国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
重要無形民俗文化財
主情報
名称
:
別府明礬温泉の湯の花製造技術
ふりがな
:
べっぷみょうばんおんせんのゆのはなせいぞうぎじゅつ
別府明礬温泉の湯の花製造技術
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種別1
:
民俗技術
種別2
:
生産・生業
その他参考となるべき事項
:
指定証書番号
:
419
指定年月日
:
2006.03.15(平成18.03.15)
追加年月日
:
指定基準1
:
(三)地域的特色を示すもの
指定基準2
:
指定基準3
:
所在都道府県、地域
:
大分県
所在地
:
別府市明礬
保護団体名
:
明礬温泉湯の花製造技術保存会
別府明礬温泉の湯の花製造技術
解説文:
詳細解説
別府明礬温泉の湯の花製造技術は、大分県別府市の明礬温泉で江戸時代より行われている湯の花製造の技術である。
この技術は、湯の花小屋という製造施設をつくり、その内部で噴気と青粘土を利用して湯の花の結晶を作り出す技術であり、製品である湯の花は薬として利用されたり、入浴剤として利用されてきた。
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
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別府明礬温泉の湯の花製造技術
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別府明礬温泉の湯の花製造技術
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解説文
別府明礬温泉の湯の花製造技術は、大分県別府市の明礬温泉で江戸時代より行われている湯の花製造の技術である。 この技術は、湯の花小屋という製造施設をつくり、その内部で噴気と青粘土を利用して湯の花の結晶を作り出す技術であり、製品である湯の花は薬として利用されたり、入浴剤として利用されてきた。
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詳細解説
別府明礬温泉の湯の花製造技術は、大分県別府市の明礬温泉で江戸時代より行われている湯の花製造の技術である。 この技術は、湯の花小屋という製造施設をつくり、その内部で噴気と青粘土を利用して湯の花の結晶を作り出す技術であり、製品である湯の花は薬として利用されたり、入浴剤として利用されてきた。 明礬温泉は、別府市の西部に位置し、別府市野田および別府市鶴見を合わせた地域の通称で、江戸時代にはここで湯の花に灰汁を加えて煮て精製した明礬も製造されていたことからこの名がある。明礬の製造は、寛文4年(1664)に渡辺五郎右衛門によって始められたといわれ、その製品は「豊後明礬」と呼ばれ、染色、止血、皮なめし、顔料などに広く利用され、全国一の生産量を誇った。湯の花も享保年間(1716~1736)には製造されていたといわれ、明治以降、安価な中国産に押されて明礬が製造されなくなると、湯の花の製造のみが続けられてきた。 湯の花の製造工程は、湯の花小屋づくりと小屋の内部で湯の花を結晶化させる作業に大きく分けられる。さらに湯の花小屋づくりは、小屋床の製作と屋根の製作に、湯の花を結晶化させる作業は、青粘土の敷きつめと噴気の調節と湯の花のかきとりに分けることができる。これらの作業に要する人数は特に決まっていないが、湯の花小屋づくりは数人で行う場合が多く、湯の花の結晶を作り出す作業は1人で行うこともある。 明礬温泉一帯は、地熱地帯で地下30㎝のところに温水脈があり、随所に温泉の蒸気である噴気が勢いよく噴き出している。小屋床は、まず、噴気が比較的強く出ている噴気孔を探して、その近辺一帯60㎡ほどをスコップや木槌を使って平らに固めて基礎とする。次に噴気孔から小屋床まで鉄管を延ばして噴気を取り入れる。この鉄管の途中には噴気が抜ける穴をつけておき、取り込む噴気の量を調節できるようにしておく。次に小屋床に縦横に溝を掘って噴気道をつけ、噴気がまんべんなく行き渡るようにする。噴気道の先には排出用の鉄管を設置し、ここでも噴気の排出量を調節できるようにする。さらに小屋床の表面に噴気が一定の強さで噴き出すように栗石と呼ばれる小石を敷き詰める。最後に小屋床一面に藁を敷きつめて、その上に土を敷いて木槌などで叩いて固める。 屋根は、まず、小屋床の周囲に柱台となる石を配置し、その上に柱を立て切妻屋根の形につくり、藁や茅で葺く。屋根の高さは高いところで4㍍ほどである。 こうして完成した湯の花小屋の内部は、小屋床から噴気が一定の強さでまんべんなく噴き出し、内部の温湿度も常時一定に保つことができるようになっており、また雨風を防ぐこともできることから、湯の花の結晶ができやすい環境になっている。 湯の花小屋が完成すると、明礬温泉周辺の山から採取したギチと呼ばれる青粘土を小屋床一面に20㎝ほどの厚さに敷き固める。すると、10日前後で硫酸塩の結晶、すなわち湯の花が青粘土の表面に発生する。最初に発生した湯の花は不純物が多く含まれていることから、かきとらずに木槌などで固める。さらに30日前後して再び湯の花が発生すると、不純物などが少ない白い部分だけを選んで左官用の鏝や木の棒などでかきとる。かきとった湯の花は通気性のよい叺に入れて保管する。不純物を含む赤や黄色の部分は再び固めたり、除去したりする。 湯の花が結晶化する過程をみると、まず噴気が藁と土の層を上昇する途中で冷えて水になる。それと同時に噴気に含まれていた硫化水素や亜硫酸ガスが酸化して硫酸となり、この水に溶けこむ。それが上昇して青粘土の層に入ると、青粘土に含まれているアルミニウムや鉄と化合して硫酸塩となり結晶として表面に現れる。これが明礬温泉で湯の花と呼ばれているものである。 こうして結晶化させた湯の花をかきとると、再び湯の花が発生するまで30日前後待つことになるが、その間も常に湯の花小屋内部の温湿度などを観察し、適宜噴気の強さを調節して温湿度を一定に保つ。小屋内部の温度は摂氏45度くらいが適温といわれているが、実際は経験によっている。 一度、青粘土を敷き固めると長い場合は1年間ほど湯の花を採取できるが、青粘土に含まれるアルミニウムなどの量によっては2か月ほどで湯の花を結晶化させることができなくなることもある。結晶化させることができなくなると、再びその上に青粘土を敷き固める。青粘土を数度敷き固めると表面に噴き出してくる噴気が弱くなり、噴気量の調節だけでは結晶化させることができなくなることから青粘土や土、藁、栗石をすべて剥いで、小屋床から再びつくりなおし、新たな青粘土を敷く。なお、湯の花小屋の屋根も3年もすれば傷みが激しくなるため葺きかえる。 今日、全国各地の温泉地でみられる湯の花は、ほとんどが温泉の沈殿物を採取するか、自然に化石化したものを削り取ったものであるが、この技術は、湯の花小屋という特殊な製造施設を建設し、その内部で自噴する噴気と青粘土を巧みに利用して結晶を作り出すという全国でも類を見ないものであり、わが国の温泉利用の一形態を知る上でも重要である。