国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
重要無形民俗文化財
主情報
名称
:
粟生のおも講と堂徒式
ふりがな
:
あおのおもこうとどうとしき
粟生のおも講と堂徒式
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
社会生活(民俗知識)
その他参考となるべき事項
:
公開日:毎年旧暦1月8日(※指定当時・お出掛けの際は該当する市町村教育委員会などへご確認ください)
指定証書番号
:
408
指定年月日
:
2005.02.21(平成17.02.21)
追加年月日
:
指定基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
指定基準2
:
指定基準3
:
所在都道府県、地域
:
和歌山県
所在地
:
保護団体名
:
粟生のおも講と堂徒式保存会
粟生のおも講と堂徒式
解説文:
詳細解説
この行事は、旧有田郡清水町粟生で旧暦1月8日に行われる行事である。おも講は粟生地区の12軒の家で構成され地区内にある吉祥寺の住職とともに講員が般若心経を唱え勤行する行事で、堂徒式は数え3歳児のムラ入りをおも講員が承認する儀礼である。
誕生以後の適当な時期にムラの成員として認めてもらうために行われるムラ入りの儀礼は各地に見られる。この行事もそのような儀礼の1つであり、地域的特色の豊かな行事として重要である。(※解説は指定当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
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粟生のおも講と堂徒式
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粟生のおも講と堂徒式
解説文
この行事は、旧有田郡清水町粟生で旧暦1月8日に行われる行事である。おも講は粟生地区の12軒の家で構成され地区内にある吉祥寺の住職とともに講員が般若心経を唱え勤行する行事で、堂徒式は数え3歳児のムラ入りをおも講員が承認する儀礼である。 誕生以後の適当な時期にムラの成員として認めてもらうために行われるムラ入りの儀礼は各地に見られる。この行事もそのような儀礼の1つであり、地域的特色の豊かな行事として重要である。(※解説は指定当時のものをもとにしています)
詳細解説▶
詳細解説
粟生のおも講と堂徒式は、旧有田郡清水町粟生で旧暦1月8日に行われる行事である。おも講は粟生地区の12軒の家で構成され地区内にある吉祥寺の住職とともに講員が般若心経を唱え勤行する行事で、堂徒式は数え3歳児のムラ入りをおも講員が承認する儀礼である。 清水町は和歌山県の中東部、高野山の裏街道に当たる南西麓にある。粟生は有田川沿いにあり、町の西端に位置して金屋町と境を接している。 この行事は、午前中に行われるおも講と午後に行われる堂徒式からなる。おも講は12軒の家によって構成されている。この12軒の家は固定した家で、毎年2軒1組で当番を務め、そのうちの1軒がおも講の宿となる。おも講についてはいつ頃から始まったかは不明であるが、粟生地区の氏神である岩倉神社の天文10(1541)年の記録によれば氏家として13軒の家が記されており、この時期にはすでにおも講が行われていたのではないかとされている。その後、明和5(1768)年の薬師堂修理棟札には東福寺堂座として12軒の家が記されており、この頃には、おも講の講員は12軒になっていたのではないかといわれている。 堂徒式の行われる薬師堂は、現在吉祥寺の管理する堂となっているが、古くは光明山医王院薬師堂と称したものである。吉祥寺は元禄4年に浄土宗に改宗したもので、それ以前は真言宗の寺であった。この薬師堂で数え年3歳の子どもとおも講員が三三九度の盃を交わしてムラ入りの儀礼を行い、同時に薬師を始め薬師堂に祀られる諸尊に子どもの息災成長を祈願する。堂徒式の参加者は、おも講の講員と吉祥寺住職、粟生の3歳になる男女児とその親である。堂徒式の準備はすべて3歳児の親たちが行い、3歳児の中で一番早く生まれた子の家が宿になり、ここに3歳児の親たちが集まって準備を行う。なお、出生順が2番目、3番目の子の親が雄蝶(おちょう)、雌蝶(めちょう)を務める。 行事前の日曜日には3歳児の親たちが宿に集まり堂徒式で使う膳や牛玉法印、牛玉杖、挟み餅、木刀、梅の花などの呪符や飾り物などを作る。膳は杉の丸太を柾目に割り、30㎝角ぐらいに粗削りにしたものである。牛玉宝印は、和紙に家の宝、薬師堂と書いたもの。牛玉杖は五倍子(ふし)の木で作る。挟み餅は牛玉紙で丸餅を包み牛玉杖の先を割って挟んだもの。木刀は五倍子の木を2つ割りにして刀の形に削ったもの。梅の花は梅の枝の先に白い造花を付けたものである。これらを3歳児の親たちが手分けして作る。 旧暦1月8日午前中、宿に講員と吉祥寺住職が集まる。宿の床の間には中央に薬師如来、右に観世音菩薩、左に大日如来と書かれた掛け軸が掛けられ、その前に講員全員が着座すると住職が床の間の掛け軸に向かい般若心経を唱えて勤行し、講員も一緒に般若心経を唱える。これが済むと神酒がまわされ、床の間に供えられていた飯が一同に配られる。この後、用意されていた膳が並べられ宴が始まる。 3歳児たちは親に連れられて薬師堂にお参りする。午後おも講員たちが薬師堂に移り参加者全員がそろうと吉祥寺住職が勤行し、三方に供えられた呪符、3歳児の名帳が加持され雌蝶によって3歳児の名前が読み上げられる。この後住職が香水を3歳児の頭上に注ぐ。 これが済むとおも講員と住職が薬師堂外陣に2列に向き合って座る。この席はおも講の家によって決まっており、決められた座に着席する。雄蝶、雌蝶は羽織袴で正装し、雄蝶が挨拶した後右手に長柄の湯桶、左手に盃を載せた三方を持って講員の前に進み、左膝を立てて左右千鳥に注いでいく。杉の粗削りの膳には蒸した葉付き大根、白煮大豆、酒粕、串柿が付けられる。堂徒式終了後、持ち帰って家内で食べると無病息災になるといわれている。 すべての行事が終了すると一般の参拝者にも護符や串柿などが配られ、薬師堂の柱に飾り付けられていた木の刀や梅の花も持ち帰ることができる。刀は男の子がほしい人が、梅の花は女の子がほしい人が持ち帰るとその希望どおり授かると信じられている。最後に供えられていた餅が投げ餅にされてすべての行事が終了する。 堂徒式に要する費用はすべて三歳児の親が均等に負担することになっている。 誕生以後の適当な時期にムラの成員として認めてもらうために行われるムラ入りの儀礼が各地に見られる。この行事もそのような儀礼の1つで、ムラを代表するおもだち衆で構成されるおも講が、3歳児の堂徒入りを承認するものである。地区の薬師堂で名前が記された名帳の加持を受け、名前の披露と洒水を受ける儀式を終えた3歳児の堂徒入りを三三九度の盃事を行って承認する地域的特色のある重要な行事である。 (※解説は指定当時のものをもとにしています)