国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
国崎のノット正月
ふりがな
:
くざきののっとしょんがつ
国崎のノット正月
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
祭礼(信仰)
その他参考となるべき事項
:
公開日:毎年1月17日(※選択当時・お出掛けの際は該当する市町村教育委員会などにご確認ください)
選択番号
:
選択年月日
:
2011.03.09(平成23.03.09)
追加年月日
:
選択基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
三重県
所在地
:
鳥羽市国崎町
保護団体名
:
国崎町内会
国崎のノット正月
解説文:
詳細解説
この行事は、鳥羽市国崎町で、正月の終わりの日とされる1月17日に、家内安全や海上安全、豊漁などを祈願して、正月の神を藁製の船に乗せて送り出す行事である。町内会役員が用具類や会場となる浜の準備をするほかは、各家から1人ずつ出る年配の女性たちによって執り行われる。(※解説は選択当時のものをもとにしています
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
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国崎のノット正月
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国崎のノット正月
解説文
この行事は、鳥羽市国崎町で、正月の終わりの日とされる1月17日に、家内安全や海上安全、豊漁などを祈願して、正月の神を藁製の船に乗せて送り出す行事である。町内会役員が用具類や会場となる浜の準備をするほかは、各家から1人ずつ出る年配の女性たちによって執り行われる。(※解説は選択当時のものをもとにしています
詳細解説▶
詳細解説
国崎のノット正月は、三重県鳥羽市国崎町で、正月の終わりの日とされる1月17日に、家内安全や海上安全、豊漁などを祈願して、正月の神を藁製の船に乗せて送り出す行事である。町内会役員が用具類や会場となる浜の準備をするほかは、各家から1人ずつ出る年配の女性たちによって執り行われているものである。 各家では、行事当日までに、主人が中心となってツメの札と呼ぶ木札と藁1把、供物、おひねり、御神酒を用意する。ツメの札は、長さ15㎝、幅3㎝ほどの杉の板で、表と裏に呪文や魔除けの印であるドーマンセーマンを墨書し、下部を尖らせたものである。これは魔除けとして10枚前後作られる。近年は、厚紙にインクで書いたツメの札も増えてきている。 供物は、小豆飯、ニンジンとダイコンのなますである。おひねりは、小銭13円あるいは130円と洗米、小豆を、鏡餅の下に敷いた半紙で包んだものである。この供物とおひねりは、カミノゼン(神の膳)と呼ぶ20㎝四方の白木の盆に載せる。 行事当日、昼過ぎになると、女性たちはツメの札、藁、カミノゼン、御神酒を持って集落の南東側に位置するマエノハマ(前の浜)と呼ぶ浜にめいめいに集まってくる。彼女たちは、浜に着くとまず、町内会の用意した、洗米の入ったオケにおひねりの中身をすべて開けた後、ツメの札をオケの中の洗米に浸す。次いで、ツメの札を波打ち際に差し立て、その前に直径10㎝ほどの平らな石を置き、石の上に小豆飯となます、御神酒を供え、海に向かって祈る。これは海の彼方の竜宮様に家内安全や海上安全を祈っているともいわれる。これが済むと、他の女性たちがマエノハマにやってくるまで、雑談などをしながらめいめいにおひねりの半紙で紙縒を作る。 やがて女性たちがみな集まると、持ち寄った藁で長さ180㎝ほどの船を一艘作り始める。この船はサイトクマル(歳徳丸)と呼ばれ、「歳徳丸」と墨書したハタ(旗)と呼ばれる半紙をつけた長さ80㎝ほどの竹の棒を船首付近に立てる。また、長さ80㎝ほどの幣束と、帆柱として長さ150㎝ほどの竹の棒も立てる。各自で作った紙縒は、つなぎ合わせて帆柱の上端から船首や船尾に帆綱として張り渡す。最後に、30㎝ほどの藁人形を1体作り、船頭として帆柱にくくりつける。この人形をショウガツドノ(正月殿)と呼ぶ人もいる。この船作りに参加すると大漁に恵まれるとされており、女性たちの中でも特に海女たちが携わることが多い。 船が完成すると、船に、カミノゼンに残っていた小豆飯となます、御神酒をすべて供え、ツメの札を各自1枚ずつ差し立てる。この時、船をさわった手で体の悪い部分をさわって無病息災を祈願する人もいる。全員が供え終わると、町内会役員による鉦を合図として、船に火をつけて海に流す。最後に、町内会の用意した御神酒を飲んで行事は終わる。 なお、女性たちは帰宅すると、余ったツメの札を各家の神棚や玄関先などに魔除けとして供える。その後、玄関先などに飾った正月飾りを持って再びめいめいに浜にやってきて、正月飾りを燃やして正月を終わりとする。 この行事は、正月の終わりに、正月の神である歳徳神を送り出す行事である。我が国の正月行事には、年神、歳徳神などと呼ばれる正月の神を送り出すことで家内安全や無病息災などを祈願するという性格があり、この行事は、我が国の正月行事を考える上で注目されるものである。 また、女性が中心となって執り行われるという点、正月の神を船に乗せて送り出すという点は、周辺地域に類例がみられないだけでなく、全国的にも類例が少ないといえ、地域的特色の豊かな行事ともいえる。 しかし、一方で、行事の行われるマエノハマの一部で昭和50年代に護岸工事が行われ、ツメの札も木製から紙製に変わりつつあり、過疎化や高齢化で行事に参加する女性も減少しつつあるなど、衰退・変貌のおそれが高いことから、早急に記録を作成する必要がある。 (※解説は選択当時のものをもとにしています)