国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
重要有形民俗文化財
主情報
名称
:
上州の小正月ツクリモノ
ふりがな
:
じょうしゅうのこしょうがつつくりもの
上州の小正月ツクリモノ
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員数
:
737点
種別
:
年中行事に用いられるもの
年代
:
その他参考となるべき事項
:
内訳:神体・偶像類70点 祈願品類143点 削り掛け類309点 呪具類194点 削り掛け製作関係21点
指定番号
:
00196
指定年月日
:
1994.12.13(平成6.12.13)
追加年月日
:
指定基準1
:
(十)年中行事に用いられるもの 例えば、正月用具、節供用具、盆用具等
指定基準2
:
指定基準3
:
所在都道府県
:
群馬県
所在地
:
保管施設の名称
:
所有者名
:
群馬県
管理団体・管理責任者名
:
上州の小正月ツクリモノ
解説文:
詳細解説
この資料は、上州(群馬県)において、古い正月の名残とされる小正月の各種の行事で用いられてきたツクリモノと呼ばれる用具類をとりまとめたものである。
これらのツクリモノは、村の道祖神をはじめとして、家の中の神棚や仏壇、台所(カマ神)、蚕室、玄関などに飾られるもので、わずか数日のうちに処分されるのが通例である。
群馬県立歴史博物館では、昭和32年の旧県立博物館開館以来収集してきており、一部は群馬県指定有形民俗文化財として保護されてもきた。
本収集品は、この県指定を含む737点で、神体・偶像類、祈願品類、削り掛け類、呪具類、削り掛け製作用具、の5項目に分類される。
関連情報
(情報の有無)
附
なし
添付ファイル
なし
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上州の小正月ツクリモノ
上州の小正月ツクリモノ
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上州の小正月ツクリモノ
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上州の小正月ツクリモノ
解説文
この資料は、上州(群馬県)において、古い正月の名残とされる小正月の各種の行事で用いられてきたツクリモノと呼ばれる用具類をとりまとめたものである。 これらのツクリモノは、村の道祖神をはじめとして、家の中の神棚や仏壇、台所(カマ神)、蚕室、玄関などに飾られるもので、わずか数日のうちに処分されるのが通例である。 群馬県立歴史博物館では、昭和32年の旧県立博物館開館以来収集してきており、一部は群馬県指定有形民俗文化財として保護されてもきた。 本収集品は、この県指定を含む737点で、神体・偶像類、祈願品類、削り掛け類、呪具類、削り掛け製作用具、の5項目に分類される。
詳細解説▶
詳細解説
1月14、15日を中心とする小正月は、元旦中心の大正月に対し、民間の正月、または花正月などともよばれてきた。この小正月は、新しい暦法が入る以前の古い正月の名残といわれ、1月の満月の夜を1年の境にした時代の正月と考えられている。従って、かつて民間では小正月のほうを重視したであろうことは、農耕儀礼に関係する種々の行事や呪法、禁忌などがこの期間に集中していることからも想定される。 上州(群馬県)では、大正月の門松に対して、小正月には削り花(削り掛け)を飾る。小正月には、農作物の豊凶の占い、豊かな実りを予祝する行事、果樹の豊作や子孫繁盛の祈願、病気や災厄を除けるといわれるドンドン焼きなど数多くの行事があり、この資料はそれらの行事に伴う用具類である。上州では、これらの製作物を総じてツクリモノと呼んでいる。 若木を迎える「山入り」は、正月2日から12日の間に行われるが、ツクリモノを作る日は、11日から14日に集中する。また、小正月には、「成木責め」「鳥追い」「悪魔払い」「オミタマサマ」「水祝い(嫁たたき)」などの行事が付随し、1年の災厄をはらう火祭りの「ドンドン焼き」も各地に見られる。 これらのツクリモノは、村の道祖神をはじめとして、家の中の神棚や仏壇、台所(カマ神)、蚕室、玄関などに飾られるもので、なかには門、便所、堆肥場、畑などに飾られるものもある。これらの多くは、わずか数日のうちに処分されるのが通例で、例外として残されるものも、1年後の小正月にはドンドン焼きで燃されるか、二十日正月に処分される。 群馬県立博物館では、昭和32年の旧県立博物館開館以来、これらのツクリモノの収集を開始し、特に昭和47、48年および61年から平成2年まで5年間の前後2度にわたり、本格的なツクリモノの調査・収集を行い、その結果を数冊の報告書にまとめて刊行してきた。さらに、記録映画の制作や企画展の開催なども行って内外に周知してきた。その結果、収集された資料は、2,500点を数え、そのなかから「削り掛け」を中心に200件463点を群馬県指定有形民俗文化財として保護に努めてきた。 本収集品は、この県指定を含む737点で、内容により、神体・偶像類、祈願品類、削り掛け類、呪具類、削り掛け製作用具、の五項目に分類されている。 例えば、神体・偶像類には、ドウソジンの木像がある。村によってはドウロクジンとよぶ所もある。ヌルデの木の皮を削ったところに男神と女神それぞれの顔を描いたものが多い。正月14日に作り、床の間や神棚に飾ったその夜ドンドン焼きで燃されるが、石像の道祖神に納める所もある。木像を作っているのは、ほとんど県西北部の吾妻郡に集中している。一地域に集中しているにもかかわらず、そのなかで燃え差しを石像に納める所、戸棚に1年間祀っておく所、1月20日に岩穴に納める所があるなど、習俗のばらつきが見られる。セッチンビナは、いわゆる便所神である。利根郡だけに行われる習俗で、男女一組の紙人形を14日の夜作り、翌日の朝便所の壁に貼りつける。セッチンビナを作るのは女性の役目で、これを祀ると腰から下の病気を患うことがなく、また産神としてお産が軽くなると信ぜられた。赤ん坊のセッチン参り、厄年の人のセッチン参りやンバ供えなど、便所神をめぐる種々の習俗の報告もある。そのほか神体類として、サクオトコ・サクオンナという男女二体の木像がある。サクダイショウ(作大将)とよぶ地域もある。これらは、道祖神に似て男女一組を作り、カマ神に供えられるが、最後はドンドン焼きの火で燃してしまう。カカシガミは一体で、木を削ってもとは顔を描いたが、近年は「案山子神」の文字を書いたものが多く、翌年の小正月まで神棚に祀られたり、最後はドンドン焼きで燃されたり、正月がすむと畑際に持って行き、石の上に置いたりした。 また祈願品類は、その年の農作物の豊かな実りを祈る、いわゆる予祝行事と関連して、まず農家の大切な農道具の雛型を作る。県西部の西毛地方では、同じ農具の雛型を2個ずつ作り、ヒモで結んで正月飾りの竿にかけて供える例が多いが、吾妻郡では藁束に農具類をさし込んでカマ神に供える。種類は家によって多少の差があるが、エンガ(鋤)・テンガ(鍬)・開墾鍬・鎌・鉈・鋸・肥桶・臼・杵・槌・小槌・灰掻き・火吹き竹・熊手・クリル棒・穂打ち棒・藁打ち杵・梯子・背負い子などで、カマ神様の棚に1年間供える。作男作女や後出の福俵と同様にカマ神にお供えするのは、田植え時の苗束を供える例にも見られるように、家の神としてのカマ神が作神としても尊崇されているからである。 この資料は、系統的かつ体系的に収集し、整理したもので、我が国のかつての農山村における小正月の様子や信仰の有り様を知る上で重要である。