国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
霞ケ浦の帆引網漁の技術
ふりがな
:
かすみがうらのほびきあみりょうのぎじゅつ
霞ケ浦の帆引網漁の技術
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種別1
:
民俗技術
種別2
:
生産・生業
その他参考となるべき事項
:
選択番号
:
選択年月日
:
2018.03.08(平成30.03.08)
追加年月日
:
選択基準1
:
(三)地域的特色を示すもの
選択基準2
:
選択基準3
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所在都道府県、地域
:
茨城県
所在地
:
保護団体名
:
土浦帆曳船保存会,霞ケ浦帆引き船・帆引き網漁法保存会,行方市帆引き船保存会
霞ケ浦の帆引網漁の技術
解説文:
詳細解説
本件は,シラウオやワカサギを漁獲対象とするもので,現在では霞ケ浦沿岸に位置する茨城県土浦市,かすみがうら市,行方市等で見られる。明治13年(1880)地元住民の折本良平が考案したとされ,明治後年にはその技術が秋田県の八郎潟へ伝播したことが知られている。その後,昭和40年代前半になると,動力船によるトロール漁に取って代わり衰退していく中,昭和46年以降は観光資源としての活用に重きを置く形で継承が図られている。
その仕組みは,よく空に浮かぶ凧の原理になぞらえられる。網に対し,船体や帆桁から各種多数の綱が繋がっており,帆と網のバランスを瞬時に察知し,複数の綱を巧みに操ることで成り立つ漁法であって,この風読みを背景とした操作技術こそが最も熟練を要する。
(※解説は選択当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
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霞ケ浦の帆引網漁の技術
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霞ケ浦の帆引網漁の技術
解説文
本件は,シラウオやワカサギを漁獲対象とするもので,現在では霞ケ浦沿岸に位置する茨城県土浦市,かすみがうら市,行方市等で見られる。明治13年(1880)地元住民の折本良平が考案したとされ,明治後年にはその技術が秋田県の八郎潟へ伝播したことが知られている。その後,昭和40年代前半になると,動力船によるトロール漁に取って代わり衰退していく中,昭和46年以降は観光資源としての活用に重きを置く形で継承が図られている。 その仕組みは,よく空に浮かぶ凧の原理になぞらえられる。網に対し,船体や帆桁から各種多数の綱が繋がっており,帆と網のバランスを瞬時に察知し,複数の綱を巧みに操ることで成り立つ漁法であって,この風読みを背景とした操作技術こそが最も熟練を要する。 (※解説は選択当時のものをもとにしています)
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詳細解説
霞ケ浦の帆引網漁は、霞ケ浦沿岸に位置する茨城県土浦市、かすみがうら市、行方市などでみられ、シラウオやワカサギを対象とする漁撈技術である。比較的穏やかな湖上において、大きな帆で風を受け、その力を利用して船体自体を横滑りさせつつ進行し、袋状の網を曳いて漁獲する。 霞ケ浦は、茨城県南東部に展開する湖面積約220㎢の広大な内水面で、琵琶湖に次ぐ大きさとなる。水深は平均約4m、最大にして約7mとあって、さほど深くはない。湖底面は岩礁などもなく、なだらかである。浦と称するように、元来は海の入り江であり、砂州や河川堆積物によって流出口が閉ざされて形成された海跡湖である。 気候としては、太平洋岸気候区にあるため、夏は梅雨期と台風による降水が多いが、対して冬は晴天が多く降水量が少ない。周辺環境は、台地と低地が入り組みつつも、おおむね低平で、遙か北西に筑波山(標高877m)を望むばかりである。特に、当地では筑波おろしといって、冬場に山側から強い季節風が吹く。 本技術は、近世中期に大阪湾から各地へと伝播した打瀬網漁の発展形態と考えられ、明治13年(1880)地元住民の折本良平が考案したとされている。当時、霞ケ浦で主流となっていた大徳網漁など、既存漁法を凌ぐべく、漁獲量の加増はもちろん、素早く網を曳き、かつ2~3名といった、なるべく少人数で操業できるよう、工夫が施されている。明治18年頃からは帆引網漁によるシラウオ漁(上層曳き)が本格化し、同22年頃よりはワカサギ用(中層曳き)にも改良して、以来、霞ケ浦特有の漁法として定着していった。大正3年から昭和40年頃までの記録によると、シラウオ・ワカサギの漁獲量は、およそ年間2,000トン前後で推移しており、盛期には所狭しと900艘もの帆引船が湖上を行き交ったという。このことは、近代における水産加工業の発達と保存食としての佃煮や煮干などの需要が高まったことと無関係ではない。加えて、当該技術は明治後年に秋田県の八郎潟へ伝播したことが知られている。しかしながら、昭和42年に動力船によるトロール漁が解禁され、主役の交代をみて衰退していくなかで、昭和46年以後は観光資源として重きを置く形で、これまで継承が図られてきた。今は霞ケ浦の帆引網漁は、心象風景のひとつともなっている。 技術の特色は、帆に受ける風を読みながら、船を横方向に流して漁獲することにある。帆は大きなもので縦約9m、横約16mにもなる一枚帆で、風を受けては、およそ1㎞程度にわたって曳航する。帆引船の船底は、川船と海船の中間形態で、滑りやすいよう緩やかな傾斜角を持つ。また、網に対しては、船体および帆桁から各種多数の綱が繋げられており、折本考案の真髄はまさにこの綱にあるといってよい。船体(出し棒)からの出し縄と帆桁からの吊り縄によって網口を立体的に広げるとともに、帆に取り付く手綱を引くことで受ける風量を調節し、出し縄を手繰り寄せ、網にかかる水圧を変えることで船の向きや速度が変えられる。いわば、帆と網のバランスを瞬時に察知し、複数の綱を巧みに操る技術の組み合わせによって成り立った漁法であり、この操作技術こそが熟練を要する。 霞ケ浦の帆引網漁に係る漁法の原理は、よく空に浮かぶ凧になぞらえられる。風力(揚力と曳航力)と抗力(網の水圧)そして重力(船の重さ)、この3つの力がうまくかみ合ったとき、船は滑るようにして湖面を走って行くのである。 (※解説は選択当時のものをもとにしています)