国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
重要有形民俗文化財
主情報
名称
:
越後奥三面の山村生産用具
ふりがな
:
えちごおくみおもてのさんそんせいさんようぐ
越後奥三面の山村生産用具
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員数
:
734点
種別
:
生産、生業に用いられるもの
年代
:
その他参考となるべき事項
:
内訳:狩猟用具270点 漁撈用具53点 自然物採集・加工用具108点 農耕用具190点 山樵用具113点
指定番号
:
00218
指定年月日
:
2007.03.07(平成19.03.07)
追加年月日
:
指定基準1
:
(二)生産、生業に用いられるもの 例えば、農具、漁猟具、工匠用具、紡織用具、作業場等
指定基準2
:
(三)地域的特色を示すもの
指定基準3
:
所在都道府県
:
新潟県
所在地
:
村上市岩崩612-118
保管施設の名称
:
縄文の里・朝日 奥三面歴史交流館
所有者名
:
村上市
管理団体・管理責任者名
:
越後奥三面の山村生産用具
解説文:
詳細解説
この資料は、新潟県の最東端、旧岩船郡朝日村大字三面で、狩猟や山菜採り、農耕などに使用されてきた用具類を取りまとめたものである。昭和30年代まで使用されたものを中心に、狩猟用具、漁撈用具、自然物採集・加工用具、農耕用具、山樵用具に大きく分類される。
狩猟を行うマタギの里として早くから知られてきた三面の人々の、狩猟のみならず採集、漁撈、農耕などの様々な生業を組み合わせて生活をしてきた有り様を示す資料が体系的に収集されている。
関連情報
(情報の有無)
附
なし
添付ファイル
なし
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越後奥三面の山村生産用具
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越後奥三面の山村生産用具
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解説文
この資料は、新潟県の最東端、旧岩船郡朝日村大字三面で、狩猟や山菜採り、農耕などに使用されてきた用具類を取りまとめたものである。昭和30年代まで使用されたものを中心に、狩猟用具、漁撈用具、自然物採集・加工用具、農耕用具、山樵用具に大きく分類される。 狩猟を行うマタギの里として早くから知られてきた三面の人々の、狩猟のみならず採集、漁撈、農耕などの様々な生業を組み合わせて生活をしてきた有り様を示す資料が体系的に収集されている。
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詳細解説
この資料は、新潟県の最東端に近い旧岩船郡朝日村大字三面で、狩猟や山菜採り、農耕などに使用されてきた用具類を取りまとめたものである。 三面は、三面川の上流域にあたる朝日山地の山懐にいだかれた集落で、通称奥三面とも呼ばれ昭和60年に奥三面ダムの建設に伴い閉村となった。集落は、三面川と末沢川の合流点近くの三面川右岸の河岸段丘上、標高181㍍の地にあり、豪雪地帯であった。また、険しい山々に囲まれ周辺との交通も容易ではなく、昭和58年に朝日スーパー林道が開通するまでは朝日村中心部から集落に至る交通路は、山形県小国町へ出てそこから蕨峠を越える小国道と小豆峠を越えてヌクミに出て、そこから川づたいに岩崩の集落を経て村上方面に至る道が利用されていたがいずれも徒歩での交通であった。小国道は昭和37年の林道完工に伴い昭和42年まで小国三面間に定期バスが運行されたが、村中心部から三面に至る道は、昭和28年から運行された村営定期船で三面ダムを遡り、船着き場からさらに1時間近く歩かなければならなかった。このような地理的環境もあって経済的には小国町とのつながりが強かった。 集落の周辺の山々にはブナやミズナラの林がよく発達し、川岸にはトチノキやサワグルミが生育していた。これらブナ林の発達した山々にはスゲやカヤ、ヒヨリ、マタタビ、ヤマブドウなどが豊富に生育し、ゴザ、ミノ、スゲガサ、テゴなどの製作に利用された。また、ワラビ、ゼンマイなどの食用植物のほかキノコ類や栗などの木の実も豊富であった。 また、朝日山地一帯は野生動物の宝庫でもあり、ニホンカモシカ、ツキノワグマ、タヌキ、キツネ、アナグマ、ムササビ、サル、ノウサギ、ヤマドリなどの鳥獣が生育し、三面の人々の狩猟の対象となっていた。特にニホンカモシカとツキノワグマの猟は集団で行われていた。 集落の周辺を流れる渓流には魚類が豊富で、昭和24年に集落下流に三面ダムを造る工事が始まるまではサケ、マスが遡って来ており漁撈の有力な対象であった。そのほかイワナ、ヤマメ、ウグイ、カジカ、アユなども捕られており、ドォ(筌)、ヤス、カギなどが使用された。 この他、水田農耕やカノと呼ばれる焼畑耕作などが行われ、これらの生業を組み合わせて三面の生活は営まれてきた。三面の生活では、クマやアナグマなどをとるための罠を仕掛けるオソ場、マスやイワナをとるためのドォ場、カサやゴザ、ミノなどの原料であるスゲを採取する場所であるスゲ場が各家の権利として代々受け継がれていた。 この資料は、昭和30年代まで使用されたものを中心に、狩猟用具、漁撈用具、自然物採集・加工用具、農耕用具、山樵用具に大きく分類される。 狩猟用具は、大型獣であるクマやカモシカ、小型獣であるサル、ノウサギ、ムササビなどの猟に用いられた用具類である。小型獣は個人で、大型獣は集団で猟が行われた。アオシシとも呼ばれたカモシカ猟はスノヤマともいわれ、小寒の15日間山小屋に泊まり込んで行われた。この猟に使われたアオシシヤリ、明治末から使用されるようになった村田銃などのほか、解体に使われたキリハ、獲物を運ぶためのタナワなど、さらに猟の際に身につけたマエカワ、セナカワ、ソデカワ、テカワなどの革製品をはじめヤマギモンなどの装束類、また山小屋で使用したナベやメンツなどの食器類なども含まれている。また、早春に行われたタテシ、デジシと呼ばれるクマ猟も集団で行われた猟で、日帰りの時もあれば2~4泊で行われることもあった。この猟に使われた用具には、クマヤリ、キリハ、タナワ、村田銃などの狩猟具のほかヤマギモンなどの装束類がある。さらに毛皮を乾かすカゲタなどもある。クマの毛皮や胆は高値で販売され貴重な収入源となっていた。クマ猟は集団で行うほかオソと呼ばれる罠を造って行う個人猟があり、これらにはオソの材料を用意するためのナタ、ノコギリなどの用具類もある。 漁撈用具にはダムが建設される以前には遡ってきていたサケやマスをとるためのテンカラカギやマスカギ、カサヤス、川に仕掛けるドォなどがある。ドォにはカジカ、ウグイなどの雑魚をとるためのものもある。 自然物採集・加工用具には大正期の始め頃から商品化し盛んに行われるようになったゼンマイ採りの用具がある。ゼンマイ採りは家からはるかに離れた所に造られたゼンマイ小屋に家族全員が寝泊まりして行った。山で採ったゼンマイをゼンマイ小屋まで運ぶ際に使用するナワテゴや、ゆでる際や加工に使用したアミブクロ、ゼンマイユデナベ、ウスムシロ、アツムシロなどがある。さらに干し上がったゼンマイを家に運ぶのに使用した丸木舟などもある。 農耕用具にはカノと呼ばれた焼畑耕作に使用したトウグワ、カノウナイグワ、カクサトリなどがある。カノでは一年目にソバ、二年目、三年目にはアワ、キビ、ダイズ、アズキなどを作り四年目以降は耕作を放棄するのが一般的であった。また、集落から離れたところにある水田で稲作も行われ、水田の脇には農具や生活用具を一時置いておいたり、農作業時に休むための小屋がたてられており、そこに保管されていたコマザラエ、ガンヅメ、備中鍬、クワなどの用具類がある。 山樵用具にはマサカリ、ハガラミ、ノコギリなどの伐採用具とカギ、カスガイ、クサビ、トンパシ、キフキソリなどの搬出用具がある。 この資料は、狩猟を行うマタギの里として早くから知られてきた三面の人々の、狩猟のみならず採集、漁撈、農耕などの様々な生業を組み合わせて生活をしてきた有り様を示す資料が体系的に収集されている。我が国の山村の生産活動の有り様の一典型を示すものであり、全国的な比較資料としても重要である。