国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
上淀の八朔綱引き
ふりがな
:
かみよどのはっさくつなひき
上淀の八朔綱引き
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
娯楽・競技
その他参考となるべき事項
:
公開日:毎年9月第一日曜日(※選択当時・お出掛けの際は該当する市町村教育委員会などにご確認ください)
選択番号
:
選択年月日
:
2008.03.13(平成20.03.13)
追加年月日
:
選択基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
鳥取県
所在地
:
保護団体名
:
上淀自治会
上淀の八朔綱引き
解説文:
詳細解説
この行事は、豊作や無病息災を祈願して綱引きを行う行事で、淀江町福岡の上淀地区で毎年月遅れの八朔に近い日曜日である9月第一日曜日に行われる。巨大な藁蛇を作り、それを担いで天神垣神社境内の荒神の神木をまわった後、集落の通りに移動して上・下に分かれて綱引きを行い、豊凶を占う。最後にクチナワサンは村境に安置される。(※解説は選択当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
写真一覧
上淀の八朔綱引き
上淀の八朔綱引き
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上淀の八朔綱引き
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上淀の八朔綱引き
解説文
この行事は、豊作や無病息災を祈願して綱引きを行う行事で、淀江町福岡の上淀地区で毎年月遅れの八朔に近い日曜日である9月第一日曜日に行われる。巨大な藁蛇を作り、それを担いで天神垣神社境内の荒神の神木をまわった後、集落の通りに移動して上・下に分かれて綱引きを行い、豊凶を占う。最後にクチナワサンは村境に安置される。(※解説は選択当時のものをもとにしています)
詳細解説▶
詳細解説
上淀の八朔綱引きは、米子市淀江町福岡の上淀地区で、毎年9月第一日曜日に五穀豊穣や無病息災などを祈願して行われる八朔の綱引き行事である。 上淀地区は、鳥取県西部、大山の北西麓に位置する農村である。この行事の起源は定かではないが、地元では江戸時代、大山寺の寺領のうち村高千石以上の村に八朔綱引きが許可されており、上淀地区はそれにあたっていたことから八朔綱引きが伝承されてきたと言い伝えられており、単に八朔とも呼ばれている。 当日は、早朝より上淀地区36軒の各戸から大人が1人ずつ稲藁を持ち寄って集落南東の高台にある氏神の天神垣神社の境内に集まる。この稲藁を使って、クチナワサン(口縄さん)と呼ばれる大蛇を製作する。 最初に年輩の男性たちがクチナワサンの頭を製作する。巨大な目のほか、鼻・顎・舌・耳など部位ごとに分担して製作し、それらを組み合わせて、最後に藤蔓の髭とむくげの白い花のかんざしを付ける。出来上がった頭は天神垣神社に安置し、神職が祓った後、神酒を飲ませる。 次に、若い男性たちによりクチナワサンの胴体となる綱が製作される。境内には前日に鉄パイプで櫓を組んでおき、出来上がった綱を櫓の上にあげるようにして、藁の束を左綯いで綯っていく。こうして直径約20㎝、長さ約60㍍にもなる胴体が完成する。 次いで、天神垣神社より頭を持ち出して、胴体と結びつけ、クチナワサンが完成する。完成したクチナワサンは自治会長が頭を、残りの家々の当主が胴体を担いで天神垣神社の境内に祀られている荒神さんの神木の周囲を右回りに3回まわる。荒神さんの神木は、直径30㎝ほどの榊で、その周囲には1.2㍍四方の玉垣がめぐらされてあり、クチナワサンがこの玉垣や神木に触れると、縁起が悪い、稲刈りのときに天候が荒れるなどといって当たらないように細心の注意を払いながらまわる。 これが終わると、クチナワサンの頭と胴体を再び切り離す。頭は玉垣の左脇にある石灯籠の上に乗せ、1年間安置しておく。そして胴体は、頭がついていたほうを前にして、自治会長が先頭を担いで天神垣神社のある高台から上淀地区の集落を東西に貫くタテショウジ(縦小路)と呼ぶ通りに移動する。 そしてここで自治会長を審判として上と下に分かれて綱引きを3回行う。上と下は、家の並びで決められており、上は15軒、下は21軒となっている。 また、上と下は、麦と米に見立てられて上が勝つと麦が、下が勝つと米が豊作といわれたり、上が勝つと作物が豊作、下が勝つと作物が不作になるなどといわれたりする。 また、綱引きに参加すると1年間無病息災で過ごせるともいわれ、上淀地区の人びとだけでなく、親戚の人などもこぞって参加する。 綱引きが終了すると、再び胴体を担いでホウカイサン(法界さん)と呼ばれる村境まで運び、とぐろを巻いた状態にして安置して行事が終了する。 なお、12年ごとの亥年の綱引きの日には、荒神さんの式年遷宮も合わせて行われる。このときはクチナワサンサンの頭を製作している間に、玉垣に渡してある檜製の横木や玉垣の中に立てられている檜製の標柱を新しく取り替え、御神木の根元に埋めてあった直径20㎝ほどの甕を自治会長と神社総代で掘り出す。そして、米・水・麹などを入れた新しい甕を埋める。かつては古い甕の中身で豊凶を占ったと考えられるが、現在は特に占うことはない。新しい甕を埋めた後、クチナワサンの胴体を製作し、頭を取り付けて玉垣の周囲をまわり、タテショウジに移動して綱引きをし、胴体をホウカイサンに安置するのは例年通りである。 山陰地方の綱引きは、山陰地方東部から中部にかけて広く分布し、端午の節供に行われる菖蒲綱引きと八朔に行われる八朔綱引きがあることが知られている。八朔綱引きは、鳥取県の一部や兵庫県但馬地方に伝承されていたが、多くが廃絶している。鳥取県内でも本件が唯一の伝承例となっており、衰退・変貌が進んでいることから、早急に記録を作成する必要がある。 (※解説は選択当時のものをもとにしています)