国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
芦屋の八朔行事
ふりがな
:
あしやのはっさくぎょうじ
芦屋の八朔行事
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
年中行事
その他参考となるべき事項
:
公開日:毎年9月1・2日(※選択当時・お出掛けの際は該当する市町村教育委員会などにご確認ください)
記録:『芦屋の八朔行事』(芦屋町教育委員会・平成22年3月31日)
映像:『芦屋の八朔行事』(芦屋町教育委員会・平成23年3月)
選択番号
:
選択年月日
:
2007.03.07(平成19.03.07)
追加年月日
:
選択基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
福岡県
所在地
:
保護団体名
:
特定せず
芦屋の八朔行事
解説文:
詳細解説
この行事は、遠賀郡芦屋町で、初の八朔を迎える子どものいる家で、子どもの健やかな成長を祈願する行事である。ワラウマやダゴビイナなどの作り物を製作し、それらを飾った後、親類や近所の人々に配布する行事で、かつては旧暦8月1日の八朔とその翌日にかけて行われていたが、現在は9月1日から2日にかけて行われている。(※解説は選択当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
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芦屋の八朔行事
芦屋の八朔行事
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芦屋の八朔行事
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芦屋の八朔行事
解説文
この行事は、遠賀郡芦屋町で、初の八朔を迎える子どものいる家で、子どもの健やかな成長を祈願する行事である。ワラウマやダゴビイナなどの作り物を製作し、それらを飾った後、親類や近所の人々に配布する行事で、かつては旧暦8月1日の八朔とその翌日にかけて行われていたが、現在は9月1日から2日にかけて行われている。(※解説は選択当時のものをもとにしています)
詳細解説▶
詳細解説
芦屋の八朔行事は、遠賀郡芦屋町で、初の八朔を迎える子どものいる家で、子どもの健やかな成長を祈願する行事である。ワラウマやダゴビイナなどの作り物を製作し、それらを飾った後、親類や近所の人々に配布する行事で、かつては旧暦8月1日の八朔とその翌日にかけて行われていたが、現在は9月1日から2日にかけて行われている。 男の子のいる家では、藁馬と笹竹を製作して飾る。藁馬は、オウマとも呼ばれ、藁をすぐって凧糸で束ねて作った馬に紙製の武者人形を乗せ、紙製の旗指物を指したものである。高さは20㎝前後のものが多く、武者人形の服には恵比須大黒などの絵を描き、旗指物には豊臣秀吉、徳川家康などの有名な武将などの名前を書く。多い家では300体近く作ることもあり、5月頃から時間を見つけて少しずつ作り始める。また、藁馬とは別に大将馬と称する高さ50㎝もあり、藁馬よりもしっかりと丁寧に作られた馬を1ないし2頭用意する。かつてはこの大将馬も自家で作っていたが、近年は人形屋に注文して製作してもらうことも多くなっている。笹竹は、弓矢の作り物を一本の笹にたくさん吊るしたものである。これらを製作すると、8月31日に表座敷や縁側などに雛壇を設け、大将馬をその一番上部中央に飾り、その下に藁馬をきれいに並べ、笹竹は雛壇の脇に立てる。 女の子のいる家では、ダゴビイナ(団子雛)を製作して飾る。ダゴビイナは、蒸した米の粉を練って団子にして食紅で彩色し、厚紙に乗せたものである。高さは10㎝程度であるが、鯛や鶴亀、野菜、雛人形など様々な形のものがある。近年ではアニメのキャラクターなどを象ったものも見られる。ダゴビイナも多い家では300体近く作ることがあるが、時間が経つとひびが入ったり、カビが生えたりするので、行事の2~3日前から家人が総出で一気に製作する。ダゴビイナも表座敷や縁側などに設けられた雛壇にきれいに並べられる。一番上には雛祭りで使用する内裏雛一対が飾られているが、かつてはこの内裏雛も蒸した米の粉で製作することになっていた。 また、ワラウマやダゴビイナを飾った雛壇の脇にはホウセンカの花が飾られることが多いほか、漁師の家では雛壇の後ろに大漁旗を張り巡らすことも多い。 行事当日の1日は、親類や近所の人々が初の八朔を迎える子どもを祝うため、祝儀をもってこれらの家を訪れる。各家では子どもを雛壇の前で披露するなどして祝儀をいただき、男の子のいる家では笹竹に祝儀袋を吊り下げる。祝儀をもらうと、お返しとして紅白饅頭を贈答する。これには男子の場合は馬、女子の場合は紙雛を描いた熨斗紙がつけられる。また、大正期までは各家で木製や張り子の飾り馬を箱車に乗せた引き馬と称するものを用意して、後ろに笹竹を立てて、近所の子どもたちを呼んで町内を引き回してもらうこともあった。 2日は、早朝から近所の子どもや親類が再びこれらの家を訪れる。その際、藁馬やダゴビイナ、笹竹に吊るした弓矢などが配布される。かつては、深夜2時頃から子どもたちが各家の戸口を叩いて貰いにまわったというが、現在は1日に自分がほしい藁馬やダゴビイナを品定めして予約してくることが多く、そのため午前9時くらいになってから訪れることが多い。配布された藁馬やダゴビイナ、弓矢は、子どもたちの玩具となることが多く、特に藁馬は、下に台車をとりつけて引き回して競争したり、ぶつけ合ったりして遊ぶ。なお、ダゴビイナは、かつては醤油をつけてお菓子代わりに食べることも少なくなかったという。 子どもの健やかな成長を祈願する八朔行事は、西日本、特に中国・四国地方、九州北部に濃厚にみられる。この行事は、その中でも九州北部の八朔行事の典型例の1つとして我が国の年中行事を考える上で貴重である。しかし、いっぽうで九州北部の八朔行事は現在ほとんどが廃絶しており、この行事についてもかつて行われた引き馬の引き回しが廃絶し、笹竹も製作することが少なくなり、藁馬やダゴビイナも自家で製作せず民芸品として売られているものを数体購入して身内だけで祝う家も出てきており、行事の変容が著しい。そのため早急に記録を作成する必要があるものである。 (※解説は選択当時のものをもとにしています)