国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
吉井のシシウチ行事
ふりがな
:
よしいのししうちぎょうじ
吉井のシシウチ行事
写真一覧▶
解説表示▶
種別1
:
風俗慣習
種別2
:
年中行事
その他参考となるべき事項
:
公開日:毎年12月12日ほか(※選択当時・お出掛けの際は該当する市町村教育委員会などにご確認ください)
選択番号
:
選択年月日
:
2018.03.08(平成30.03.08)
追加年月日
:
選択基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
長崎県
所在地
:
保護団体名
:
特定せず
吉井のシシウチ行事
解説文:
詳細解説
吉井町の各所では,毎年12月になるとシシウチといって,翌年1年間,猪等の害獣に作物が荒らされないよう,豊作を願う行事が伝えられている。
例えば、吉井町乙石尾では,12月12日の午前中,戸主らが山中と集落の境界に位置する山の神のオコクラに集まり,神主による所定の儀式があったのち,入れ代わり立ち代わりして,猪に見立ててシトギ餅で拵えたシシに向かって,次々と矢を放っていく。当たれば運に恵まれるなどという。終わると,仕留めたシシをちぎっては丸め,シシ肉と称して焚火であぶり,御神酒を戴きつつ,皆で焼いて食べる。以後は公民館に場を移し直会となって,この行事は終了する。
(※解説は選択当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
写真一覧
吉井のシシウチ行事
吉井のシシウチ行事
写真一覧
吉井のシシウチ行事
写真一覧
吉井のシシウチ行事
解説文
吉井町の各所では,毎年12月になるとシシウチといって,翌年1年間,猪等の害獣に作物が荒らされないよう,豊作を願う行事が伝えられている。 例えば、吉井町乙石尾では,12月12日の午前中,戸主らが山中と集落の境界に位置する山の神のオコクラに集まり,神主による所定の儀式があったのち,入れ代わり立ち代わりして,猪に見立ててシトギ餅で拵えたシシに向かって,次々と矢を放っていく。当たれば運に恵まれるなどという。終わると,仕留めたシシをちぎっては丸め,シシ肉と称して焚火であぶり,御神酒を戴きつつ,皆で焼いて食べる。以後は公民館に場を移し直会となって,この行事は終了する。 (※解説は選択当時のものをもとにしています)
詳細解説▶
詳細解説
吉井のシシウチは、長崎県佐世保市吉井町の所々でみられるもので、狩猟的所作を模倣し儀礼化した行事である。いずれも年の暮れとなる12月の所定の日に行われる。 吉井は、市の北部、北松浦半島の内陸にあって、佐々川の中流域に位置する。平成17年に佐世保市編入を迎えるまでは、北松浦郡吉井町として存在し、当県では珍しく海岸線をもたない自治体でもあった。中央には標高301mの牧の岳が東西に連なり、その南北に展開した谷合いの僅かな平地と丘陵、そして山地からなる中山間地域である。明治期以降は北松炭田の一翼を担って石炭産出で栄えたが、エネルギー革命の余波を受け、昭和40年代に諸鉱山は相次いで閉山を迎えた。その後はイチゴやメロンなどの施設園芸を中心とする複合農業が盛んとなっている。 吉井のシシウチ行事については、これまで数例の現行事例が確認されている。地区の年間行事のひとつとして、それぞれに伝承しているもので、基本的には山の神を祀る行事だといわれている。各所では、ムラとヤマとの境界に山の神の小祠を設けるが、これをオコクラと呼び、この前で行うことが専らである。行事のあり方としては、シシウチと称し、おおむね米粉で拵えたイノシシを的とし、作り物の弓矢で射つということをする。シシウチは、他にセドの祭りと呼ばれることもあるが、セドとは家屋の裏木戸や裏口のことで、この場合、ムラの裏手から悪いものが入ってこないよう、来る新年に向け、あらかじめ災いを祓っておくという意味がある。実際、当地ではその地理的自然的環境上、イノシシに農作物を荒らされることはしばしばで、担い手の多くは害獣防除を願う行事のひとつとして認識している。 乙石尾地区では、毎年12月12日をその日と定め、シシウチを行っている。早朝より戸主らは公民館にいったん集まって、米や塩、赤飯、御神酒などの供物のほか、篠竹で作った弓矢(弓1つ、矢2本)とシシ(1つ)を用意したのち、午前10時頃には山の神のオコクラへと移動する。シシは2升(3㎏)分の粳の米粉を湯水で練ったもので、これを地元ではシトギと呼んでいる。シシには、椿の葉を耳とし、その枝を牙、南天を目として付すが、これは一年交代の輪番制で当番宅が受け持つことになっている。オコクラに到着すると、供物を供え、注連縄を張ったり、焚火を起こすなどして準備をはじめる。 行事の準備が整うと、午前11時頃よりオコクラの前で神主による祝詞奏上などがある。そしてこれが終わると、まずは神主がシシに向かって矢を1本放つ。次いで順次、戸主らが入れ代わり立ち代わり、1本ずつ射っていく。当たれば運に恵まれるなどともいうが、なかなか当たらない。最後は、矢を突き刺し、当たったということで終了となる。この後は、仕留めたシシをちぎって丸めて伸し、シシ肉と称し、皆で焚火で炙って食べ、御神酒を戴きつつ、しばらくは四方山話に花を咲かせる。かくして、12時前には再び公民館に戻り、直会となって行事は終わる。シシウチ行事は、これと同様にして、隣接する橋川内や橋口地区等々でも実施されている。 (※解説は選択当時のものをもとにしています)