国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
重要無形民俗文化財
主情報
名称
:
津軽海峡及び周辺地域における和船製作技術
ふりがな
:
つがるかいきょうおよびしゅうへんちいきにおけるわせんせいさくぎじゅつ
津軽海峡及び周辺地域における和船製作技術
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種別1
:
民俗技術
種別2
:
生産・生業
その他参考となるべき事項
:
指定証書番号
:
411
指定年月日
:
2006.03.15(平成18.03.15)
追加年月日
:
指定基準1
:
(二)技術の変遷の過程を示すもの
指定基準2
:
(三)地域的特色を示すもの
指定基準3
:
所在都道府県、地域
:
青森県
所在地
:
津軽海峡周辺地域
保護団体名
:
津軽海峡及び周辺地域における和船製作技術保存会
津軽海峡及び周辺地域における和船製作技術
解説文:
詳細解説
津軽海峡及び周辺地域における和船製作技術は、津軽海峡を中心に秋田県北部、岩手県北部や北海道にかけての地域で使用されたムダマハギやシマイハギと呼ばれる木造漁船を中心とした和船製作にかかる技術である。
ムダマハギとは船底にカツラやブナ、ヒバ、スギなどの刳り抜き材を使用し、平底である船底にタナイタをつけアバラと呼ぶ補強材をつけた独特の構造をもつ船で、その造船技術は丸木船から構造船に至る過渡的段階にあたりオモキ造りに連なるものと位置づけられている。
ムダマの製作は、掘る、まく、ムダマウチなどといい、一本の丸木から左右2枚のムダマを背中合わせに取り、その内側をチョウナなどを使って掘っていく。ムダマの接合部には落とし釘を打ち込むなどして仕上げる。そしてこれに下アバラの取り付け、トモヘのトダテの取り付け、オモテヘのミヨシの取り付けをし、最後にタナイタ、カンヌキ、トコなどを取り付け、トモやミヨシの形を整える。
(※解説は指定当時のものです)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
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津軽海峡及び周辺地域における和船製作技術
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津軽海峡及び周辺地域における和船製作技術
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解説文
津軽海峡及び周辺地域における和船製作技術は、津軽海峡を中心に秋田県北部、岩手県北部や北海道にかけての地域で使用されたムダマハギやシマイハギと呼ばれる木造漁船を中心とした和船製作にかかる技術である。 ムダマハギとは船底にカツラやブナ、ヒバ、スギなどの刳り抜き材を使用し、平底である船底にタナイタをつけアバラと呼ぶ補強材をつけた独特の構造をもつ船で、その造船技術は丸木船から構造船に至る過渡的段階にあたりオモキ造りに連なるものと位置づけられている。 ムダマの製作は、掘る、まく、ムダマウチなどといい、一本の丸木から左右2枚のムダマを背中合わせに取り、その内側をチョウナなどを使って掘っていく。ムダマの接合部には落とし釘を打ち込むなどして仕上げる。そしてこれに下アバラの取り付け、トモヘのトダテの取り付け、オモテヘのミヨシの取り付けをし、最後にタナイタ、カンヌキ、トコなどを取り付け、トモやミヨシの形を整える。 (※解説は指定当時のものです)
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詳細解説
津軽海峡及び周辺地域における和船製作技術は、津軽海峡を中心に秋田県北部、岩手県北部や北海道にかけての地域で使用されたムダマハギやシマイハギと呼ばれる木造漁船を中心とした和船製作にかかる技術である。 この地域には数は少なくなったものの、現在も各地でムダマハギ型漁船やシマイハギ型漁船などの木造漁船が使用されている。 ムダマハギやシマイハギと呼ばれる漁船は、主にアワビやウニ、タコ漁、昆布やワカメなど海藻類の採取、カレイなどを対象とする刺し網や釣り漁など、この地域で磯廻り漁と呼ばれる漁撈に用いられてきた。たとえば下北半島東部地域では昆布漁にはシマイハギ、磯廻り漁にはムダマハギが使われている。 ムダマハギとは船底にカツラやブナ、ヒバ、スギなどの刳り抜き材を使用し、平底である船底にタナイタをつけアバラと呼ぶ補強材をつけた独特の構造をもつ船で、その造船技術は丸木船から構造船に至る過渡的段階にあたりオモキ造りに連なるものと位置づけられている。 これらムダマハギ、シマイハギと呼ばれる木造漁船の製作は、この地域で船造りに携わってきた船大工たちによって担われてきたものであり、当該地域に特徴的に見られる和船製作の技術である。 この地域のムダマハギ型漁船に共通して見られるのは、ムダマ、タナイタ、アバラを基本的構造とすること、ムダマの材はカツラ材を最良とするが数が少なく入手が難しいため、重く腐りやすいという欠点がいわれるものの、入手しやすいブナ材が広く使用され、ほかにクリ、トチ、スギ材なども用いられている。 ムダマハギは船底を構成するムダマと呼ばれる刳り材に由来する名称と考えられている。古くは一木で造られていたものとされているが現在は左右2枚のムダマを中心線で接合して造られている。また、2枚のムダマの中心に補強材を入れ3枚で船底を構成する場合があり、この補強材をナカチョウと呼んでいる。さらに船底の両端の角の立ち上がり部分に補助材を接合するコスギ、ツケギと呼ばれる方式もとられる。 船造りは船大工の作業場で行われるが、以前はこの作業を注文主の納屋や海岸に作業場を仮設して行った。その当時はムダマ材は漁師自身が山取りして里に下ろした後、船大工が仕上げを行った。 一般的なムダマハギの製作工程は次のようなものである。まず材からムダマを造る作業を行うが、ムダマを製作することを掘る、まく、ムダマウチなどといい、1本の丸木から左右2枚のムダマを背中合わせに取り、その内側をチョウナなどを使って掘っていく作業を行う。2枚のムダマの接合部分には落とし釘を打ち込むなどして仕上げる。ムダマが完成するとこれに下アバラの取り付け、トモヘのトダテの取り付け、オモテヘのミヨシの取り付けをし、これらの作業が済むと船の無事完成を祈るダイノセと呼ばれる儀礼が行われる。この後タナイタ、カンヌキ、トコを取り付けてトモとミヨシの形を整える作業を行う。その後さらに上アバラ、コベリ、化粧板の取り付けを行いイタゴを敷くと船が完成する。船が完成するとダイオロシと呼ぶ祝いを行ってムダマハギの製作が終了する。 こうして造られたムダマハギは通常1人乗りで、主に昆布やアワビ、ウニ、ワカメなどを採る磯廻り漁に用いられた。推進具としてはクルマガイを用い、船上での作業はオモテの右舷で行うため右舷をマエブネ、左舷をウシロブネと称した。風の弱いときにはイカリを下ろさず作業をするが、風のあるときには左舷に取り付けたツナグリからイカリヅナを下ろし、ツナグリに一定間隔で掘ってある溝を移動させて船を移動させた。この船は小型で軽量なため陸に引き上げるのにマキドウやカグラサンを使わなくても1人でコロの上をすべらせて引き上げることができ、オモテノカンヌキを持って一人で引っ張って陸に上げていたという。 津軽海峡周辺に見られるムダマハギ型漁船は、秋田県北部・青森県西部地方ではホッツ、津軽半島西北部地方ではイソブネ、下北半島東部地方ではイソブネのほかカッコと呼ばれるなど名称にも地域的な特徴が見られる。 これら津軽海峡および周辺地域で使用されてきた木造和船も樹脂製の小型船の登場で徐々に姿を消しつつある。 この技術は、丸木舟から構造船にいたる過渡的な位置にある準構造船を製作する技術であり、当該地域で使用されてきた特色ある和船を製作する技術として注目されるとともに、日本の造船技術の変遷を知るうえでも重要なものである。 (※解説は指定当時のものです)