槃図(重要文化財)中の菩薩像に類し、不動明王や矜羯羅童子は均整のとれた姿態をもち、顔立ちも端正で卑俗に堕しておらず、その制作期は鎌倉時代も前期に遡るものと思われる。火焔の一部以外は保存もよく、他に類例のない図像による画技優れた不動明王画像の大作として高く評価される。
なお、本図は旧箱書により井上馨の所蔵するところであったことがわかる。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
一つ書
なし
添付ファイル
なし
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解説文
本図は大自在天【だいじざいてん】および烏摩妃【うまひ】を踏み立つ不動明王と矜羯羅【こんがら】・制〓迦【せいたか】の二童子を表している。不動明王の火焔の一部が補筆となっている。 不動明王が降三世明王【ごうさんぜみようおう】のように大自在天と妃の烏摩を踏む図像は『別尊雑記【べつそんざつき】』(『覚禅鈔【かくぜんしよう】』にも同一図像収載)および『不動儀軌【ぎき】』(田中本)に収録されているが、本図の不動明王の姿勢や二童子を伴うことなどはこれらの図像集掲載の図像とは異なるもので、ほかに例をみないものである。降三世様不動像の典拠として、『覚禅鈔』不動法に『大日経疏【だいにちきようしよ】』説として不動降三世同体説を挙げており、不空訳『底哩三昧耶経【ちりさまやきよう】』に依拠するとも考えられている。 不動明王は腰をひねって向かって右方に顔を向ける姿で、多くの遺品が顔を左に向けるのに対して珍しい。『別尊雑記』所収の降三世様不動明王も右向きだが、こちらは身体も右に向け、動勢も激しい。これに対して、『不動儀軌』本像では姿態は近似するものの顔の向けるむきが反対である。 制〓迦童子は特異な面相だが、姿勢は青蓮院蔵不動明王二童子像(国宝)と同様であり、矜羯羅童子は醍醐寺蔵不動図像(重要文化財)中の玄朝【げんちよう】様二童子像に則っており、伝統的な図様といえる。明王足下の大自在天は両膝を立て、烏摩妃は両手で明王の足を受けているが、降三世明王画像の遺例においては大自在天が両足を伸ばし烏摩妃は片手で明王の足を支えるというように、他にみられない独特の図柄を示していることも特記されよう。また、諸尊の服飾における彩色は金銀を交えず、文様は単純な花文を中心とした古様なものである。諸尊の服飾に平安時代に流行した宝相華【ほうそうげ】の意匠を多く用いていることも注目される。以上のように、本図は古い図様に依って制作されたと見られる。 また、不動明王の右足を受ける烏摩妃の面貌は、鎌倉時代前期の作とされる石山寺蔵仏涅槃図(重要文化財)中の菩薩像に類し、不動明王や矜羯羅童子は均整のとれた姿態をもち、顔立ちも端正で卑俗に堕しておらず、その制作期は鎌倉時代も前期に遡るものと思われる。火焔の一部以外は保存もよく、他に類例のない図像による画技優れた不動明王画像の大作として高く評価される。 なお、本図は旧箱書により井上馨の所蔵するところであったことがわかる。