国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
重要有形民俗文化財
主情報
名称
:
西日本の背負運搬具コレクション
ふりがな
:
にしにほんのせおいうんぱんぐコレクション
西日本の背負運搬具コレクション
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員数
:
310点
種別
:
交通・運輸・通信に用いられるもの
年代
:
その他参考となるべき事項
:
指定番号
:
230
指定年月日
:
2015.03.02(平成27.03.02)
追加年月日
:
指定基準1
:
(三)交通、運輸、通信に用いられるもの 例えば、運搬具、舟車、飛脚用具、関所等
指定基準2
:
(一)歴史的変遷を示すもの
指定基準3
:
(三)地域的特色を示すもの
所在都道府県
:
香川県
所在地
:
香川県高松市亀水町1412-2
保管施設の名称
:
瀬戸内海歴史民俗資料館
所有者名
:
香川県
管理団体・管理責任者名
:
西日本の背負運搬具コレクション
解説文:
詳細解説
生活を支えるさまざまな物資の移動に用いられた、背に負う型式の運搬具のうち、西日本に特徴的にみられる運搬具を分類、整理した収集である。
西日本には、日本の在来型で、荷物を受ける爪を持たない無爪の背負梯子と、主に朝鮮半島の影響を受けて発生した長い爪のある有爪の背負梯子の存在が知られており、日本列島の中でも多様な運搬具の形態がみられる。
本件は、西日本に限定的に分布する背負梯子である有爪の負子を中心に、原初的な運搬具である負縄をはじめ、背中当、負箱、板負子、籠負子、担又といった運搬具と、運搬時の補助具である息杖などから構成され、紀伊山地から九州山地に至る西日本の広域から収集されたものである。
関連情報
(情報の有無)
附
なし
添付ファイル
なし
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西日本の背負運搬具コレクション
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西日本の背負運搬具コレクション
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解説文
生活を支えるさまざまな物資の移動に用いられた、背に負う型式の運搬具のうち、西日本に特徴的にみられる運搬具を分類、整理した収集である。 西日本には、日本の在来型で、荷物を受ける爪を持たない無爪の背負梯子と、主に朝鮮半島の影響を受けて発生した長い爪のある有爪の背負梯子の存在が知られており、日本列島の中でも多様な運搬具の形態がみられる。 本件は、西日本に限定的に分布する背負梯子である有爪の負子を中心に、原初的な運搬具である負縄をはじめ、背中当、負箱、板負子、籠負子、担又といった運搬具と、運搬時の補助具である息杖などから構成され、紀伊山地から九州山地に至る西日本の広域から収集されたものである。
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詳細解説
西日本の背負運搬具コレクションは、生活を支えるさまざまな物資の移動に用いられた、背に負う型式の運搬具の収集で、特に西日本地域に特徴的にみられる背負運搬具を分類、整理したものである。 人が自らの体躯を利用した人力による運搬手段の中でも、背に荷物を負って移動する方法は、日本列島の広い範囲にみられ、ショイコやオイコなどと呼ばれる背負梯子を中心に各種の用具が生み出されてきた。背負梯子は、梯形や矩形などの木枠とこれを負うための縄を基本構造とするが、荷物を受ける爪の有無で形態的に分類され、またその発展段階が考えられてきた。なかでも西日本には、日本の在来型で爪を枠部に持たない無爪の背負梯子と、朝鮮半島の背負運搬具との類似性などが指摘されてきた有爪の背負梯子の存在が知られており、無爪の背負運搬具が一極的に分布する東日本とは対照的に、日本列島の中でも多様な運搬具の形態がみられる。 本件は、香川県の瀬戸内海歴史民俗資料館が長年にわたり収集を進めてきたもので、西日本に卓越的に分布する背負梯子である有爪の負子を主軸とし、原初的な運搬具である負縄をはじめ、背中当、負箱、板負子、籠負子、担又といった運搬具と、運搬時の補助具である息杖、負子の製作過程を示す負子板図や負子部材から構成される。収集の範囲は、主に紀伊山地から中国山地、四国山地、九州山地まで広域に及んでおり、西日本地域を網羅している。その範囲を都道府県別に示すと、福井県、三重県、滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県の1府22県となる。 負子は、木枠型の背負運搬具で、オイコの呼称を基調にオイダイやキエーコ、セイタ、カルイなどと呼ばれる。有爪の負子は、西日本の各地から収集されており、肩縄で負う形式が多く、比較的短い爪が枠部に直角に近い角度で付くものと強度のある長い爪が付くものに大別できる。前者は在来の無爪の形態が有爪化したもの、後者は朝鮮半島の背負運搬具の影響を受けて発生したものと考えられている。後者の代表的な事例には、大分県で椎茸栽培に用いられた豊後型と呼ばれる負子があり、木枠を体側に大きく湾曲させ、角度のある長い爪が取り付けられていて、朝鮮半島のチゲと呼ばれる背負運搬具との共通性が認められる。この種の負子は、豊後茸師の移動によって西日本の各地に伝えられ、九州だけでなく、中国山地や四国山地からも収集されている。 また、負子には、その地域の自然環境や生業、用途を反映するかたちで工夫がみられるものが少なくない。芸予諸島や佐多岬半島から宇和海沿岸で蜜柑栽培に用いられた負子には、爪の位置を変えることで蜜柑箱の積載数を調整したものや、アカマツなどの叉木を利用して蜜柑箱の運搬に適したL字型にしたものがある。四国山地で山仕事に使われた負子は、重量のある木材を運ぶために枠部の横木を増やして多桟化しており、棚田の石積に使われた負子は、爪を上部に取り付けて体が後ろにとられないよう重心を高くしている。また、瀬戸内海の男木島などの離島では、島内の狭い傾斜道を使って海藻や麦などを大量に運ぶため、二メートル近い大型で縦長の負子が作られており、その地域の生活に応じた背負運搬具の形態的な展開がみられる。 負縄は、荷物を負うための縄で、オイナワやオイソなどと呼ばれる。藁や棕櫚を主な材料とし、胸掛け式の一本負縄と肩掛け式の二本負縄があり、西日本に主流の後者が多く収集されている。四国山地では、山中で山姥や蛇を避ける呪いとして、縄の左右の長さを違える習俗があるが、この習俗を伝える寸法の違う二本負縄も含まれる。背中当は、負縄と合わせて用いる藁製の緩衝具で、セナカアテやセアテなどと呼ばれる。楕円形や方形などがあり、なかでも若狭地方で収集された背中当には、木枠付で負子にきわめて類似したものも含まれており、背負運搬具の発達をうかがうことができる。 負箱は、箱型の運搬具で、バラスオイやニコーなどと呼ばれる。中国山地で主に土木工事用に使われたもので、石などを運び、付属の針金を引くと下蓋が開閉し、中身が落ちる構造になっている。板負子は、もっこ付きの板状の運搬具で、修験が用いた板笈と似た形態をとる。イタオイコやセイタなどと呼ばれ、中国山地で遠方の田畑に堆肥を運ぶのに使用されていたものである。籠負子は、円錐形の籠と負子が複合する形態の運搬具で、コエオイコやコシゴなどと呼ばれる。籠部分には、竹や藁縄を蜘蛛の巣状に張りめぐらせており、芸予諸島や中国山地で堆肥や土の運搬用に使われていた。担又は、Y字型の叉木を使った運搬具で、カタギやカタギマタ、カタウマなどと呼ばれる。二本の叉木の頂部を結び、叉部に担ぎ棒を取り付けたもので、作業の現場で簡易的に作られた。炭焼きに使われていたものを四国山地や讃岐山脈から収集している。 息杖は、負子の使用時に補助具として用いられた杖である。ツエやニボーなどと呼ばれ、短いものと長いものがある。短いものは、負子を背負い、立った姿勢のままで負子の下に支え入れて休息するときに使い、一方、長いものは脚の長い負子を地面に下し、斜めに立て掛けるようにして使用したもので、紀伊山地や四国山地などから収集されている。このほかに負子の板図と部材がある。特に板図は、収集例の少ないスギ板に引かれた製作図面で、高知県と広島県から収集されており、この種の運搬具の製作過程やそれを手掛ける半専門的な大工がいたことがわかる。