国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
重要有形民俗文化財
主情報
名称
:
越前和紙の製作用具及び製品
ふりがな
:
えちぜんわしのせいさくようぐおよびせいひん
越前和紙の製作用具及び製品
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員数
:
2523点
種別
:
生産、生業に用いられるもの
年代
:
その他参考となるべき事項
:
指定番号
:
00228
指定年月日
:
2014.03.10(平成26.03.10)
追加年月日
:
指定基準1
:
(二)生産、生業に用いられるもの 例えば、農具、漁猟具、工匠用具、紡織用具、作業場等
指定基準2
:
(三)地域的特色を示すもの
指定基準3
:
(六)職能の様相を示すもの
所在都道府県
:
福井県
所在地
:
福井県越前市越前市定友町21-3-1(越前市今立歴史民俗資料館)
福井県越前市新在家町11-12(紙の文化博物館)
保管施設の名称
:
越前市今立歴史民俗資料館・紙の文化博物館
所有者名
:
越前市
管理団体・管理責任者名
:
越前和紙の製作用具及び製品
解説文:
詳細解説
本件は、越前和紙の原料加工、煮熟(にじゅく)、塵取(ちりとり)、叩解(こうかい)、調合、ネリ抽出、抄紙(しょうし)、乾燥、仕上げなどの各工程で用いられる桶、漉槽、マグワ、漉桁、漉簀、型紙、カナガタなどの様々な用具類がまとめられている。檀紙、杉原紙、鳥の子紙などのほか、近世には藩札用の紙、近代に入ると局紙と呼ばれる紙幣用の紙なども漉かれた和紙の代表的な産地の用具類である。
関連情報
(情報の有無)
附
なし
添付ファイル
なし
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越前和紙の製作用具及び製品
越前和紙の製作用具及び製品
越前和紙の製作用具及び製品(三色墨流奉書紙)
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越前和紙の製作用具及び製品
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越前和紙の製作用具及び製品
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越前和紙の製作用具及び製品(三色墨流奉書紙)
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解説文
本件は、越前和紙の原料加工、煮熟(にじゅく)、塵取(ちりとり)、叩解(こうかい)、調合、ネリ抽出、抄紙(しょうし)、乾燥、仕上げなどの各工程で用いられる桶、漉槽、マグワ、漉桁、漉簀、型紙、カナガタなどの様々な用具類がまとめられている。檀紙、杉原紙、鳥の子紙などのほか、近世には藩札用の紙、近代に入ると局紙と呼ばれる紙幣用の紙なども漉かれた和紙の代表的な産地の用具類である。
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詳細解説
越前和紙の製作用具及び製品は、福井県越前市旧今立の五箇地区と呼ばれる不老(おいず)、大滝(おおたき)、岩本(いわもと)、新在家(しんざいけ)、定友(さだとも)を中心に行われてきた紙漉きに使用された用具類と製品や紙の見本などを取りまとめたものである。 越前市旧今立の五箇地区は、福井県嶺北地方の中ほどに南北に広がる平野部の南端近くに位置する。五箇地区の東端、谷の奥に位置する大滝には紙祖神(しそじん)と信仰される川上御前を祀る岡太神社・大滝神社が鎮座している。地元の伝説では、岡太川上流に川上御前と名乗る高貴な女性が現れ、田畑の少ないこの地域の人々に紙漉きの技を教えたと伝えられ、その川上御前を祀ったのが大滝神社・岡太神社であるといわれている。 五箇地区における紙漉きは、古代に始まったといわれ、越前における紙の主要な産地であった。中世には大滝神社は、大徳山大滝寺と呼ばれ、越前における白山信仰の拠点の一つであったといわれている。この大滝寺の下に紙の生産販売を独占する紙座が置かれ、中世を通じて贈答、写経用の紙が漉かれていたという。近世には五箇は福井藩領となりその支配を受けたが、この地域の数軒の家が「御紙屋」として地区の紙漉きを取り仕切っていた。五箇地区では藩札用の紙漉きも行われていた。明治維新後は藩や幕府の御用紙の注文はなくなったが太政官金札の漉きたてを五箇地区で引き受けるなど和紙製作は活況を呈した。さらに、明治8年には大蔵省紙幣寮抄紙局へ紙幣用紙開発のために8人の紙漉工が招かれ、2年後には紙幣用の「局紙」を漉き始めた。それ以来この地区でも「局紙」の生産が本格的に始められている。 越前和紙には奉書、小間紙、檀紙、大紙、局紙など様々な種類の紙がある。五箇地区で紙漉きに携わる人々は自分たちのことを「奉書漉屋」、「小間紙漉屋」などといい、それぞれ漉く紙の種類を特定しており、奉書を漉く人は小間紙など他の紙は漉かないというように専門化している。従って、それぞれの技術を他に教えることもなく家ごとに伝承されている。また、専門化と同時に五箇地区の紙漉きは他の和紙産地と異なり、冬場における農間余業的な季節的な稼業ではなく、一年中稼業しているという特色もある。 越前和紙の製作工程は、原料加工から始まる。楮を水に浸して表皮と甘皮を削り、釜の中で煮て柔らかくし、さらに灰汁出し、塵選り、叩解(こうかい)などの作業を経て紙漉きの原料とする。これらの作業には楮の皮を削るカワハギダイ、カギ、オケ、カナアミなどや、楮などの原料を煮る時に用いるニガマ、カクハンボウ、クズカゴ、塵選りに用いるバンドコ、ショクダイ、ソウケ、原料を叩いてほぐす時に用いるタタキイタ、カイ、ミミオケなどや、原料に混ぜるネリを抽出するためのキヅチ、ネリオケなどがある。 紙を漉き出す抄紙(しようし)の工程では、原料を入れるフネ、フネの中を混ぜ合わせるのに用いるマグワ、漉きだした濡れたままの紙をのせるシトイタのほか、局紙を漉く時に漉いた紙の間に挟むキレとキレカケダイなどの用具がある。また紙漉作業で重要な役割を果たすスやケタなどもある。 また、多種類の紙を漉いてきたことから、その紙に応じた用具類も多く残っている。漉き掛けに用いられるス、ケタ、打雲用のフネなどがあり、流し込みにはカタ、ケタ、ナガシコミヨウキなどがある。また、ひっかけと呼ばれる漉き模様の技法に用いられるカナガタやハンガタなども残されている。 これら漉きだした紙はシトイタに重ねた後、圧力を加えて水分を抜く。これにはテンビンボウ、オモシが用いられる。中でも檀紙の製作にはシボをつけるために使用するイタが用いられる。水分を抜き終わった紙はイタに貼り付けて干す。この作業はかつては天日乾燥であったが現在では室に入れて乾燥させている。この作業にはホシイタやワクイタ、ハケ、コロ、ヘラ等が使われる。乾燥した後の紙に加工を施す技法も越前和紙にはあり、その一つである墨流しにはスミナガシヨウフネ、ツヤダシヨウタケ、カタガミなどの用具がある。 これら様々な技法を駆使して出来上がった紙は出荷する前に決められた大きさに断裁する。キリイタの上に紙の束をのせ、カミキリホウチョウ、カミバサミ、シャク、ジョウギ、キリホンなどが用いられる。 最後に販売、出荷用の用具がある。これらは、紙の包み紙に押した印判類、御用札、御用長持、提灯台、行燈、看板など様々である。 製品類にはこの地区で漉かれてきた奉書や檀紙など多くの種類の紙がある。なかには近世初期のものと伝えられる紙もある。また近世の藩札用紙などもあり、この地域で漉かれた各種の和紙を具体的に知ることのできる。 本件は越前市今立歴史民俗資料館、紙の文化博物館に保管されている。紙の文化博物館は、越前産紙卸商組合により昭和9年に設立された「産紙奨励館」を前身としている。これが昭和33年に当時の今立町に引き継がれ、平成17年の武生市との合併により成立した越前市の施設となった。紙の文化博物館には前身の「産紙奨励館」以来、五箇地区で廃業する漉き屋で不要になった用具類が収集され、越前市今立歴史民俗資料館と合わせて保管されてきた。そして平成21年から22年にかけては福井県が中心となって台帳作りが進められ、23年度からは越前市が作業を引き継いで整理事業を終了させた。