国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
重要無形民俗文化財
主情報
名称
:
東光寺の鬼会
ふりがな
:
とうこうじのおにえ
東光寺の鬼会
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
年中行事
その他参考となるべき事項
:
公開日:毎年1月8日(※指定当時・お出掛けの際は該当する市町村教育委員会などへご確認ください)
指定証書番号
:
418
指定年月日
:
2006.03.15(平成18.03.15)
追加年月日
:
指定基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
指定基準2
:
指定基準3
:
所在都道府県、地域
:
兵庫県
所在地
:
加西市上万願寺392
保護団体名
:
東光寺追儺式及び田遊び保存会
東光寺の鬼会
解説文:
詳細解説
東光寺の鬼会は、兵庫県加西市上万願寺町の東光寺で行われる年頭の行事で、厄年の男性が扮する赤鬼と青鬼の二匹の鬼が登場し、松明や大きな鉾を振り回しながら堂内を巡って、一年の災厄を払うものである。鬼が登場する前には、田起こしや種蒔きなど稲作の作業過程を模擬的に演じる田遊びが行われ、一年の豊作が祈願される。(※解説は指定当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
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東光寺の鬼会
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東光寺の鬼会
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解説文
東光寺の鬼会は、兵庫県加西市上万願寺町の東光寺で行われる年頭の行事で、厄年の男性が扮する赤鬼と青鬼の二匹の鬼が登場し、松明や大きな鉾を振り回しながら堂内を巡って、一年の災厄を払うものである。鬼が登場する前には、田起こしや種蒔きなど稲作の作業過程を模擬的に演じる田遊びが行われ、一年の豊作が祈願される。(※解説は指定当時のものをもとにしています)
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詳細解説
東光寺の鬼会は、兵庫県加西市上万願寺町の東光寺で行われる年頭の行事で、厄年の男性が扮する赤鬼と青鬼の2匹の鬼が登場し、松明や大きな鉾を振り回しながら堂内を巡って、1年の災厄を払うものである。鬼が登場する前には、田起こしや種蒔きなど稲作の作業過程を模擬的に演じる田遊びが行われ、1年の豊作が祈願される。 加西市は、兵庫県の南部、播州平野のほぼ中央に位置する。東光寺は、市域北部の上万願寺町にあり、天台宗比叡山延暦寺の末寺である。かつては有明山満願寺と称していたが、天文7年(1538)に焼失し、同9年に再興し、東光寺と改称している。現在は無住であり、隣町にある同宗派の楊柳寺の住職が兼務している。薬師如来を本尊とすることから、地元では薬師堂と呼ばれ親しまれている。 鬼会は、この東光寺で年頭に行われる修正会の行事として伝承されてきたもので、毎年1月8日に行われる。当地に残る文書資料から、室町時代の末期にはすでに鬼会が行われていたであろうことが知られており、また、田遊びについては、享保2年(1717)に再興されたものといわれている。 行事の準備や運営は、上万願寺と下万願寺の2地区の人たちによって行われる。両地区から3人ずつ選ばれる宮委員と5人ずつ選ばれる世話役が行事運営の中心となる。前年の12月には、地区内の山々から松材を採取し、松明作りに取りかかる。年が明けて1月6日には、東光寺の庫裡や境内で供物にする鏡餅と本堂の内陣・外陣に飾る鬼の花の製作を行う。 鏡餅は、本尊に供える12個の小さな餅のほかに、直径1㍍、重さ50㎏ほどもある平たい大鏡餅を作る。鬼の花は、ハゼの木の先端を削って花状にしたもので、12個作られる。 行事当日の8日は、山から椎の木を2本切り出してきて、枝に鬼の花をつけて本堂内陣の左右の柱の前に飾る。大鏡餅は椎の木で十文字に裏表から挟んで両端を縄で縛り、本堂内陣の左右両側の格子に取り付ける。行事に使用される鬼面や鉾などの道具も内陣に供えられる。その後、夕方から東光寺の庫裡に行事の諸役などが集まって直会が行われ、一方、本堂では、楊柳寺の住職が大般若経の理趣品を読誦する。それが終わると、面などの道具を納めた面箱が本堂から庫裡に運ばれる。面箱が到着すると直会は終了となり、諸役は支度に取りかかる。 鬼役は、地区に住む厄年の男性が務める。上万願寺と下万願寺の両地区から青鬼、赤鬼の役が1人ずつ選ばれる。青鬼は雄鬼、赤鬼は雌鬼であり、それぞれに鱗模様のある暗緑色、茶褐色の上衣と袴を着け、素足に草履を履く。衣裳の上からは、白木綿に撚りをかけた鬼綱を胸に2筋、背中に1筋になるよう縛る。青鬼は1本角の鬼面をつけて長さ2㍍ほどの鉾を持ち、赤鬼は2本角の鬼面をつけ、腰に槌を差す。 準備が整うと、諸役一同は松明を持った先導役に付き添われて、本堂への渡りと称して、面箱を頭上に担いだ鬼役を先頭に、庫裡から薬師堂へ向かう。薬師堂の外陣では、諸役の到着まで、鬼の子と呼ばれる子どもたちや地区の男性たちが棒打ちを行う。これは2人1組で向かい合って樫の棒を両手で握り、それぞれの棒の両端を調子をつけて交互に打ち合うものである。 諸役は本堂に着くと、鬼部屋と呼ばれる本堂右奥の部屋に入り、室内の炉に火が入れられて松明に次々と火が点けられる。松明を持ったかがり火役たちが照明として外陣に立ち並び、堂内に見る見るうちに煙が立ち込め、田遊びが始まる。 田遊びは、まず福太郎、福次郎が木鍬を担いで、介添人を従えながら鬼部屋から登場する。そして、外陣を一周した後、内陣の前で田起こし、苗代作りの所作をし、次いで、住職が演じる田主から予祝の口上を受ける。福太郎と福次郎は、裃姿に面、烏帽子をつけ、地区内の還暦の男性が務める。介添人は、福太郎、福次郎を補佐する役目で、作務衣姿に手拭いを頭巾被りにし、行事に精通した年配者が務める。田主による予祝の口上が終わると、4人は米の入った半紙のおひねりを懐中から取り出し、種蒔きに見立てて参詣者に向かって投げる。種蒔きの後には、縄綯いの所作が行われ、最後に、苗取りの唱え言をいいながら、一行は再び外陣を一周して鬼部屋に引き上げる。 田遊びが終了すると、棒打ちがまた始まり、しばらくすると鬼が登場する。鬼は、赤鬼、青鬼の順で鬼部屋から出る。赤鬼は松明を振りかざし、青鬼は鉾を突き立てながら、東の出、西の出といって内陣の東西からそれぞれ6回ずつ計12回、外陣を回る。鬼の子たちは鬼の後ろについて棒で床を叩き、参詣者たちも「鬼こそ鬼よ」と声をかけて鬼をはやし立てる。 本件は年頭にあたって鬼が人びとの除災をするこの種の行事の典型例の一つで、我が国の民間信仰や年中行事の変遷を考える上で重要である。また兵庫県内では播磨から摂津にかけての地域に鬼の行事が数多く分布するが、田遊びの儀礼が結びついて伝承されている事例は少ない。さらに子どもたちが扮する鬼の子による棒打ちや鬼の花と呼ばれる作り物の奪い合いなど民俗的要素も豊富に伝えていて地域的特色も豊かである。 (※解説は指定当時のものをもとにしています)