国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
重要無形民俗文化財
主情報
名称
:
小木のたらい舟製作技術
ふりがな
:
おぎのたらいぶねせいさくぎじゅつ
小木のたらい舟製作技術
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種別1
:
民俗技術
種別2
:
生産・生業
その他参考となるべき事項
:
※たらい舟(製品)は、昭和49年11月19日に重要有形民俗文化財に指定された「南佐渡の漁撈用具」(1293点)の一部を構成している。
指定証書番号
:
420
指定年月日
:
2007.03.07(平成19.03.07)
追加年月日
:
指定基準1
:
(三)地域的特色を示すもの
指定基準2
:
指定基準3
:
所在都道府県、地域
:
新潟県
所在地
:
新潟県佐渡市小木
保護団体名
:
小木たらい舟製作技術保存会
小木のたらい舟製作技術
解説文:
詳細解説
小木のたらい舟製作技術は、佐渡市の小木半島とその周辺地域で使われてきた、たらい状の舟を製作する技術である。
たらい舟は、かつて全国に点々とみられ、近海での漁や海藻採取、湖沼でのジュンサイ採取などで使用されていたことが知られているが、今日実際に使用され、かつ漁師の注文に応じて製作する職人がいるのは小木半島とその周辺地域のみとなっている。
この技術は、水の浸入を防ぐため部材を密着させる木殺しのような造船技術や、杉の芯に近い面やアカタと呼ばれる面を水に接するように部材を配置するような桶樽の製作技術が随所に巧みに利用されている。
関連情報
(情報の有無)
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なし
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小木のたらい舟製作技術
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小木のたらい舟製作技術
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解説文
小木のたらい舟製作技術は、佐渡市の小木半島とその周辺地域で使われてきた、たらい状の舟を製作する技術である。 たらい舟は、かつて全国に点々とみられ、近海での漁や海藻採取、湖沼でのジュンサイ採取などで使用されていたことが知られているが、今日実際に使用され、かつ漁師の注文に応じて製作する職人がいるのは小木半島とその周辺地域のみとなっている。 この技術は、水の浸入を防ぐため部材を密着させる木殺しのような造船技術や、杉の芯に近い面やアカタと呼ばれる面を水に接するように部材を配置するような桶樽の製作技術が随所に巧みに利用されている。
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詳細解説
小木のたらい舟製作技術は、新潟県佐渡市の小木半島とその周辺で使われてきた、たらい状の舟を製作する技術である。 この地域でたらい舟が使用されるようになった時期ははっきりしないが、享和2年(1802)の小木地震で近海の地盤が隆起してアブルマと呼ばれる浅瀬が発達し、海岸線に入江が深く入り込むようになって以後という。その起源も、桶を半分に切って使い始めたという説、桶が流れ着いて海藻を採取していた女性が使い始めたという説、石川県能登地方で使われていたものが小木に伝えられたという説などがありはっきりしない。 たらい舟は、地元ではハンギリとも呼ばれ、イソネギと呼ばれる磯漁で主に使用されてきた。イソネギは、アワビやタコなどの魚介類を突く見突き漁とワカメやテングサなどを採取する海藻採取からなり、前者は男性により冬を中心に、後者は女性により春から夏を中心に行われる。漁師にとってたらい舟は、製作費が安価で、タガを定期的に取り替えれば15年以上も使用できることから経済的であり、機能的にも小回りがきき安定感があり、1人で舟を操れるだけでなく、1人で運ぶこともできて何処からでも揚げ降ろしできるため、重宝されてきた。 たらい舟は、風呂桶や巨大な味噌樽を製作する職人が製作する。その大きさは、漁師が自分の身長に合わせて注文するが、縦150㎝、幅130㎝ほどの楕円形で、高さ50㎝ほどが平均的である。職人はたらい舟を製作するだけでなく、納品後も漁師の依頼に応じて修理を行う。かつては3年に1度の割合でワガエと称するタガの架け替えをした。これは3月頃に職人が各集落を回って桶樽の修理とあわせて行った。 たらい舟の製作は、ウラを作る、クレを作る、クレを組む、カリタガをかける、ウラを入れる、ホンタガを編んでかける、ウラをはめ込むという工程で行われ、ほとんどの工程を職人1人で行う。 たらい舟の底であるウラを作るには、まずイタドリと称して、長さ160㎝、幅30㎝、厚さ4㎝ほどの板目の杉板を5枚ほど用意する。これらの杉板の左右の縁にノイクギの入るほぞをツバノミでそれぞれ4箇所ほどあける。これをウチヌキという。 ノイクギは、真竹製で長さ10㎝、幅1㎝ほどの板状である。次いでクギタテと称してノイクギを入れ、ハギツケと称して杉板を接ぎ合わせる。 こうして縦160㎝、横150㎝ほどの板ができると、これにウラの形を墨付けして鋸で切り取る。これをヒキマワシという。 その後ウラマワシと称して、縁にカンナをかけてウラが完成する。 杉板を接ぎ合わせる際には、木殺しという和船製造でも使われる技術が利用される。これはコロス、タメツケルなどとも呼ばれ、杉板の接合面をサイヅチなどで叩いてから接ぎ合わせる。木殺しを行うと、叩かれた面が自然に戻り、杉板どうしが密着して水の浸入を防止する。また叩かない場合でもタガを強く締めると、水につけたとき、杉板が膨張して杉板どうしが密着するため、これもコロスと呼ぶ。 また、杉板の配置も、キウラと呼ばれる木の芯に近い面、あるいはアカタと呼ばれる木肌が赤みを帯び木目が細かい面が腐りにくいことから、水に接する舟の外側になるように配置する。これは桶樽の製作で使われる技術を利用したものである。 ウラを作ると、次はたらい舟の側面の板であるクレを作る。クレは、長さ50㎝、厚さ3㎝ほどの柾目の杉板である。クレには舟の前後にあたるツマダテと呼ばれる部分に使用するものと舟の左右にあたるホウダテと呼ばれる部分に使用するものの2種類ある。ツマダテ用のクレは、幅10㎝ほどで、前後約15枚ずつの計30枚用意され、ホウダテ用のクレは、幅20㎝ほどで、左右約4枚ずつの計8枚用意される。クレの内側と外側の曲線はそれぞれカタと呼ばれる用具を使ってとり、内側はマルガンナ、外側はカンナをかける。最後にすべての縁にカンナをかけ、ノイクギの入るほぞを左右それぞれ2箇所あけてクレが完成する。 クレが完成すると、クレクミと呼ばれるクレを接ぎ合わせる作業に入る。クレをウラの周囲に並べ、1枚ずつウラにあててクレの左右の端がウラのどの部分にくるか爪で印をつける。これをツメズミという。 ツメズミを終えると、クレをノイクギで接ぎ合わせていく。ノイクギは、長さ7㎝、幅5㎜ほどの真竹製である。すべてのクレを接ぎ合わせると高さ50㎝ほどの円柱状になる。ここでも木殺しや部材の配置が意識される。 次はカリタガをかける作業である。円柱に真竹をより合わせたカリタガを2本かけて、才槌と締木で軽く打ち込んで締める。次いで、メチガイナオシと称して、円柱を横にして内側にマルガンナをかけて滑らかにする。そして円柱を横にしたままウラを入れる。これをブチコミという。この作業だけは2人で行うことが多く、ウラが円柱に垂直に入るように慎重に行う。なお、ウラを入れる前にオリバカキと称して円柱内側のウラのあたる部分にオリバと称する2㎜ほどの窪みをソリガンナでつけておく職人もおり、この場合ウラを入れることをカキコミと呼ぶ。 次はホンタガをかける作業である。まず、竹ひごを作る。真竹をヨツワクや鉈で8等分し、芽や内側の節を落とし、センガケと称して縁をセンという用具で整え、最後にメントリと称して外側の青い部分をセンでとって竹ひごとする。 次にタガヒキと称して、4本の竹ひごでクミボウを使ってホンタガを編む。ホンタガは3本あり、舟の一番上のタガをクチタガと呼び、波除けの役目もあり、他のタガより幅の広い竹ひごで編む。真ん中のタガはソコモチと呼び、船体を締め付ける最も重要なタガである。一番下のタガはシリタガといい、船底の傷みを防止する。 ホンタガを編むと、舟を逆さにしてクチタガ、ソコモチ、シリタガの順にかけていく。クチタガやソコモチは、カケヤと呼ぶ大きな木槌と締木で強く打ち込むが、シリタガは少しきつめに編んでおき、クミボウとカケヤで引っ掛けるようにして入れる。これをヘラワリという。 ホンタガをかけると、舟を表に返し、内側からウラの縁をサイヅチで強く叩いてウラを完全にはめ込む。最後にメントリと称してカンナやソリガンナをウラや舟べりにかけて滑らかにしてたらい舟が完成する。 この技術には、木殺しや木の腐りにくい面を水に接するように配置するなどの技術、ノイクギで部材を接ぎ合わせる技術などが利用されている。また、たらい舟は、かつて全国に点々と見られ、近海での漁や海藻採取、湖沼での菱の実採取やじゅんさい採取などで使用されていたことが知られているが、今日実際に使用され、かつ漁師の注文に応じて製作する職人がいるのは、佐渡市の小木半島及びその周辺地域だけとなっており、我が国の和船製造技術や桶樽製作技術を考える上で重要である。