国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
重要無形民俗文化財
主情報
名称
:
三島のサイノカミ
ふりがな
:
みしまのさいのかみ
三島のサイノカミ
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
年中行事
その他参考となるべき事項
:
公開日:毎年1月15日前後(※指定当時・お出掛けの際は該当する市町村教育委員会などにご確認ください)
指定証書番号
:
指定年月日
:
2008.03.13(平成20.03.13)
追加年月日
:
指定基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
指定基準2
:
指定基準3
:
所在都道府県、地域
:
福島県
所在地
:
保護団体名
:
三島町年中行事保存会
三島のサイノカミ
解説文:
詳細解説
三島のサイノカミは、五穀豊穣や無病息災、厄落としなどを祈願して行われる小正月の火祭りである。町内の宮下、桑原、大登、川井、桧原、滝谷、名入、滝原の各地区と、西方地区の13か所で行われる。
雪踏みをして作った会場に、山から切り出した神木を運び、これに各家から集めた正月飾りなどをつけて立て、夜になると燃やすもので、この作り物もサイノカミと呼ぶ。雪踏みや正月飾りを集めるのは子どもたちの仕事で、神木の提供やサイノカミの点火などは厄年の男性が行うことが多い。
厄落としのため、厄年の男性によるミカン撒きや村人が厄年の男性を担いで燃え盛るサイノカミの周囲をまわる行事も行われる。また、サイノカミの燃え方で豊凶を占ったり、この火にあたったり、餅などを焼いて食べると病気をしないなどともいう。(※解説は指定当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
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三島のサイノカミ
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三島のサイノカミ
解説文
三島のサイノカミは、五穀豊穣や無病息災、厄落としなどを祈願して行われる小正月の火祭りである。町内の宮下、桑原、大登、川井、桧原、滝谷、名入、滝原の各地区と、西方地区の13か所で行われる。 雪踏みをして作った会場に、山から切り出した神木を運び、これに各家から集めた正月飾りなどをつけて立て、夜になると燃やすもので、この作り物もサイノカミと呼ぶ。雪踏みや正月飾りを集めるのは子どもたちの仕事で、神木の提供やサイノカミの点火などは厄年の男性が行うことが多い。 厄落としのため、厄年の男性によるミカン撒きや村人が厄年の男性を担いで燃え盛るサイノカミの周囲をまわる行事も行われる。また、サイノカミの燃え方で豊凶を占ったり、この火にあたったり、餅などを焼いて食べると病気をしないなどともいう。(※解説は指定当時のものをもとにしています)
詳細解説▶
詳細解説
三島のサイノカミは、福島県大沼郡三島町で毎年1月15日を中心に行われている小正月の火祭りの行事で、五穀豊穣や無病息災などを祈願したり、厄払いのために行われる行事である。 近隣の山より神木を切り出し、これに稲藁や豆幹などを巻きつけ、オンベあるいはオンペイと呼ばれる御幣や正月飾りなどを吊り下げて、バンバと呼ばれる広い場所に立てて夜になると燃やす。この稲藁や正月飾りで飾り付けられ立てられた神木そのものもサイノカミと呼ばれる。 三島町は、福島県の西部、只見川沿いの河岸段丘上に集落が形成され、農業のほか山仕事なども盛んに行われてきた町であり、現在、三島町内の宮下、桑原、大登、桧原、滝谷、川井、名入、滝原、西方の9地区がこの行事を行っている。また、このうち西方地区は戸数が多いため、13ケ所に分かれて行事を行っている。 滝谷地区を例に行事をみると、1月15日にサイノカミを行う。早朝から氏神の諏訪神社の前の広場に子どもたちが集まってバンバフミと称して雪を踏み固める。これが終わると、子どもたちは、地区をまわってモエグサと呼ばれる稲藁や豆幹、正月飾りなどを集め、バンバにもっていく。それらのうち鏡餅の下に敷いた紙や書初めなどの紙類は集会所へ届ける。 集会所では老人が、集められた紙類を小刀で細く切って束ねオンベと呼ぶ御幣を製作する。これをオンベ切りという。また、同時に白扇三枚を水引でつなげて円にしたものを四つ製作する。 いっぽう、61歳と42歳の厄年の男性をはじめとして、各家から大人の男性がバンバに集合し、近隣の山に入り、神木を切り出す。これを神柱迎えという。神木は、雑木で、61歳の男性が用意する。また合わせて神木の横に渡す木も切る。 これらをバンバに運ぶと、神木に横木を結わえ付け、横木、神木の順に豆幹や稲藁を巻きつけていく。これをドウマキと称する。横木にオンベを取り付け、円にした白扇を横木の両端、神木の上部、神木と横木との交差部分に1枚ずつ付ける。そして、その年の恵方であるアキのほうを向けて神木を垂直に立てる。このとき、何本もの梯子で神木を支えるようにしながら徐々に立てていく。神木がほぼ垂直になると、四方から梯子で支えながら掛け声とともに持ち上げて地面に3度ほど突き刺す。これをドウツキという。最後に、残った正月飾りなどを神木の根元に置いて藁をかぶせ、厄年の男性がカマグチと称する三角形の点火口を数箇所作る。こうしてサイノカミが完成する。 午後からは厄年の男性がバンバでミカン撒きを行う。人々はこれを縁起物として拾う。これを食べると1年間無病息災で過ごせるという。 夜になると、滝谷地区の草分けの家の1軒といわれる若林家に厄年の男性が松明をもって集まる。そして若林家の火を松明に移してバンバに運ぶ。バンバに到着すると、サイノカミの周囲を左回りに3回まわってからカマグチに点火する。サイノカミが勢いよく燃えてしばらくすると、地区の住民が厄年の男性などを抱きかかえるようにして燃え上がるサイノカミの周囲を左回りに3回まわり、最後に胴上げをする。これもドウツキという。 サイノカミは燃え方により豊凶が占われる。勢いよく燃えると豊作になる、横木が早く燃え落ちると景気がいい、横木がなかなか燃え落ちないと縁起が悪いといった具合である。また、サイノカミの火で餅やスルメを焼いて食べると病気にならないといったり、灰や炭を傷口につけると治るといってその場で塗ったり、家に持ち帰ったりもする。 また、川井地区でも1月15日にサイノカミを行う。滝谷地区と同様に、子どもたちが早朝から正月飾りや稲藁などをバンバに集め、紙類を公民館に届けてから、バンバフミをする。 公民館では老人たちがオンペイと呼ぶ御幣を作る。これは事前に用意してあった12本の萩の棒に2つずつ神社名を記した紙を一枚ずつ挟み、それを束ねて、円にした扇3枚とともに竹に括りつけて、その下に大量の細長い紙を下げたものである。 また各家から男性が1人ずつ出て、近隣の山から神木として杉を切り出す。これをサイノカミ迎えという。神木は引き合ったり、その上に乗ったりしながらバンバまで運び、稲藁を巻きつけ、オンペイを下げてから立てる。このとき、トシトクジンを迎えると称して、全員でワァーと3回叫ぶ。 また、バンバには雪で祭壇が作られる。ここには氏神である伊豆神社のほか、皇大神宮、古峰神社のお札が納められ、伊豆神社からもらった火が灯される。夜になると、一同祭壇に参拝し、祭壇から松明に火が移されて厄年の男性によりサイノカミに点火される。 川井地区でもまた、サイノカミの燃え方により豊凶が占われる。早く燃えると火事に気をつける、あまり勢いよく燃えすぎると旱魃になる、燃え落ちた松の葉などが雪の上に縦に刺さると大豊作になるといった具合である。また、サイノカミが燃えている傍らでは厄年の男性によるミカン撒きも行われる。 この行事は、作り物の形状については、十字型の滝谷地区、高い塔型の川井地区のほか、三角錐の桑原地区、小屋型の宮下地区など多様であるが、近隣の山より神木を切り出し、正月飾りなどをつけて立て、夜に燃やすという次第は共通する。また、子どもが会場づくりをし、正月飾りなどを集めるほか、大人の男性が神木を切り出し、老人がオンペイを製作し、厄年の男性がミカン撒きやサイノカミへの点火などを担当することが多い。 なお、桧原地区では、サイノカミの1ヵ月後に、燃え残った神木を利用して子どものサイノカミと称する小型のサイノカミを製作して燃やしている。 東北日本の日本海側にサイノカミの名称で伝承される小正月の火祭りの典型例の一つといえ、子どもや厄年の男性が行事に深く関わり、厄落としや年占の要素が濃厚にみられるという点でも特色があり、我が国の小正月行事を知る上で重要である。 (※解説は指定当時のものをもとにしています)