国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
重要有形民俗文化財
主情報
名称
:
伊達の蚕種製造及び養蚕・製糸関連用具
ふりがな
:
だてのさんしゅせいぞうおよびようさん・せいしかんれんようぐ
伊達の蚕種製造及び養蚕・製糸関連用具
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員数
:
1,344点
種別
:
生産、生業に用いられるもの
年代
:
その他参考となるべき事項
:
内訳:蚕種製造用具485点、養蚕用具490点、製糸用具176点、製織用具105点、真綿製造用具46点、その他42点
※本件は平成20年3月13日に登録有形民俗文化財となっていた
指定番号
:
262
指定年月日
:
2019.03.28(平成31.03.28)
追加年月日
:
指定基準1
:
(二)生産、生業に用いられるもの 例えば、農具、漁猟具、工匠用具、紡織用具、作業場等
指定基準2
:
(三)地域的特色を示すもの
指定基準3
:
所在都道府県
:
福島県
所在地
:
伊達市
保管施設の名称
:
伊達市保原歴史文化資料館・泉原養蚕用具整理室
所有者名
:
伊達市
管理団体・管理責任者名
:
伊達の蚕種製造及び養蚕・製糸関連用具
解説文:
詳細解説
福島県の伊達地方で盛んに行われてきた蚕の卵を作る蚕種製造と養蚕,製糸に関する用具を分類,整理したものである。伊達地方は,古くから養蚕が行われ,近世には質の高い繭と糸を作り出す蚕の品種の製造に力を入れ,幕府より「蚕種本場」の称号を許されて蚕種の一大産地としての地位を築いた。また,伊達地方は,「温暖育」や「蚕当計」の発明など養蚕技術の先進地域でもあり,郡内の繭市には各地から生糸商人が集まるなど,東北地方の蚕都として栄えた。
本収集は,このような伊達地方における蚕糸業の実態をよく示すものであり,蚕種製造と養蚕,製糸の用具を中心に,製織,真綿製造,繭見本,養蚕信仰などに関する用具から構成される。蚕種製造用具は,「平付」「框製」「バラ種」という製造法の時代的な変遷に沿って各種の用具が収集されており,養蚕用具は,当地で発明された蚕専用の寒暖計である「蚕当計」,製糸用具は,東北地方に特徴的な糸繰り用具である胴繰器や奥州座繰器などを含む用具一式が揃っている。このほかに,種繭の選別に使われ,国内外の蚕の品種を集めた繭見本が数多く収集されており,蚕種製造の一大産地であったことを示唆している。(解説は指定当時のものです)
関連情報
(情報の有無)
附
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
伊達の蚕種製造及び養蚕・製糸関連用具
伊達の蚕種製造及び養蚕・製糸関連用具
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解説文
福島県の伊達地方で盛んに行われてきた蚕の卵を作る蚕種製造と養蚕,製糸に関する用具を分類,整理したものである。伊達地方は,古くから養蚕が行われ,近世には質の高い繭と糸を作り出す蚕の品種の製造に力を入れ,幕府より「蚕種本場」の称号を許されて蚕種の一大産地としての地位を築いた。また,伊達地方は,「温暖育」や「蚕当計」の発明など養蚕技術の先進地域でもあり,郡内の繭市には各地から生糸商人が集まるなど,東北地方の蚕都として栄えた。 本収集は,このような伊達地方における蚕糸業の実態をよく示すものであり,蚕種製造と養蚕,製糸の用具を中心に,製織,真綿製造,繭見本,養蚕信仰などに関する用具から構成される。蚕種製造用具は,「平付」「框製」「バラ種」という製造法の時代的な変遷に沿って各種の用具が収集されており,養蚕用具は,当地で発明された蚕専用の寒暖計である「蚕当計」,製糸用具は,東北地方に特徴的な糸繰り用具である胴繰器や奥州座繰器などを含む用具一式が揃っている。このほかに,種繭の選別に使われ,国内外の蚕の品種を集めた繭見本が数多く収集されており,蚕種製造の一大産地であったことを示唆している。(解説は指定当時のものです)
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詳細解説
伊達の蚕種製造及び養蚕・製糸関連用具は、福島県の伊達地方で盛んに行われてきた蚕の卵を作る蚕種製造と養蚕、製糸に関する用具を分類、整理したものである。 伊達市は、奥羽山脈と阿武隈高地に挟まれた福島県中通りの北部に位置する。市域の西部から中央部は福島盆地の平野部で市街地が広がり、北東部から南部にかけては霊山を中心とする山地と丘陵地で、その間を阿武隈川が流れる。現在は、果樹栽培が主要な産業であるが、近世を通じて伊達郡一帯では養蚕業が発展し、梁川村(現伊達市梁川町)を中心に東北地方の蚕都として栄えた。とくに近世中期以降は、江戸幕府による和糸生産の奨励を背景に良質の繭と生糸をとれる優秀な蚕の生産に力を入れ、安永2年(1773)には幕府より「蚕種本場」の称号を許され、伊達の名は広く知られるところとなり、関東を中心に蚕種を独占的に販売した。蚕種の製造は、蚕の卵と桑の葉の病毒を避けるために乾燥した排水のよい土地が好まれ、そうした条件が整っていた阿武隈川沿岸の長岡、伏黒、保原、中瀬、粟野、二野袋、梁川などの村々がその中心地で、一方の山沿いの地域には、養蚕・製糸業地が形成され、享保年間(1716~1736)にはすでに地域的な分業化が進んでいたとされる。 伊達地方では、蚕種の製造者は「蚕種屋」と書いてタネヤと呼ばれた。蚕種は、厚手の和紙の台紙に卵粒を貼り付けた状態で取引され、タネヤが全国各地にあった蚕場と称する販売先に出向き、蚕の飼育法を伝授しながら行商した。また、この地方の祭礼市や六斎市では、各地から生糸商人が集まって取引きが行われ、買い集められた生糸は主に「登せ糸」として京都に送られ、西陣織物の原料となった。また、伊達は養蚕技術の研究でも先進地であり、多くの養蚕家を輩出したが、なかでも梁川村の中村善右衛門は、天保年間(1830~1844)に飼育の目安や適温を目盛に記した養蚕専用の寒暖計「蚕当計」を発明するとともに、蚕室内を温めて蚕の成長を早める「温暖育」を確立させ、蚕の飼育期間と繭質を飛躍的に改善し、日本の養蚕業の発展に貢献した。その後、幕末の開港後は、伊達の蚕種と生糸の多くが横浜に運ばれて海外に輸出され、慶応2年(1866)には、輸出向けに生糸の糸目を均質化した「掛田折り返し糸」が掛田村(現伊達市霊山町)で考案され、さらに販路を拡大した。こうした蚕関連業の活況は大正期まで継続し、生糸の需要の増加に伴って国内では器械製糸が急速に普及していく中で、伊達では手仕事ならではの糸質にこだわり、座繰製糸による生産を遅くまで維持した。しかし、昭和期に入り、組合による生産体制に移行するものの、安価な外国産の絹織物や生糸の輸入、繭価格の低迷などで昭和50年代には急速に衰退した。 本収集は、伊達郡に属した伊達、保原、梁川、霊山、月舘の旧五町が収集していた蚕関連の用具を平成18年の合併後、伊達市が一つの資料群として統合し、分類・整理を進めてきたもので、伊達市保原歴史文化資料館と泉原養蚕用具整理室に保管されている。収集の内容は、蚕種製造、養蚕、製糸の用具を主軸とし、製織の用具、真綿の製造用具、繭見本、養蚕信仰の用具などを加えて構成されており、近世末期から昭和前期までの時代に使用されたものである。 蚕種製造の用具は、種繭の選別に用いた見本繭や撰繭器、種の製造に用いた蚕卵台紙や蚕種紙、蛾定木、種枠、母蛾検査用具、蚕種の保存に用いた種紙掛けや蚕種箱、蚕種寒水浴桶、卵の孵化に用いた催青箱などがある。蚕種の製造は、種繭から羽化し、交尾を終えた雌の蛾を台紙上にのせて産卵させる方法を基本とするが、蛾定木と呼ばれる木枠などで囲った台紙に多数の母蛾を入れて混合産卵させる近世以来の「平付」、明治以降に蚕の微粒子病対策として普及し、台紙を枠取りし、母蛾を各枠内に一頭づつ入れて産卵させる「框製」、大正末期から始まり、糊付きの台紙に母蛾をのせ、産卵後に洗い流して卵の粒をとる「バラ種」があり、時代ごとに各種の製造用具が収集されている。また、明治期には、蚕の異品種を交配する一代交雑種の研究が進むが、伊達でも大正初期にその製造に着手しており、専用の蚕卵台紙や雌雄鑑別器などがある。 養蚕用具は、母屋を蚕室に設備する蚕棚をはじめ、毛蚕を蚕種紙から蚕座に移すハボウキや蚕座に敷いたナデコシなどの掃立て用具、蚕座となる方形の蚕箔や円形のワラダ、桑の葉を蚕に与えるのに用いた桑篩や給桑笊などの飼育用具、蚕の運搬に用いたオボケやカルトン、繭作りの場となる藁製のマブシやその台座となるエビラなどの上蔟用具、繭をマブシから取り外すマユカキなどの収繭用具があり、蚕を育て繭を作るまでに使われた一連の用具が揃っている。また、餌となる桑の栽培や摘み取りに使われた刃物類や籠類、蚕室の温度管理に用いた暖房器具や寒暖計などもあり、前記の「蚕当計」もその使用法を記した『蚕当計秘訣』とともに含まれる。 製糸用具は、糸取り鍋や石竈(かまど)などの煮繭用具、生糸の巻き取りに用いた丑首や胴繰器、奥州座繰器や上州座繰器と呼ばれる各種の座繰器、足踏式製糸器、小枠などの繰糸用具、揚返しに用いた糸返し台、再繰に用いた タタリや綛車、撚掛器などの撚糸用具、生糸の太さである繊度の検査に用いた検尺器や検位衝などの計測用具がある。 このほかに、看板や商標などの販売関係の用具をはじめ、家々が収穫した繭から衣類を織るのに使用した織機のハタシや杼、筬などの製織の用具、蚕種製造の副産物である出殻繭などを原材料とした真綿の製造用具、旧梁川町にあった蚕業試験場や蚕業講習所などに標本や参考品として保管されていた繭見本などがあり、養蚕農家が養蚕の成功を願って家内に祀っていた蚕神の土人形や蚕室に貼っていた御札などの養蚕信仰の用具も併せて収集されている。 (解説は指定当時のものです)