国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
南国市後川流域のエンコウ祭
ふりがな
:
なんこくしうしろがわりゅういきのえんこうまつり
南国市後川流域のエンコウ祭
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
祭礼(信仰)
その他参考となるべき事項
:
公開日:毎年6月第一土曜日(※選択当時・お出掛けの際は該当する市町村教育委員会などにご確認ください)
選択番号
:
選択年月日
:
2011.03.09(平成23.03.09)
追加年月日
:
選択基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
高知県
所在地
:
南国市
保護団体名
:
特定せず
南国市後川流域のエンコウ祭
解説文:
詳細解説
この行事は、夏の水遊びが始まる前に子どもたちが、エンコウと呼ばれる妖怪を祀って水難防止を祈願する行事で、高知県中央部に位置する南国市の南部を流れる後川流域の3つの地区の10の組に伝承されているものである。エンコウとは河童に類した妖怪のことで、子どもが主体となって川端に小さな祭壇を作って供え物をする。(※解説は選択当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
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南国市後川流域のエンコウ祭
南国市後川流域のエンコウ祭
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南国市後川流域のエンコウ祭
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南国市後川流域のエンコウ祭
解説文
この行事は、夏の水遊びが始まる前に子どもたちが、エンコウと呼ばれる妖怪を祀って水難防止を祈願する行事で、高知県中央部に位置する南国市の南部を流れる後川流域の3つの地区の10の組に伝承されているものである。エンコウとは河童に類した妖怪のことで、子どもが主体となって川端に小さな祭壇を作って供え物をする。(※解説は選択当時のものをもとにしています)
詳細解説▶
詳細解説
南国市後川流域のエンコウ祭は、夏の水遊びが始まる前に子どもたちが、エンコウと呼ばれる妖怪を祀って水難防止を祈願する行事で、高知県中央部に位置する南国市の南部を流れる後川流域の3つの地区の10の組に伝承されているものである。10の組は、前浜地区の西組、中組、寺家組、東組、浜窪、里組、下島地区の下島浜、久枝地区の西組、中組、東組である。なお、このほか前浜地区に久保組、下島地区に下島里があるが、少子化のため、久保組は平成13年、下島里は同20年に行事を中止している。 この行事で祀られるエンコウとは、シバテンとともに、高知県では河童に似た妖怪の一種とされており、高知県内にはエンコウが川の中に馬を引きずり込もうとした話やエンコウが大人に相撲を挑んだ話など、エンコウにまつわる話が数多く伝承されている。 この行事は、小学1年生から中学3年生までの子どもたちによって執り行われる。かつては男子だけで行われていたが、少子化のため、どの組も20年ほど前より女子も参加するようになった。子どもたちは、タイショウ(大将)と呼ばれる最年長者の指示に従いながら行事の準備から執行、後片付けまでを行う。 まず行事の数日前、子どもたちは各家をまわってお金を集める。子どもたちはこのお金で花火を買ったり、当日の供物を用意したりする。 当日早朝、エンコウが住んでいるとされる川を清掃して川岸に生えているショウブを刈り取る。 昼になると、ショウブを洗い、橋のたもとに、木や竹を骨組みにしてショウブで葺いた、高さ1㍍、幅50㎝ほどの小屋を作る。この小屋は、ショウブゴヤ(菖蒲小屋)、オヤシロ(御社)などと呼ばれ、かつては川岸に作られていたが、昭和50年代に護岸工事が行われた後は、橋のたもとに作られるようになった。小屋の脇には提灯を吊す。小屋の屋根の形には、平らにしたものや上部を結んで円錐形にしたものなどがあるが、組ごとに異なるだけでなく、その年の大将の指示によっても異なり一定していない。また、同時に川幅いっぱいに綱を張って提灯を吊り下げる。エンコウは明るいものを喜ぶとされ、提灯はできるだけたくさん吊す。 夕方になると、子どもたちは食事をとってから再び小屋の前に集合する。そして、提灯に明かりを灯し、小屋にキュウリとタコの酢の物や御神酒、ナスやトマトなどの夏野菜を供えてから、橋の上で花火を楽しむ。やがて辺りが暗くなると、大人たちがめいめいに小屋にきて、供物を食べて御神酒を飲んでお参りしていく。 花火がなくなると行事は終了となるが、このうち前浜地区の浜窪は最後に児童公園に移動して子ども相撲を行う。また、下島浜と久枝地区の三つの組では、エンコウの川流れと称して、提灯の蓋に蝋燭を灯して川に流し、子どもたちは全員で「エンコウの川流れ」と大声で繰り返し唱える。流す蓋の数は、かつては大将の人数分であったが、現在は3つほどである。明かりが見えなくなるまで見送るが、途中で木などに引っかかると良くないという。 翌日は、他の組の者に小屋を壊されると良くないといって、できるだけ早くに小屋を解体して、ショウブを川に流す。 この行事は、子どもたちがエンコウと呼ばれる妖怪の一種を祀って水難防止を祈願する行事である。エンコウは、河童に似た妖怪といわれているが、水神の化身と考えられ、この行事には、本格的な夏を前にして水神に安全を祈願するだけでなく、災厄を払おうとする要素も見受けられ、我が国の水に対する民間信仰を考える上で注目されるものである。また、子どもたちが大将と呼ぶ最年長者を中心とした年齢階梯的な組織のもと、行事の準備から後片付けまでを執り行っている点で地域的特色も豊かである。 この行事のようにエンコウに水難防止を祈願する行事は、高知県下では物部川水系を中心として6月中旬頃に盛んに行われていたことが知られている。しかし、社会構造の変化や少子化などによりほとんどが衰滅しており、今日では南国市の後川流域に伝承されるのみとなっている。さらに、この行事についても、少子化により参加者が減少しており、近隣の2つの組も数年前より中止しているなど、行事の衰退・変貌のおそれが極めて高いことから、早急に記録を作成する必要がある。 (※解説は選択当時のものをもとにしています)