国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
重要無形民俗文化財
主情報
名称
:
佐伯灯籠
ふりがな
:
さえきとうろう
解説表示▶
種別1
:
民俗芸能
種別2
:
渡来芸・舞台芸
その他参考となるべき事項
:
公開日:毎年8月14日(指定当時・お出掛けの際は該当する市町村教育委員会などにご確認ください)
指定証書番号
:
指定年月日
:
2009.03.11(平成21.03.11)
追加年月日
:
指定基準1
:
(二)芸能の変遷の過程を示すもの
指定基準2
:
(三)地域的特色を示すもの
指定基準3
:
所在都道府県、地域
:
京都府
所在地
:
保護団体名
:
佐伯灯籠保存会
解説文:
詳細解説
佐伯灯籠は、祭礼行列に加わる台灯籠【だいとうろう】と呼ばれる移動式の舞台で、三味線音楽の一つである義太夫節【ぎだゆうぶし】にあわせて演じる人形浄瑠璃【にんぎょうじょうるり】である。人形は全体が約35センチメートルの大きさで、一体の人形を一人で操る。人形の背後から差し込んだ竹板などによる操作方法や舞台に特色がある。
佐伯灯籠は、この地の薭田野【ひえだの】、御霊【ごりょう】、河阿【かわくま】、若宮【わかみや】の4神社合同の祭礼にともなう。この祭礼には、台燈籠のほかに切り子【きりこ】灯籠、また農作業を示す人形をのせた役【やく】灯籠や神【かみ】灯籠と呼ばれる灯籠が出るので、かつて「灯籠まつり」とも呼ばれ、今でも祭礼全体を佐伯灯籠と呼ぶことがある。
台灯籠は、正面の幅約170センチメートル、奥行約150センチメートル、高さ約80センチメートルの大きさで、その上部に「御殿【ごてん】」と呼ばれる家屋の模型がのっている。
人形浄瑠璃は、操作者が台燈籠の中にはいり、「御殿」を後方にずらし、手前側にできた空間に人形を差し上げて演じる。一体の人形を一人が操作するもので、人形背面に竹板を差し込み、操作者は左手で竹板を持って人形の頭部と左手を、右手で人形の右手につながる竹棒を持って操る。
佐伯灯籠は、移動式の舞台で、特有の操作方法によって人形浄瑠璃を演じるもので、その操作法や上演舞台の構造など、芸能の変遷過程や地域的特色を示し重要である。
(※解説は指定当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
解説文
佐伯灯籠は、祭礼行列に加わる台灯籠【だいとうろう】と呼ばれる移動式の舞台で、三味線音楽の一つである義太夫節【ぎだゆうぶし】にあわせて演じる人形浄瑠璃【にんぎょうじょうるり】である。人形は全体が約35センチメートルの大きさで、一体の人形を一人で操る。人形の背後から差し込んだ竹板などによる操作方法や舞台に特色がある。 佐伯灯籠は、この地の薭田野【ひえだの】、御霊【ごりょう】、河阿【かわくま】、若宮【わかみや】の4神社合同の祭礼にともなう。この祭礼には、台燈籠のほかに切り子【きりこ】灯籠、また農作業を示す人形をのせた役【やく】灯籠や神【かみ】灯籠と呼ばれる灯籠が出るので、かつて「灯籠まつり」とも呼ばれ、今でも祭礼全体を佐伯灯籠と呼ぶことがある。 台灯籠は、正面の幅約170センチメートル、奥行約150センチメートル、高さ約80センチメートルの大きさで、その上部に「御殿【ごてん】」と呼ばれる家屋の模型がのっている。 人形浄瑠璃は、操作者が台燈籠の中にはいり、「御殿」を後方にずらし、手前側にできた空間に人形を差し上げて演じる。一体の人形を一人が操作するもので、人形背面に竹板を差し込み、操作者は左手で竹板を持って人形の頭部と左手を、右手で人形の右手につながる竹棒を持って操る。 佐伯灯籠は、移動式の舞台で、特有の操作方法によって人形浄瑠璃を演じるもので、その操作法や上演舞台の構造など、芸能の変遷過程や地域的特色を示し重要である。 (※解説は指定当時のものをもとにしています)
詳細解説▶
詳細解説
佐伯灯籠は、祭礼行列に加わる台灯籠(だいとうろう)と呼ばれる移動式の舞台で、義太夫節(ぎだゆうぶし)にあわせて演じる人形浄瑠璃(にんぎょうじょうるり)である。人形は全体が約35cmの大きさで、一体の人形を一人で操る。台灯籠は、間口が約170cmで、奥に家屋の模型を飾る。人形浄瑠璃は、その家屋を奥にずらし、手前側に出来る隙間から、人形を差し上げて演じる。義太夫節の太夫と三味線は、台灯籠の脇で演奏する。 京都府亀岡市は、京都市の西方約20km、京都府のほぼ中央にあたる。古くから京阪神と日本海側を結ぶ交通の要衝として栄えた。佐伯灯籠は、この地の薭田野(ひえだの)神社、御霊(ごりょう)神社、河阿(かわくま)神社、若宮(わかみや)神社の四社合同の祭礼にともなう。祭礼は、社伝によると、13世紀前半に勅使によって5基の燈籠が下賜されたことを契機に始まり、江戸時代は毎年7月14、15日の2日間行われたが、昭和13年頃から8月14日の1日になったとされる。祭礼は、台燈籠や切り子灯籠、また役(やく)灯籠や神(かみ)灯籠と呼ばれる農作業を示す人形をのせた5基の灯籠がともなったので18世紀前半には「灯籠まつり」とも呼ばれ、今でも祭礼全体を佐伯灯籠と呼ぶことがある。 人形浄瑠璃が演じられる台灯籠は、正面の幅約170cm、奥行約150cm、高さ約80cmの井桁状に組んだ台が基本になる。この台の上部に板をわたし、その上に「御殿(ごてん)」と呼ぶ家屋の模型をのせる。御殿は、柱などの骨組を細い木で作り、障子や襖などは紙細工で、欄間(らんま)は透かし彫りである。台の四隅に、紺と白の紙テープを螺旋状に縞模様に巻いた高さ約2mの竹を立て、その上部に横向きに同様に紙テープで飾った竹を固定する。それぞれの竹の先を大きな紅白の紙房で飾り、また正面や上部を造花で飾る。移動は、台灯籠に付けられた環に二本の棒をとおして四人で肩にかついで行われる。 人形は、京都で製作された雛人形の頭部と手足を利用したものとされる。頭部は約5cmで、長さ約10cmの竹棒の先に差し込まれている。人形の胴は長さ約15cmの木製円筒状で、中心部に直径約2cmの竹筒が差し込まれ、この竹筒に頭部をつけた竹棒を差し入れて、全体に衣裳を巻き付けている。衣裳の背面の腰の部分に切れ目があり、その奥の竹筒にも穴があけられ、頭部を付けた竹棒が届いている。竹棒には頭部を左右に動かす二本の糸が縛りつけられ、衣裳の切れ目を通して外に出ている。糸を引くと竹棒が回転して頭部が、その方向に向く仕掛けである。男の人形は木製の足が付けられ、女の人形は足はなくて衣裳の裾に籾殻をいれた袋を縫いつけている。人形の左右の手は、それぞれ指先から肱の途中までの木製で長さ約30cmの竹棒の先に取り付けられている。手首のあたりを衣裳の袖口に固定し、竹棒は衣裳の後方に突きだしている。 人形全体を支えるのは、長さ約30cm、幅約3cm、厚さ約0.6cmの竹板で、その一端をU字型にして先端をとがらせ、その先端を衣裳背面の切れ目から、人形の胴部の木に突き刺して人形を固定する。竹板には頭部を動かす糸の操作環が付いている。 人形の操作者は、人形に刺した竹板を、左手の親指と人差し指の間にはさむように持って人形全体と頭部を操作し、人形の左手につながる竹棒を、左手の薬指の上にのせ上から中指と小指で押さえてはさんで、人形の左手を操作する。さらに人形の右手の竹棒を、右手の親指と人差し指ではさむとともに、右手の他の指で人形の右足部分を持って人形を安定させる。 佐伯灯籠の人形は、その構造から細かい操作が容易ではないが、例えば会話の時には両手や顔を動かし、歩く動作は、手を細かく動かし首を軽く左右に動かすことで、それらしく表現したり、あるいは女役の人形は左手を胴体に寄り添わせ、右手を少し前に出して女性らしさを表現するなど工夫されている。 現在、上演される演目は『絵本太功記(えほんたいこうき) 尼ヶ崎の段(あまがさきのだん)』『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ) 正岡忠義の段(まさおかちゅうぎのだん)』『御所桜堀川夜討(ごしょざくらほりかわようち) 弁慶上使の段(べんけいじょうしのだん)』などである。これらを、それぞれ二、三に分割して太夫が入れ替わって上演する。 台灯籠の準備は、7月後半から薭田野(ひえだの)神社の鳥居前にある旧佐伯公民館、現在の佐伯灯籠資料館で始まり、5基の役灯籠とあわせて飾り付けられていく。その後、8月初めに資料館で人形浄瑠璃を上演し、8月10日に最終的な総稽古として上演する。祭礼当日になると、役燈籠とともに稗田野神社にかつがれていく。社前での祭典後、台燈籠は、役燈籠や鼻高面を付けた猿田彦などとともに行列に加わり、途中で若宮神社、次に河阿(かわくま)神社の行列と一緒になって、御霊神社にかつがれていく。行列は御霊神社の境内へ進むが、台灯籠は御霊神社の鳥居前に据えられる。御霊神社社前で役灯籠に神社の火を移したり、境内で大松明に点火されたりする間に、鳥居の前の台灯籠で人形浄瑠璃が演じられる。御霊神社での行事が終わると行列は氏子域へ向かうが、台灯籠は、行列から離れて旧大庄屋跡と呼ばれる場所にかつがれていき、そこに据えて人形浄瑠璃を演じる。演じ終わると台灯籠は、薭田野神社へ向い、かつては神社境内の社務所前に台燈籠を置いて上演したが、近年は資料館内に台燈籠を据えて夜遅くまで人形浄瑠璃の上演を続けている。 (※解説は指定当時のものをもとにしています)