国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
重要有形民俗文化財
主情報
名称
:
砺波の生活・生産用具
ふりがな
:
となみのせいかつ・せいさんようぐ
砺波の生活・生産用具
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員数
:
6900点
種別
:
生産、生業に用いられるもの
年代
:
その他参考となるべき事項
:
内訳:生活用具3,202点 生産用具3,698点
指定番号
:
233
指定年月日
:
2017.03.03(平成29.03.03)
追加年月日
:
指定基準1
:
(一)衣食住に用いられるもの 例えば、衣服、装身具、飲食用具、光熱用具、家具調度、住居等
指定基準2
:
(二)生産、生業に用いられるもの 例えば、農具、漁猟具、工匠用具、紡織用具、作業場等
指定基準3
:
(三)地域的特色を示すもの
所在都道府県
:
富山県
所在地
:
富山県砺波市頼成566番地 砺波市立庄東小学校 3階
富山県砺波市太郎丸80番地
保管施設の名称
:
砺波民具展示室
となみ散居村ミュージアム民具館
所有者名
:
砺波市
管理団体・管理責任者名
:
砺波の生活・生産用具
解説文:
詳細解説
本件は,富山県西部の砺波地方で営まれてきた生活や生業に関する用具類を網羅的に収集・整理したものである。
砺波地方は,富山県西部を流れる庄川と小矢部川流域に形成された扇状地と平野からなり,特に扇状地では家屋周辺の樹林を有効に利用した生活が営まれるとともに,稲作を中心とした農耕に様々な生業を複合させて生計が立てられてきた。
生活用具は,衣食住をはじめとする日常生活の用具類全般だけでなく,婚姻や葬送,年中行事などのハレの場で用いられる用具などもあり,この地域の生活を総体的に理解できる収集となっている。
生産用具は,稲作を主とした農耕に,山樵や養蚕,紡織などを複合させた生業の様相が読み取れるほか,村の中の生活や生業を支えた桶屋,鍛冶屋,村医者などの用具類も収集されている。また,農耕用具の中には,大正期から裏作で行われているチューリップの球根栽培用具も含まれており,地域的特色がみられる。
これらの用具類には,この地域で考案されて普及した用具類や,この地域の特色ある習俗で用いられる用具などもみられるほか,この地域が北限と考えられる用具,東日本と西日本のそれぞれに顕著な用具も混在してみられる。
関連情報
(情報の有無)
附
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
砺波の生活・生産用具
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砺波の生活・生産用具
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解説文
本件は,富山県西部の砺波地方で営まれてきた生活や生業に関する用具類を網羅的に収集・整理したものである。 砺波地方は,富山県西部を流れる庄川と小矢部川流域に形成された扇状地と平野からなり,特に扇状地では家屋周辺の樹林を有効に利用した生活が営まれるとともに,稲作を中心とした農耕に様々な生業を複合させて生計が立てられてきた。 生活用具は,衣食住をはじめとする日常生活の用具類全般だけでなく,婚姻や葬送,年中行事などのハレの場で用いられる用具などもあり,この地域の生活を総体的に理解できる収集となっている。 生産用具は,稲作を主とした農耕に,山樵や養蚕,紡織などを複合させた生業の様相が読み取れるほか,村の中の生活や生業を支えた桶屋,鍛冶屋,村医者などの用具類も収集されている。また,農耕用具の中には,大正期から裏作で行われているチューリップの球根栽培用具も含まれており,地域的特色がみられる。 これらの用具類には,この地域で考案されて普及した用具類や,この地域の特色ある習俗で用いられる用具などもみられるほか,この地域が北限と考えられる用具,東日本と西日本のそれぞれに顕著な用具も混在してみられる。
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詳細解説
砺波の生活・生産用具は、富山県砺波地方で営まれてきた庶民の生活と生業に関する用具類を網羅的に収集・整理したものである。 砺波地方は、富山県西部に位置する砺波市、南砺市、高岡市、小矢部市からなる一帯である。庄川と小矢部川によって形成された砺波平野とそれを囲むように東西と南に小高い山々がみられ、山地からでた川の流域には扇状地が形成され、下流域は沖積平野となっている。いずれの地域も生業の中心を稲作とする典型的な農村で、これに現金収入源としていくつかの副業を組み合わせることで生計を成り立たせてきた。山際では林業や養蚕、平野部では養蚕や紡織、山地に比較的近い扇状地では林業や養蚕、チューリップの球根栽培を稲作に組み合わせることが多かった。景観的には、平野部や山際は集村の形態をとるのに対して、扇状地では屋敷の周囲に耕地を集積させ、屋敷を杉や竹などの樹木で囲むカイニョと呼ばれる屋敷林を発達させた散居村の形態をとる。これらの地域の生活では、山際では山の産物なども積極的に利用し、扇状地ではカイニョを管理・利用しながらの伝統的な生活が営まれてきた。 本資料群のうち、生活用具は、衣生活用具、食生活用具、住生活用具、社会生活用具、手仕事用具、娯楽遊戯用具、信仰儀礼用具に分類される。このうち衣生活用具では、日常生活や生業で着用する衣類から儀礼等の場で着用する衣類まで幅広く網羅し、日本海側の仕事着として特色のある木綿の端切れを利用した裂き織もある。 食生活用具は、日常生活から儀礼等の場までの料理や食事に関する用具類を網羅している。稲作で生産された米を調理する蒸籠や臼、杵、釜などのほか、野菜類を洗う笊やソーケ、里芋を洗う芋洗い、蕎麦粉(そばこ)などをこねるための、雑木を刳りぬいたコネバチ、日常の食事で用いた箱御膳や儀礼等の場で多くの人を招いたときに用いた懐石御膳などと呼ばれる輪島塗の共有膳椀などがある。稲の籾殻を燃料にして米を炊くネカベッツイは、簡易で移動できる鉄製の竈として重宝された。 住生活用具は、提灯や行燈などの小型のものから、風呂桶、箪笥などの大型の家具類までを網羅し、冬期に用いられる湯タンポ、炬燵櫓などの暖房用具、バンバやコースキといった雪掻きの用具もある。カイニョの管理・利用に用いる剪定鋏、箕、ドーワなどもあり、いずれも日常生活の様相を知るうえで不可欠なものである。 社会生活用具は、村の中での情報伝達に用いられたハンギ、防災に用いられた拍子木や火番札、消防の用具類、共同で所有・利用された味噌作り用の大釜、その利用法を規定した利用札などがあり、農村での共同生活の実態をよく示している。 手仕事用具は、生活の中で用いられる藁製品を自家で製作する用具類や、裁縫関係の用具類などである。 娯楽遊戯用具は、泥人形、コマなどや、冬期に用いたゲタスキーやスキーである。 信仰儀礼用具には、正月の天神講で床の間にかけられる天神の掛け軸、豊作祈願で行われるヨタカで用いる用具類、稲刈り後の報恩講で用いる用具類など、砺波を含む北陸地方で特徴的な信仰を示す用具類が揃っている。また、婚姻や葬送といった人生儀礼の用具も充実しており、花嫁が嫁ぎ先に入る際にくぐる加賀友禅の豪華な暖簾は、嫁暖簾と呼ばれ、旧加賀藩領に顕著にみられる習俗を知るうえで注目される。 生産用具は、農耕用具、漁撈用具、山樵用具、養蚕用具、紡織用具、諸職用具、商業用具などに分類される。農耕用具の中心は稲作用具で、明治時代に旧砺波郡放寺(ほうじ)村で製作された単用犂(たんようすき)の放寺の犂、その後これに取って代わる形で長野県から移入される双用犂の松山犂、さらにその松山犂を参考に旧東砺波郡東野尻村などで生産される川辺犂、犀川犂などがあってその変遷を読み取れる。また、高岡市本保の黒田太八郎が明治20年(1887)頃に考案したと伝えられる田植に用いるコロバシ、旧射水郡櫛田村松原で生産された「松」の墨書のある松原唐箕、砺波市出町のトナミ農機が生産して一帯に普及した除草で用いるラチウチキなど、この地域で考案ないし生産されて普及した農具も多く、地域的特色が顕著である。なかでも大正9年に旧東砺波郡南般若村の元井豊蔵が考案した螺旋水車は、水力を動力に変える、この地域独特の用具で、これを用いた動力式の唐箕や脱穀機などもある。 畑作用具では、特にチューリップの球根栽培の用具が地域的特色をもつ。チューリップの球根栽培は、大正七年に旧砺波郡庄下村の水野豊造が国内で最も早くに始めたもので、稲作の裏作として、特に散居村で盛んに行われ、今日も我が国最大の産地となっている。栽培当初の用具から昭和四十年代までの用具が揃っており、近代以降のこの地域の生業の変遷の一端をよく示している。また、麦などの脱穀に用いるカラサオは、日本海側の分布の北限にあたると同時に、広くみられる回転軸をもつものと九州の一部にみられる紐で結束したものが混在する。このことは、農産物などを運ぶセータが東日本に多い爪のないものと西日本に多い爪のあるものが混在することと並んで、日本列島におけるこの地域の文化的位置づけを考えるうえで注目される。 漁撈用具は、河川や水路で用いられた投網(とあみ)やヤス、カンテラなどで、水路に仕掛けて魚を追い込んで獲るブッタイと呼ぶ三角錐状の用具や獲れた魚を入れたビクは、材料として用いられる竹をカイニョから調達することも多く、散居村での生活との密接な関わりも示している。 山樵用具、養蚕用具、紡織用具は、いずれも貴重な現金収入源として行われてきた副業に関する用具類である。山樵用具は、冬期の農閑期に主に男性が携わった副業の用具で、木を伐るヨキや伐った木を移動するキマシや板に挽くマエビキ、木を運搬するソリなどがある。養蚕用具は、蚕を飼って絹糸を取るまでの一連の用具類である。紡織用具は、冬期の農閑期に主に女性が携わった副業の用具で、糸を紡いで布を織るまでの一連の用具類があり、山際に自生した麻苧(あさお)などの皮を剥ぐウビキや、績んだ麻苧を入れるオボケなどもある。 諸職用具は、屋根葺き、瓦作り、大工、壁屋など住生活用具に係る職人の用具類のほか、桶屋、鍛冶屋、下駄屋など日常生活の用具類を製作したり補修したりする職人の用具類も一式で揃っている。このうち菓子職人の用具には、北陸地方で節供などの年中行事や婚姻などの人生儀礼の際に用いられる金花糖と呼ばれる落雁の多種多様な木型があり、地域的特色を示している。 商業用具は、村に店を構えた商人の用具類が主で、魚屋や薬屋、酒屋、鋸屋などの用具が取り揃えられている。また、村に居住した医者の治療関係の用具もあり、この地域の生業だけでなく、日常生活の様相を知るうえでも注目されるものである。