国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
佐田岬半島の初盆行事
ふりがな
:
さだみさきはんとうのはつぼんぎょうじ
佐田岬半島の初盆行事
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
年中行事
その他参考となるべき事項
:
公開日:毎年8月13~16日(※選択当時・お出掛けの際は該当する市町村教育委員会などにご確認ください)
映像:『佐田岬半島の初盆行事』(記録編・普及編)(企画文化庁・製作桜映画社・平成27年3月)
選択番号
:
選択年月日
:
2010.03.11(平成22.03.11)
追加年月日
:
選択基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
愛媛県
所在地
:
保護団体名
:
特定せず
佐田岬半島の初盆行事
解説文:
詳細解説
この行事は、佐田岬半島に伝承される、初盆の家が中心となって新仏を供養して送り出す行事である。旧三崎町に伝承されるモウリョウ、モウナなどと呼ぶ行事、旧瀬戸町に伝承されるオショロブネを流す行事がある。モウリョウ、モウナなどと呼ぶ行事は、人びとが寺の境内などに集まり鉦・太鼓に合わせて新仏の数だけ円を描くように回るものである。オショロブネは、麦藁や真竹で作った船で、初盆の家の提灯や市松人形を乗せて海に流すものである。(※解説は選択当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
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佐田岬半島の初盆行事
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佐田岬半島の初盆行事
解説文
この行事は、佐田岬半島に伝承される、初盆の家が中心となって新仏を供養して送り出す行事である。旧三崎町に伝承されるモウリョウ、モウナなどと呼ぶ行事、旧瀬戸町に伝承されるオショロブネを流す行事がある。モウリョウ、モウナなどと呼ぶ行事は、人びとが寺の境内などに集まり鉦・太鼓に合わせて新仏の数だけ円を描くように回るものである。オショロブネは、麦藁や真竹で作った船で、初盆の家の提灯や市松人形を乗せて海に流すものである。(※解説は選択当時のものをもとにしています)
詳細解説▶
詳細解説
佐田岬半島の初盆行事は、愛媛県の西端に位置する佐田岬半島で行われる、初盆を迎える家の人々が中心となってシンボトケ(新仏)を供養して送り出す行事である。 佐田岬半島全域にあたる伊方町は、半島突端部の旧三崎町、半島中央部の旧瀬戸町、半島付け根部の旧伊方町が平成17年に合併してできた町である。伊方町では、初盆のことをシンボン、ミーボンなどといっており、旧三崎町に伝承されるモウリョウ、モウナなどと呼ばれる行事、旧瀬戸町に伝承されるオショロブネを流す行事などに地域的特色がみられる。 モウリョウ、モウナなどと呼ばれる行事は、集落の人々が寺の境内などに集まって鉦と太鼓に合わせて円を描くように新仏の数に応じた回数を回ることを基本としており、中央に人形を突き立てその周囲を回る集落、各自が笹舟を手にして回り、その後笹舟を海に流す集落、回った後初盆を迎える家の人々が送り火を焚く集落など多様な様相で伝承されている。 例えば、松集落ではモウナと呼ばれる行事が毎年8月15日に行われている。前日にその年の当番組の人々が女性を象った人形を作る。この人形は、十字に組んだ真竹に丈の短い着物を着せ、両手を広げたような恰好をしたもので、真綿を白布で包んだ頭部には目・鼻・口を描いて手拭いで頬被りをし、着物の裾あたりには女陰を表す鮑の殻もつける。この人形もモウナと呼ばれ、背丈は約150㎝で、その下に3㍍ほどの真竹をとりつける。当日は、昼過ぎに人びとが松集会所に集まり、人形を担いで太鼓と鉦を鳴らしながら、氏神である天満神社の境内に移動する。境内に着くと、人形を地面に突き立て、時計回りにゆっくりと回す。すると初盆を迎える家の人びとは、回っている人形の周囲を鉦と太鼓に合わせて時計回りに回る。このとき鉦や太鼓をたたく人は、回りながら「モーナ、モーナ、モーミードーブ」と3回唱え、最後に「セーッ!」と言いながら人形を激しく揺さぶる。この一連の流れを1回としてその年の新仏の人数分の回数行った後、最後に集落の分として1回行う。これを天満神社で行った後、聚楽庵の境内でも同様に行う。最後に、寺の境内で初盆を迎える家の人びとだけで送り火を焚いて行事は終了する。その後、人形は、松集会所の前の広場に設置された盆踊りの櫓に括りつけられ、翌日焼かれる。 オショロブネは、集落の人が麦藁やマダケなどで作る船で、海に流す際に、初盆を迎える家が精霊棚に飾った提灯を灯して乗せる集落、新仏の葬式で使った花輪をつける集落、新仏になぞらえた市松人形を乗せる集落などがある。 例えば、川之浜集落では毎年8月15日にオショロブネを流す。早朝から人びとが浜に集まり、持ち寄った真竹や麦藁などで、長さ約5㍍、幅2㍍以上にもなるオショロブネを作る。この船には帆柱を立て帆には黒色の紙を「卍」の形に貼る。船の後部に立てた幟には「念仏丸」と記す。夕方になると、初盆を迎える家の精霊棚の脇に飾られていた市松人形をオショロブネに乗せて海に流す。この市松人形は、新仏になぞらえたもので、白装束に、男性であれば鉢巻、女性であれば頬被りをさせ、頭陀袋を掛け、背中には弘法大師の掛軸を背負わせる。オショロブネは、船で途中まで曳航して沖に流す。オショロブネを流した後、初盆を迎える家の人々は、精霊棚に飾っていた燈籠を墓にもっていって供える。なお、オショロブネには近年まで新仏の葬式で使った花輪もつけていた。 先祖の霊を迎えて供養して送る盆の行事は、我が国の重要な年中行事である。この行事は、そのなかで新仏を供養して送る行事に特徴がみられるものである。この行事には、人々が一堂に会して太鼓と鉦に合わせて円を描くように回るモウリョウ、モウナなどと呼ばれる行事と、初盆を迎える家が供物などをオショロブネに乗せて流す行事があり、いずれも地域的特色の豊かなものであり、我が国の盆行事を考える上で注目される。しかし、伊方町は愛媛県内でも有数の過疎化・高齢化の進む地域であり、行事の衰退・変貌のおそれが高いことから、早急に記録を作成する必要がある。 (※解説は選択当時のものをもとにしています)