国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
八代・芦北の七夕綱
ふりがな
:
やつしろ・あしきたのたなばたづな
八代・芦北の七夕綱
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
年中行事
その他参考となるべき事項
:
公開日:毎年8月6日(※選択当時・お出掛けの際は該当する市町村教育委員会などにご確認ください)
選択番号
:
選択年月日
:
2015.03.02(平成27.03.02)
追加年月日
:
選択基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
熊本県
所在地
:
保護団体名
:
八代七夕綱保存会、芦北町七夕綱保存会
八代・芦北の七夕綱
解説文:
詳細解説
本件は、熊本県の八代市と芦北町に伝承される七夕行事で、集落の入口などに綱を張り、藁製の人形や履物、農具などの藁細工を吊るすものである。綱は、長い一本綱で、集落を流れる川を挟んで張られる場合が多く、七夕様(牽牛・織女)が綱を伝わって会う、綱を張ることで集落内に悪霊や疫病などが侵入するのを防ぐ、盆の精霊(先祖の霊)が綱を渡ってやって来るなどの伝承がある。また、綱の切れ具合によって、農作物の出来を占うことも行われてきた。(解説は選択当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
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八代・芦北の七夕綱
八代・芦北の七夕綱
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八代・芦北の七夕綱
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八代・芦北の七夕綱
解説文
本件は、熊本県の八代市と芦北町に伝承される七夕行事で、集落の入口などに綱を張り、藁製の人形や履物、農具などの藁細工を吊るすものである。綱は、長い一本綱で、集落を流れる川を挟んで張られる場合が多く、七夕様(牽牛・織女)が綱を伝わって会う、綱を張ることで集落内に悪霊や疫病などが侵入するのを防ぐ、盆の精霊(先祖の霊)が綱を渡ってやって来るなどの伝承がある。また、綱の切れ具合によって、農作物の出来を占うことも行われてきた。(解説は選択当時のものをもとにしています)
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詳細解説
八代・芦北の七夕綱は、熊本県の八代市と芦北町に伝承される七夕行事で、集落の入口などに綱を張り、藁製の人形や履物、農具などの藁細工を吊るすものである。綱は、長い一本綱で、集落を流れる川を挟んで張られる場合が多い。行事の名称は、七夕綱のほか、七夕の綱張りや七夕飾りなどがあり、地域によって必ずしも同一ではないが、綱を張ることが行事の目的となっている点は共通する。七夕に合わせて綱を張ることの意味については、七夕様(牽牛・織女)が綱を伝わって会う、集落内に悪霊や疫病などが侵入するのを防ぐ、盆の精霊が綱を渡ってやって来るなどの伝承がある。 熊本県内において、このような綱を張る形態の七夕行事は、県南部の旧八代郡と葦北郡の山間部を中心に分布し、かつては30か所以上の地域で行われていたが、八代市坂本町の木々子、芦北町の上原、岩屋川内、下白木、祝坂の5つの地区に伝承されるのみとなっている。綱は七夕の前日に張るものとされ、かつては旧暦7月7日の前日に行われていたが、現在は、新暦で8月7日の前日となる6日に行われている。また、綱は七夕前日の夜に張るものであったとも伝えられるが、現在は、日中に綱張りをする事例が多い。 八代市の木々子地区では、8月6日朝から地区の人たちが集落の高台にある地蔵堂に集まり、綱や綱に吊り下げる藁細工の製作を行う。各自が持ち寄った藁を小槌で叩いて柔らかくしてから、30mほどの長さの綱を綯うとともに、草鞋や足中、牛の沓、七夕様の人形をのせた舟、馬、蛸、扇、鶴亀のほか、ホテあるいはヒュータマゴなどと呼ばれ、卵型の藁玉を数個連結した稲の害虫駆除用の農具を作る。これらが完成すると、集落の入口となる一ノ瀬橋まで運び、各種の藁細工を綱に取り付けてから、中谷川を挟んで空高く張り渡す。現在は、一ノ瀬橋の袂にある公民館脇の電柱から対岸の電柱の間に綱を張っている。かつては、中谷川を挟んで山の中腹から中腹へと張っており、綱の長さも100m以上はあったという。綱を張るのは、悪疫の侵入を防ぐため、年に一度七夕の夜に七夕様がこの綱を伝わって出会うため、などと伝えられている。綱は、八朔までそのままの状態で張り続けられる。下した綱は、かつては中谷川に流していたが、現在は焼却している。 芦北町の下白木地区では、8月6日夕方から地区の人たちが材料となる藁を持って公民館に集まり、準備作業を行う。綱は40mほど綯い、草鞋や足中、牛の沓、農作業の様子を表した人形、馬、蛸、七夕の文字などを作る。これらの藁細工は、下手でもよく、わざと雑に作るものともいわれている。作業が終わると、暗がりの中、集落内を流れる天月川を挟んで、袂付近の電柱と電柱の間に綱を張り渡す。下白木地区でも、七夕様の出会いや五穀豊穣の祈願が綱に纏わる伝承として聞かれ、かつては、木々子地区と同様に山腹から山腹へと張り、綱の長さも現在の約3倍はあったという。綱は、盆が終わるまで張っておき、8月16日夕方に外して天月川に流す。芦北町の上原、岩屋川内、祝坂の各地区でもほぼ同様に綱を張るが、いずれも日中に行っている。上原では集落中央の広場に、岩屋川内と祝坂では川を挟んで綱を張る。後者の2地区では、各種の藁細工のほかに、七夕や天の川の文字、地区名や農作物の名を藁で作って吊り下げている。 なお、現在は行事が行われていないが、八代市坂本町の瀬戸石地区では、綱が長く切れないでいると畑作がよい、芦北町の大尼田地区では、綱が長く張っていると風が吹いて稲が不作になるなどといわれていた。これらの伝承から、七夕綱には綱の切れ具合で農作物の豊凶を占う作占の性格もあったことがわかる。 (解説は選択当時のものをもとにしています)