国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
重要有形民俗文化財
主情報
名称
:
江の川流域の漁撈用具 附漁場関係資料
ふりがな
:
ごうのかわりゅういきのぎょろうようぐ つけたりぎょばかんけいしりょう
江の川地域の漁労用具
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員数
:
1,226点,附26点
種別
:
生産、生業に用いられるもの
年代
:
その他参考となるべき事項
:
内訳:漁撈用具1,226点,附漁場関係資料26点
指定番号
:
00208
指定年月日
:
1999.12.21(平成11.12.21)
追加年月日
:
指定基準1
:
(二)生産、生業に用いられるもの 例えば、農具、漁猟具、工匠用具、紡織用具、作業場等
指定基準2
:
(三)地域的特色を示すもの
指定基準3
:
所在都道府県
:
広島県
所在地
:
三次市小田幸町122
保管施設の名称
:
広島県立歴史民俗資料館
所有者名
:
広島県
管理団体・管理責任者名
:
江の川地域の漁労用具
解説文:
詳細解説
この資料は、江の川の全流域で使われた川漁用具を収集したものである。モジを中心とした陥穽漁法、ヤスを中心とした突漁法、竿釣りとツケバリを中心とした釣漁法、タテアミと投網を中心とした網漁法、鵜飼漁などに関する用具が網羅的に収集されている。
関連情報
(情報の有無)
附
なし
添付ファイル
なし
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江の川地域の漁労用具
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江の川地域の漁労用具
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解説文
この資料は、江の川の全流域で使われた川漁用具を収集したものである。モジを中心とした陥穽漁法、ヤスを中心とした突漁法、竿釣りとツケバリを中心とした釣漁法、タテアミと投網を中心とした網漁法、鵜飼漁などに関する用具が網羅的に収集されている。
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詳細解説
江の川は、広島県旧芸北町阿佐山を水源とし、島根県江津市で日本海に注ぐ、総延長約194㎞の中国地方最大の河川で、「中国太郎」の別名をもつ。 広島県側は、江の川の上・中流域にあたり、上流域には可愛川・馬洗川・西城川・神之瀬川の主要4支流があって三次盆地で合流する。中・下流域の江の川は、強い侵食のため峡谷状の地形を呈し、出羽川・濁川・八戸川などの中小支流を合流して、大きく屈曲しながら石見高原を西流する。特に、三次市から島根県邑智町粕淵の間は、江の川が中国山地を横断し「江の川関門」と呼ぶ日本有数の大先行谷を形成し、下流部に平野をもたないまま日本海に注いでいる。 流域の標高1,000㍍前後の平坦面では、たたら製鉄のための砂鉄採取や和牛の放牧が行われ、400~500㍍の地域は高原を形成し、古くから畑地や放牧地として利用されてきた。流域の約78%は森林が占め、農耕地は上流部の本支流沿いと下流部のわずかな谷底平野に分布し、流域の約17%を占めるにすぎない。 また、集落はそのほとんどが河口部の小沖積地と上流部の沖積地、および谷底平野に位置し、中規模都市として広島県三次市・庄原市、島根県江津市がある。 本資料は、こうした江の川の全流域で使用された川漁用具を収集・整理したもので、広島県立歴史民俗資料館が、昭和54年の開設以来、漁撈民俗調査を継続的に実施するなかで、地元の川漁師や研究者の組織する江の川水系漁撈文化研究会の全面的な協力を得て収集した、1800点余に及ぶ資料の中から精査し体系化したものである。なお、資料の収集範囲は、広島・島根両県下の29市町村に及んでいる。 江の川での漁は、大きく分けてモジを中心とした陥穽漁法、ヤスを中心とした突漁法、竿釣りとツケバリを中心とした釣漁法、タテアミと投網を中心とした網漁法、鵜飼漁などのその他の漁法に分けることができる。また、鮎・鯉・鰻・ギギュウを軸に、季節に合わせて他の魚種を組み合わせ、さまざまな漁法を用いるという複合的な形態を示している。 収集された資料は、農山漁村で兼業的に行った人びとの使用した漁撈用具と、専業的に川漁を行った川漁師の使用した漁撈用具とに分けることもできる。前者は、江の川全流域から収集されており、それぞれの流域の魚種や河川状況に即した工夫を見ることができる。これに対して後者は、中・下流域に見られ、商品価値の高い鮎・鰻・鯉などを対象とする用具に加え、ギギュウ・ハエなどを加工して付加価値を付けるなどの用具が含まれる。しかし、具体的な用具において両者に明確な違いがあるわけでなく、それぞれが相互に影響しあいながら、使用者の創意工夫を加えることによって製作されたものである。 資料は、網漁用具、釣漁用具、突釣漁用具、陥穽漁用具、鵜飼・鵜縄漁用具、舟および関係用具、運搬・保存用具、加工・販売用具、漁具製作・修理用具、附の漁場関連用具に分類されている。また個々の用具の整理に当たっては、原則として、生業として行われる比率の高いものから順に配列するとともに、漁法の単純なものから複雑なものへ魚種ごとにまとめ、さらに用具の構造の単純なものから複雑なものへと整理・配列されている。 このうち例えば、網漁用具は、鮎刺網漁用具、刺網漁用具、すくい網漁用具、投網漁用具、建網・袋網漁用具に分類される。鮎刺網漁は日中に行われるヒルタテと夜間に行われるヨタテがあり、専業的に行われる漁はほとんどヨタテ漁である。タテアミは細長い帯状をした簡単な作りのものが多く、照明用の灯火は昭和初期以降しだいにカーバイトランプが用いられるようになった。刺網漁用具は鮎以外の魚種を対象とするものである。すくい網漁用具にはテサキアミ・タイマチアミ・ニゴリカキなどがある。このうち、ニゴリカキは円形の網枠に柄を付けたものと、二本の棒を扇形に組んだものの二形態があり、今日では大半が遊漁に用いられる。投網は対象とする魚種によって区別され、鮎用のチュウメ、鯉用のコイアミ、ハエ・小型の鮎用のメセキアミ、鮭・鱒用のサケアミ・マスアミがある。建網ではオオヒキアミ・ヨセアミ・セリアミがあるが、基本的には同じもので地域による呼称の違いによる。袋網にはサケアミ・スズキアミと雑魚用のジゴクアミ・フクロアミがある。 この資料は、江の川流域全体の歴史的な変遷や文化的な特色を背景として収集されたもので、江の川流域の漁撈文化を理解するうえで貴重であるばかりでなく、同一河川の全域を対象とした収集として全国的にも貴重な資料である。