国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
重要有形民俗文化財
主情報
名称
:
会津のからむし生産用具及び製品
ふりがな
:
あいづのからむしせいさんようぐおよびせいひん
会津のからむし生産用具及び製品
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員数
:
384点
種別
:
生産、生業に用いられるもの
年代
:
その他参考となるべき事項
:
内訳:生産用具358点 製品26点
指定番号
:
00225
指定年月日
:
2011.03.09(平成23.03.09)
追加年月日
:
指定基準1
:
(二)生産、生業に用いられるもの 例えば、農具、漁猟具、工匠用具、紡織用具、作業場等
指定基準2
:
(三)地域的特色を示すもの
指定基準3
:
所在都道府県
:
福島県
所在地
:
大沼郡昭和村大字下中津川字中島652
保管施設の名称
:
からむし工芸博物館
所有者名
:
昭和村
管理団体・管理責任者名
:
会津のからむし生産用具及び製品
解説文:
詳細解説
この資料は、カラムシの栽培に用いられた用具類と、その製品である糸と布や着物などを収集したものである。畑に肥料を入れるための用具から、カラムシを刈り取り繊維を取り出すための用具、からむしで布を織る用具、製品である夏着上衣まで広く収集されている。本州で唯一製品としてのからむしの栽培が行われている当該地域における生産の様子をよく示すものである。
関連情報
(情報の有無)
附
なし
添付ファイル
なし
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会津のからむし生産用具及び製品
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会津のからむし生産用具及び製品
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解説文
この資料は、カラムシの栽培に用いられた用具類と、その製品である糸と布や着物などを収集したものである。畑に肥料を入れるための用具から、カラムシを刈り取り繊維を取り出すための用具、からむしで布を織る用具、製品である夏着上衣まで広く収集されている。本州で唯一製品としてのからむしの栽培が行われている当該地域における生産の様子をよく示すものである。
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詳細解説
会津のからむし生産用具及び製品は、昭和村がからむし工芸博物館を開館する前から、村内で伝承されてきたカラムシの栽培に用いられた用具類と、その製品である糸と布や着物などを収集したものである。 カラムシ畑に肥料を入れるために用いられたコイダワラ、テモッコ、ヤセウマなどの運搬具や、カラムシ畑の風除けの囲いに麻を植えていた時代に麻の種を蒔くときに使用した一升枡などに加えて、成長したカラムシを刈り取り繊維を取り出す際に用いられたアオソヒタシバコ、オヒキイタ、オヒキゴなどから構成されている。このほか、からむしで布を織る際に用いたクダタケ、ハタヘ、地機などと、製品である夏着上衣、からむし着物なども収集されている。 からむしは、我が国において江戸時代に木綿が広まる以前から用いられていた麻や絹などとともに、古い繊維の1つとして知られている。 昭和村は、江戸時代以来、からむしの産地として知られ、生産された製品は小千谷縮・越後上布の原料として用いられてきた。天明8年(1788)に古川古松軒によって記された『東遊雑記』には、「この辺の田畑は、何にても生ずべき所なれども、寒中雪深きゆえ、諸品生じ難く、緒にする唐むしという麻にほぼ似たるものを作る。この辺にて多く作りて布に織るなり。この草およそ三年も過ぎざれば、糸の如くして縮に織ることならず、もっとも価の賤しからぬものなり」と記され、からむしが麻とともに重要な換金作物であったことがわかる。また、文化4年(1807)に編まれた『大谷組地志方風俗帳』には「青苧、夏土用中はきひき仕、勿論其節越後国より買人参り相払申候、野尻組大谷組に御座候」と記されており、19世紀初めにはすでに越後からからむし買い入れのために買人が訪れ、越後にからむしが売られていたことを知ることができる。したがって、昭和村では主にからむしの繊維の生産が中心に行われ、ほぼすべてが越後に売られていた。からむしで織った布は、かすりの単衣物などを自家用に作る程度であったといわれる。 昭和村のカラムシ栽培技術は、明治28年には、昭和村大芦の五十嵐善作夫妻が、カラムシの栽培、加工の技術を伝授するためロシアに招聘されるなど高い技術を誇り、その生産量も現在とは比較にならないほど多かったといわれる。 しかしながら、からむし生産量は、第二次大戦中にカラムシ畑が食料畑への転換を余儀なくされて以来激減した。昭和51年頃には年間120貫を超える生産量があったが、それ以後生産量が減り、現在では年間40~50貫ほどの生産量になっている。 からむしはチョマ(苧麻)、アオソ(青苧)とも呼ばれ、昭和村は現在では沖縄県宮古島とならぶ生産地であり、本州においては唯一の生産地として知られている。カラムシは麻が一年生の草本であるのに対し、多年生の草本である。したがって麻は種まきをして栽培するのに対し、カラムシは根の植え付け作業をして栽培する。1年目には春の訪れた5月上旬から堆肥散布や畑耕いなどの畑の準備が始まる。その後、鍬を使っての苗の堀掘り取り、植え付けをして雑草取り、害虫の駆除などの作業が行われる。2年目からは5月中旬頃から畑の除草などを行い、5月下旬にはカラムシの新芽が出たところでカヤ(萱)などをまいて火をつける。これをカラムシ焼きという。こうして芽の出方にばらつきのある新芽を焼き、畑に一斉にそろって出る二番芽を育てる。この後、風除けのため、カヤを使って畑の周りに囲い垣を作り、雑草の刈り取り、害虫駆除の作業などをして、7月下旬頃から8月中旬までの間の土用の頃にからむしカラムシを鎌で刈り取る。 刈り取ったカラムシは畑で葉を落として束ね、尺杖で計って切りおとし、長さをそろえる。これを家に持ち帰りすぐ庭の池の冷たい水に浸けて乾燥しないようにしておく。水に浸けたカラムシの上には、板などをのせ、その上に重い石をのせてカラムシが水から出ないようにしておく。こうしないとカラムシが乾燥し剥ぐときに幹から皮が剥がれにくくなるのだという。この水に浸ける作業は数時間あるいは一晩程で終わり、水から出したカラムシは元を下にして立てて水を切り、日陰や軒下などで莚などを敷いた上で皮剥ぎ作業をする。 皮剥ぎはカラムシの幹を折り手で皮を剥ぎ取っていく。剥ぎ取った皮は伸ばして手元に置き、一握りぐらいずつに束ね、乾燥を防ぎ、また、剥いだ皮から出る青水を流すためにすぐ水に浸ける。 からむしカラムシの繊維をとるからむし引きは、刈り取り、皮剥ぎに続いて行われ、7月20日頃の土用の入り頃から始まり8月の月遅れの盆前に終わればいい繊維がとれるといわれている。からむし引きの用具には、カラムシヒキバンあるいはオヒキバンとも呼ばれるカラムシバン、カラムシヒキイタ、木製の丸い取っ手に金属の刃を取り付けたオヒキゴ、オヒキゴにつける水を入れておくブッタテミズイレ、コシカケなどがある。カラムシバンを床から土間にかけて斜めに据え、その上にカラムシヒキイタを置きこの上にカラムシをのせ、オヒキゴで皮を剥いで白い光沢のある繊維を引きだしていく。引き出した繊維は元のほうを束ねて竿にかけて干し、乾燥させる。この時に使われる竿はカラムシサオと呼ばれ、一寸角の杉材の節のない物が用いられ、干す場所も室内などきれいな場所が使われる。3日ほど干すと秤にかけて1束105匁になるように束ね、座敷等に重ねて白い布をかけて保管しておく。 カラムシを刈り取った畑は、刈り取った後に出た芽が長く伸びないうちに囲い垣を取り払い、使われていたカヤは翌年の栽培のための畑の手入れとして、刈り取った畑周囲の草とともに畑にまき散らして堆肥として利用する。 この資料は、福島県昭和村で行われてきたからむし生産に用いられてきた用具のまとまりで、本州で唯一製品としてのからむしの栽培が行われている当該地域における生産の様子を具体的に示すまとまりである。我が国における伝統的な植物繊維であるからむしの生産のあり方とその利用のあり方を知る上で重要なものである。