国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
尾張西部の子供ザイレン
ふりがな
:
おわりせいぶのこどもざいれん
尾張西部の子供ザイレン
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
年中行事
その他参考となるべき事項
:
毎年7月~8月(※選択当時・お出掛けの際は該当する市町村教育委員会などにご確認ください)
選択番号
:
選択年月日
:
2017.03.03(平成29.03.03)
追加年月日
:
選択基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
愛知県
所在地
:
保護団体名
:
特定せず
尾張西部の子供ザイレン
解説文:
詳細解説
本件は,愛知県の尾張地方の中でも,西部の木曽川下流域の地域を中心にみられ,水難防止や災厄除けを祈願して,7月から8月にかけて行われる。
ザイレンとは,祭礼の語の転訛とされ,子供ザイレンと呼ぶ地域が多いが,行事に際して作られる祠やその材料となる葭に因んで,オミヨシサンやオミコシサンなどと呼んでいる地域もある。
子供ザイレンは,小学生から中学生までの男子が行事の主体であり,近年は女子も参加するようになっているが,子供組や子供連中などと呼ばれる5歳から15歳までの男子の行事として伝えられてきた。オヤブンやオヤカタと呼ばれる年長の子供が指揮をとり,宿となる公民館などに数日前から集まって行事の準備をしたり,会食をしたりする。
行事の当日は,葭や藁,野菜などで作った天王様の祠や大蛇などを川の近くや神社の境内などに祀り,夜になると提灯トボシと称して,大きな柱を立てて提灯を山型に飾り,その下で花火などをして遊ぶ。
(※解説は選択当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
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尾張西部の子供ザイレン
尾張西部の子供ザイレン
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尾張西部の子供ザイレン
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尾張西部の子供ザイレン
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尾張西部の子供ザイレン
解説文
本件は,愛知県の尾張地方の中でも,西部の木曽川下流域の地域を中心にみられ,水難防止や災厄除けを祈願して,7月から8月にかけて行われる。 ザイレンとは,祭礼の語の転訛とされ,子供ザイレンと呼ぶ地域が多いが,行事に際して作られる祠やその材料となる葭に因んで,オミヨシサンやオミコシサンなどと呼んでいる地域もある。 子供ザイレンは,小学生から中学生までの男子が行事の主体であり,近年は女子も参加するようになっているが,子供組や子供連中などと呼ばれる5歳から15歳までの男子の行事として伝えられてきた。オヤブンやオヤカタと呼ばれる年長の子供が指揮をとり,宿となる公民館などに数日前から集まって行事の準備をしたり,会食をしたりする。 行事の当日は,葭や藁,野菜などで作った天王様の祠や大蛇などを川の近くや神社の境内などに祀り,夜になると提灯トボシと称して,大きな柱を立てて提灯を山型に飾り,その下で花火などをして遊ぶ。 (※解説は選択当時のものをもとにしています)
詳細解説▶
詳細解説
尾張西部の子供ザイレンは、愛知県の尾張地方に伝承されてきた、水神信仰や夏の疫病除けの天王信仰を基調とする子供たちによる夏の行事である。尾張地方の中でも、西側の愛西市やあま市、稲沢市、弥冨市など木曽川下流域の地域を中心に広くみられ、水難防止や災厄除けを祈願して7月から8月にかけて行われる。ザイレンとは、祭礼の語の転訛とされ、行事の名称は、子供ザイレンと呼ぶところが多いが、行事に際して作られる祠やその材料となる葭に因んで、オミヨシサン、オミコシサンなどと呼んでいる地域もある。 子供ザイレンは、小学生から中学生までの男子が行事の主体であり、近年は女子も参加するようになっているが、子供組や子供連中などと呼ばれる5歳から15歳までの男子の年齢集団の行事として伝えられてきた。子供組の中でも、オヤブンやオヤカタと呼ばれる年長者が指揮をとり、宿となる地区の公民館などに行事の数日前から一同が集まって行事の準備や費用集めをしたり、遊んだりして過ごす。かつては、年長の子供の家を宿とし、合宿と称して寝泊りも共にしていたという。また、長男が生まれた家では、子供組に仲間入りの寄付をしたり、新たに子供組に加入する子供は、提灯や玩具などを寄贈したりすることも慣例であった。 行事の当日は、水神様や天王様の祠、あるいは大蛇や龍神様などと呼ばれる蛇体を葭や藁などで作って、集落を流れる川の近くや神社の境内などに祀り、夜になると提灯トボシと称して大きな柱を立て、数多くの提灯を山型に連ねて飾り付け、その下で花火などをして遊ぶことがほぼ共通している。このときに年長の子供が花火の配布を差配し、線香花火や打ち上げ花火などあげる花火の種類が年齢階梯的に決まっているのも昔からのしきたりとされる。地区によっては、この日に、神社の境内に藁で土俵を作って子供相撲をしたり、寺の本堂で百万遍の数珠繰りをしたりする。また、津島市にあり、京都の八坂神社と並ぶ天王信仰の拠点である津島神社から御札を受けてきたり、毎年7月下旬に行われる同社の天王祭の日やその1週間後に行事の期日を定めていたりするなど、津島神社の祭祀の影響も少なからず窺われる。 愛西市小茂井町では、八幡社の近くを流れる小川の上に、天王様の小祠を葭で作って祀る。祠の四方には笹竹を高く配し、葭を十字に組んで中央に幣束を立てたものを中に置いて、キュウリや塩などの供物を供える。夜になると神社脇の広場で提灯トボシを行った後、子供たちが祠を解体して、近くを流れる鵜戸川まで運び、流し出す。かつては翌朝に、子供たちが祠の残骸が流れ着いた場所を泳ぎながら探したという。同市赤目町では、子供たちが天王様の木製の祠を川の近くに祀り、注連縄を巻いて色紙で作った紙垂を付けて飾る。 稲沢市平和町の東條地区では、藁や野菜、草花などで大蛇を作る。大蛇は杉の葉で囲った棚に載せて竹竿に吊るし、東西にある八幡社近くの用水路と用水路跡の2か所に立て、提灯を下げ、酒や塩、米を供える。同市の下三宅地区では、藁製の大蛇を杉の葉を敷いた棚に載せ、四方に提灯をつけ、集落を流れる三宅川に掛かるように竹竿の先に吊るす。かつては、子供たちが川に入り、無病息災を祈願して墨を互いの体につけあったという。また、今村地区では、龍神様を藁などで作って用水路上に棚を設けて祀り、集落内にある神社や小祠を回ってお参りした後、子供たちが水をかけ合う。 このように尾張地方に伝承されてきた子供ザイレンは、夏になると子供たちが大人の制約を受けず、自主的に行ってきたものであるが、現在は祠の製作をはじめ、行事の準備や運営を大人が主導するようになっており、地域の子供会のイベントとして再編されて行事内容が変化したり、行事そのものが失われたりした地域も多い。 (※解説は選択当時のものをもとにしています)