国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
西之表の種子鋏製作技術
ふりがな
:
にしのおもてのたねばさみせいさくぎじゅつ
西之表の種子鋏製作技術
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種別1
:
民俗技術
種別2
:
生産・生業
その他参考となるべき事項
:
選択番号
:
選択年月日
:
2012.03.08(平成24.03.08)
追加年月日
:
選択基準1
:
(三)地域的特色を示すもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
鹿児島県
所在地
:
保護団体名
:
種子鋏製作技術保存会
西之表の種子鋏製作技術
解説文:
詳細解説
本件は、布を切るための裁ち鋏や切り花用の鋏など、支点が持ち手と刃の中間に位置する中間支点式の鋏を製作する技術である。製作工程は、細かく分けると30工程以上にもなるが、大きくは、軟鉄の棒を粗作りするタードリ、刃に鋼をつけるワカシツケ、全体を成形するアラヅクリ、刃に微妙なひねりをつけるナラシ、持ち手を作るウデマゲ、かみ合う2枚の刃を同じ強度にするヤキイレ・ヤキモドシ、刃の湾曲を微調整するタメシ、2枚の刃を組み合わせて鋏にするカッテなどの工程からなる。刃を同じ強度にし、絶妙なかみ合わせとするには独特の用具と熟練した技術が必要である。
(※解説は指定当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
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西之表の種子鋏製作技術
西之表の種子鋏製作技術
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西之表の種子鋏製作技術
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西之表の種子鋏製作技術
解説文
本件は、布を切るための裁ち鋏や切り花用の鋏など、支点が持ち手と刃の中間に位置する中間支点式の鋏を製作する技術である。製作工程は、細かく分けると30工程以上にもなるが、大きくは、軟鉄の棒を粗作りするタードリ、刃に鋼をつけるワカシツケ、全体を成形するアラヅクリ、刃に微妙なひねりをつけるナラシ、持ち手を作るウデマゲ、かみ合う2枚の刃を同じ強度にするヤキイレ・ヤキモドシ、刃の湾曲を微調整するタメシ、2枚の刃を組み合わせて鋏にするカッテなどの工程からなる。刃を同じ強度にし、絶妙なかみ合わせとするには独特の用具と熟練した技術が必要である。 (※解説は指定当時のものをもとにしています)
詳細解説▶
詳細解説
西之表の種子鋏製作技術は、布を切るための裁ち鋏や切り花用の鋏などを製作する技術で、種子島の北部に位置する西之表市の中心部、中世に種子島氏の居城があった旧赤尾木城下に伝承されてきた。 我が国で用いられてきた鋏には、持ち手が支点と刃の中間に位置する元支点式の鋏と支点が持ち手と刃の中間に位置する中間支点式の鋏があり、本件は、後者の鋏を製作する技術である。この技術は、室町時代の鉄砲伝来の際、ポルトガル船に同乗していた明の鋏鍛冶により伝えられたものといわれている。種子島では古くから良質な砂鉄を産したことが知られており、その砂鉄を利用して刀鍛冶などの刃物鍛冶の技術も早くから発達させていたため、鋏製作の技術も容易に受け入れることができたといわれている。その後、江戸時代には鉄砲鍛冶や刀鍛冶の副業として、明治時代以降は種子島の刃物鍛冶の本業として伝承されてきた。 種子鋏は、「切るたびに磨く」といわれるように、使えば使うほど切れ味も耐久性も増す鋏として重宝されてきた。「種子鋏」の名は、明治23年の内国勧業博覧会への出品を機に広く知られるようになり、大正14年に種子鋏同業組合が組織されると、その製作量も飛躍的に伸び、最盛期の昭和10年には年産170,000本を記録し、その販路も西日本を中心とした日本全国のみならず、遠く朝鮮半島や満州まで及んだ。 その製作は、細かく分けると30以上の工程を数えるとされるが、大きくは、軟(なん)鉄(てつ)の棒を粗作りするタードリ(鍛取)、刃に鋼(はがね)をつけるワカシツケ、全体を成形するアラヅクリ(粗作)、刃に微妙なひねりをつけるナラシ、持ち手を作るウデマゲ(腕曲)、かみ合う二つの刃の強度を同じにするヤキイレ(焼入)とヤキモドシ(焼戻)、刃の湾曲を微調整するタメシ、二つの刃を組み合わせて鋏にするカッテという七工程からなり、全行程を一人の職人がほとんど勘だけで行う。 タードリでは、鋏の大きさに合わせて切断した鉄の棒を火床で加熱した後、持ち手になる部分と刃になる部分とを段差をつけて鍛造する。続くワカシツケでは、刃になる部分に、ホウ酸と鉄粉を混ぜた鍛接剤(たんせつざい)を散布して鋼をのせて火床で加熱する。加熱色をみながら適当なところで金(かな)床(どこ)にすばやく移動して金槌で叩いて鍛接する。この工程で刃の切れ味が決まるため、鋼が刃先までまんべんなく行き渡るように、また鋼が刃をきれいに巻き込むように鍛接する。続くアラヅクリでは、火床での加熱と鍛造を繰り返しながら刃と持ち手を成形していく。最後に金床に水を敷いて水打ちと呼ぶ鍛造を行って表面を滑らかにする。この後、いったん冷ましてからナラシに入る。ナラシでは、アラヅクリしたものを金床に置いて金槌で叩いたり、クリネギと呼ばれる木製の用具を使ったりして刃に微妙な湾曲やねじれをつけていく。通常、このナラシまでを一連で行って、ある程度作り貯めておく。 次に、ナラシまで終えたものから相性がいいと思われるものどうしを選んで組にしてポンチで目印をつけ、支点となる部分を決めて目釘を差し込むための穴をあける。続いてウデマゲに入る。ミナジリと呼ぶ小さな粒状のものを持ち手の先端に金槌で叩いて作り、これを腕(うで)曲(ま)げ型(がた)という鉄製の型に固定して力尽くで曲げ、金槌で成形して指を入れる部分を作る。ヤキイレとヤキモドシは、鋏が二つの刃を擦り合わせるものであることから、二つの刃を全く同じ強度に仕上げる作業で、鋏の切れ味としなやかさ、耐久性を決定づける工程である。刃に焼(や)き刃(ば)土(づち)と称する粘土を塗布して加熱し、火床から出すとすばやく水槽に投入し、次いで再び火床で加熱し、その後水をかけて冷却する。この冷却のタイミングが、刃の強度を決定づけることとなり、加熱色をみながら勘だけで判断する。次のタメシでは、2枚の刃を組み合わせながら、クリネギで刃の湾曲を微調整する。最後にカッテと称して、2 つのパーツを目釘で組み合わせて1組の鋏に仕上げる。このとき二枚の刃が快適にすり合うように調整しながら組み合わせる。本件は、西之表市に伝承されてきた種子鋏と呼ばれる中間支点式の鋏を製作する技術である。良質な砂鉄の産地であり、地域的にも島外との文化的交流が盛んであったこの地域に特有の技術であり、2つの刃の絶妙なかみ合わせを生み出すための熟練を要する技術を伝えており、我が国の刃物鍛冶の技術を知る上で注目されるが、詳細な記録が作成されていないことから、早急に記録を作成する必要がある。 (※解説は選択当時のものをもとにしています)