国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
重要無形民俗文化財
主情報
名称
:
上郷の小正月行事
ふりがな
:
かみごうのこしょうがつぎょうじ
上郷の小正月行事
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
年中行事
その他参考となるべき事項
:
公開日:毎年1月15日(※指定当時・お出掛けの際は該当する市町村教育委員会などにご確認ください)
指定証書番号
:
352・353
指定年月日
:
1998.12.16(平成10.12.16)
追加年月日
:
指定基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
指定基準2
:
指定基準3
:
所在都道府県、地域
:
秋田県
所在地
:
保護団体名
:
横岡サエの神保存会
大森サエの神保存会
上郷の小正月行事
解説文:
詳細解説
上郷の小正月行事は、横岡地区の4つの組と大森で、子どもたちによって行われている小正月行事で、サエの神小屋焼きに鳥追いなどが組み合わされた行事である。藁を集めて作ったサエの神小屋に小学性男子が籠もった後、最後に火をつけて焼やして豊凶を占う。また、鳥追いでは集落内を唄を歌いながら一番鳥から三番鳥まで3回ほどまわる。嫁つつきは、初嫁のいる家を訪問して初嫁棒で畳をつつき、唄を歌いながら3回初嫁の周りをまわる。(※解説は指定当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
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上郷の小正月行事
解説文
上郷の小正月行事は、横岡地区の4つの組と大森で、子どもたちによって行われている小正月行事で、サエの神小屋焼きに鳥追いなどが組み合わされた行事である。藁を集めて作ったサエの神小屋に小学性男子が籠もった後、最後に火をつけて焼やして豊凶を占う。また、鳥追いでは集落内を唄を歌いながら一番鳥から三番鳥まで3回ほどまわる。嫁つつきは、初嫁のいる家を訪問して初嫁棒で畳をつつき、唄を歌いながら3回初嫁の周りをまわる。(※解説は指定当時のものをもとにしています)
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詳細解説
にかほ市象潟町横岡は旧上郷村に属する鳥海山西麓の台地上に広がる農村地帯で、6つの地区からなる。南端に位置する横岡地区の大下(下村)・中ノ下・中屋敷・寺地の4か所の組と、北端の大森地区では、正月15日を中心にサエの神小屋焼きなどの小正月行事が行われている。 正月8日頃、子どもたちは各家から藁とヌサをもらってまわり、大人たちはサエの神小屋の柱などに用いるホケ伐りをする。各組それぞれにサエの神を祀っており、11日午後にその近くにサエの神小屋を建てる。小屋の入口の上部にヌサを飾る。ヌサは藁製の幣束で、コンブ・干鰯・炭・麻などを結びつけ、正月2日朝に家族の男性の数だけ作り、7日まで屋敷内のアキの方にある樹木に掛けておいたものである。入口の両側にはハネノキ(タニウツギ)の枝を立てる。小屋の床には莚を敷き、その上に藁を敷き詰め、最奥部に古いサエの神(木製男根形)を祀る。中ノ下や寺地では小屋にタラの木を二つ割りにして、「十二月吉日」とか「蘇民将来之子孫門戸也」と書いたゴンギョウを挿す。14日夜は9時頃まで子どもたちがサエの神小屋に籠もる。 15日早朝、人びとはサエの神餅を持ってサエの神に参拝し、神前で鉈を用いて年齢分の数だけ削って持ち帰る。また、月々の願い事を祈るために1年間の月数を削る人もいる。 その後、小屋を燃やす。最後まで燃え残った組が豊作になるといわれ、子どもたちは他の組のサエの神小屋を早く燃やそうとする。この煙が東南になびくと豊作、北寄りに流れると凶作などと占い、火のついた小屋の材を家に持ち帰って、いろりで燃やして火災除けにしたりする。 また、15日昼に4組の男子小学生が自治公民館に集まり、一番鳥から三番鳥まで3回の鳥追いを行う。一番鳥は午後2時に始め、二番鳥は夕方、三番鳥は真夜中の1時頃に行う。鳥追いでは4か所のサエの神小屋をまわってから、集落内をまわる。 一方、横岡の北端に位置する大森地区では、正月11日午後に集落の西にあるサエの神の祠の近くにサエの神小屋を建てる。小学生の男子が藁を集め、大人が中学生とともに小屋をアキの方に向けて建てる。正面の入口に当たる部分に、1本の縄で星形を作り、その真ん中に木製のマラ(男根形)を突き出させる。 14日夜にはアカダマ(赤玉)をし、その夜、ヤドカリといって子どもたちはヤドになっている公民館に集まって泊まる。昭和40年頃までは一軒の家をヤドとして借り、14日から16日まで薪・炭・豆柄などの燃料と食べ物を持って集まったという。 15日朝10時頃、大森地区の小学生と就学前の女の子たちが、「ショトメマイッタ(早乙女参った)」と唱えながら各家をまわり、餅や御菓子をもらう。10時過ぎに男の子たちはサエの神の祠を拝み、小屋に火を点けて鳥追いの唄を歌う。続いて男の子たちは一番鳥から三番鳥まで3回集落内をまわる。道を歩くときには鳥追い唄を歌うが、鳥追いの最後には送り唄を歌ってサエの神の祠に向かう。 一番鳥はモチモライともいい、このときだけ各家を訪問する。組頭役の中学生はサエの神小屋に祀られていたマラを持ち、一人が太鼓をたたき、数人が大きな布袋を持ってまわる。他の子どもたちはタラの木で作った長さ80㎝ほどの初嫁棒を持つ。材料となるタラの木は、1月6日のタラ迎えの日に山から伐ってきたもので、一部は初嫁棒に、一部はゴンギョウにした。大森地区では、14日までにゴンギョウを作り、15日朝に玄関・裏口・小屋や蔵の門口にヤナギの枝とユズリハとともに掛けて魔除けにする。 初嫁のいる家では、初嫁が晴れ着を着て座敷の中央の座布団に座ると、組頭が初嫁の前にマラを投げ出し、子どもたちは初嫁棒で畳をつつきながら3回初嫁の周りを廻まわり、「初嫁出はた。初嫁出はた。つつくは今だ」と嫁つつき唄を歌う。子どもたちは甘酒を振る舞われ、大きな重ね餅をもらう。子どもたちは鳥追いに用いたマラをサエの神の祠に納め、ヤドで餅と御菓子を分配して行事が終わる。 この行事は、秋田県ではこの地域だけに見られる特色ある小正月行事であり、また全国各地に伝えられてきた小正月行事の典型例の一つとしても重要である。 (※解説は指定当時のものをもとにしています)