国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
北部九州の盆綱
ふりがな
:
ほくぶきゅうしゅうのぼんつな
北部九州の盆綱(福岡県)
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
年中行事
その他参考となるべき事項
:
公開期日:毎年8月中旬(※選択当時:お出かけの際は該当の市町村教育委員会にお問い合わせください)
選択番号
:
選択年月日
:
2019.03.28(平成31.03.28)
追加年月日
:
選択基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
福岡県
所在地
:
保護団体名
:
特定せず
北部九州の盆綱(福岡県)
解説文:
詳細解説
北部九州の盆綱は,福岡県や佐賀県にわたって広く分布する盆の綱引き行事で,その多くは子供たちの行事として伝承されている。稲藁などで綯(な)った綱を曳いて地区内を巡ったり,綱を引き合ったりすることで,精霊などを慰め,あるいは送るものと伝えている。
行事の期日は,8月14日や15日,あるいは16日とするなど地域差があるが,いずれも盆中に行われる。盆が近づくと,各地では綱の製作の準備がはじまる。綱の素材は,稲藁やカズラ,マコモなどで,三つ編み状に綯われ,曳き手のために手綱を付す地域もある。近年は,大人が手助けしているところが多くなっている。作られた綱は,龍や蛇を模したものとされ,水神信仰との関係もうかがわれる。
行事の当日は,子供たちが綱を曳いて地区内を巡ったり,綱を引き合ったりし,その後で,地域によっては,使用した綱を土俵にして相撲を取ったりもする。綱を曳いての道行きでは,子供たちは沿道の家々から菓子や祝儀をもらうことも多い。行事が終わると,使用した綱を村境に捨てたり,海に流したりする。
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
写真一覧
北部九州の盆綱(福岡県)
北部九州の盆綱(佐賀県)
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北部九州の盆綱(福岡県)
写真一覧
北部九州の盆綱(佐賀県)
解説文
北部九州の盆綱は,福岡県や佐賀県にわたって広く分布する盆の綱引き行事で,その多くは子供たちの行事として伝承されている。稲藁などで綯(な)った綱を曳いて地区内を巡ったり,綱を引き合ったりすることで,精霊などを慰め,あるいは送るものと伝えている。 行事の期日は,8月14日や15日,あるいは16日とするなど地域差があるが,いずれも盆中に行われる。盆が近づくと,各地では綱の製作の準備がはじまる。綱の素材は,稲藁やカズラ,マコモなどで,三つ編み状に綯われ,曳き手のために手綱を付す地域もある。近年は,大人が手助けしているところが多くなっている。作られた綱は,龍や蛇を模したものとされ,水神信仰との関係もうかがわれる。 行事の当日は,子供たちが綱を曳いて地区内を巡ったり,綱を引き合ったりし,その後で,地域によっては,使用した綱を土俵にして相撲を取ったりもする。綱を曳いての道行きでは,子供たちは沿道の家々から菓子や祝儀をもらうことも多い。行事が終わると,使用した綱を村境に捨てたり,海に流したりする。
詳細解説▶
詳細解説
北部九州の盆綱は、盆の期間中に行われる行事の1つで、福岡県や佐賀県にわたって広く分布する。多くは子どもたちによる行事となっており、稲藁などで綯った綱を曳いて地区内を巡ったり、綱を引き合ったりすることで、精霊などを慰め、あるいは送るものと伝えている。 一般に、盆行事では、火あかりをもって祖霊の迎えや送りをすることがもっぱらであり、そのバリエーションとして、燈火や灯籠をモチーフとしたある種の祭礼行事を伝承しているところは少なくない。その一方で、盆行事には本件のように龍や蛇に見立てた綱を用いる要素も散見され、なかでも盆綱あるいは盆綱曳きなどと称した行事は、ことに九州と関東に顕著である。 盆が近づくと、各地では綱の準備をはじめる。素材は主として稲藁で、三つ編み状に綯うが、場合によっては曳き手のために、手綱を付すというところもある。ただ、実際は大人が担ったり、手助けしていることが多い。また、素材については、カズラ(藤蔓)やマコモとする例も少なからず認められる。こうして作られた綱は、おおむね龍や蛇を模したものとされており、水神信仰的な性格も垣間みられる。行事の概要としては、大人の支援があるにせよ、主として子どもたちが担い手の中心となっており、綱を曳いて地域を巡ったり、綱を引き合うなどしたのち、ところによっては用いた綱を土俵にして相撲をとったりもする。地区内の道行きでは、菓子や祝儀をもらい集めることが多く、終わると綱は村境に捨てたり、海に流すなどして処分し、皆して頂きものを分かち合って散会となる。日にちとしては、8月14日や15日、あるいは16日とするところもあって一様ではないが、その日の午前中や午後など、半日ないし数時間ほどで終えるところが多い。 たとえば、福岡県筑後市久富では、盆綱曳きと称し、毎年8月14日の午前中に実施している。この日の早朝、大人たちはマコモで長さ20mほどの綱を綯うが、そのかたわら子どもたちは全身に煤を塗り、腰蓑や角と称した輪冠を身につけ、小鬼に扮して準備をする。午前10時を目安に熊野神社を出発し、所定の道順に従って「ワッショイ、ワッショイ」と掛け声を発しながら、綱を曳いていく。途中休憩も挟みつつ、天神社の祀堂にも立ち寄って「足踏み」をしたのち、再び神社へと戻ってくる。この行事には創始の伝説もともなうが、その意味合いとして、地獄に落ちた亡者を盆の間だけでも綱で引き上げ、慰めようとするもの、と伝えているのは注目され、行事そのものも施餓鬼の一環と捉えている。先の足踏みというのも、地獄に落ちた人びとの目を覚まさせ、救ってやるために行うのだとされている。 また、佐賀県玄海町値賀川内では、盆綱曳きと称し、毎年8月15日の早朝に実施している。綱は前日の午前中に大人も手伝って、稲藁を用いて10mほどに綯っておく。当日は白山神社に集合し「ヨーイ、ヨーイ、ヨイヤサ」の掛け声とともに、社前で綱を引き合うことからはじめ、以後は皆して綱を持って上から下へと集落を縦断していく。引くにあたっては、上・下の地区割りにしたがって子どもたちは二分される。道行きでは、橋の袂など数カ所ある所定の場所でとどまりつつ、同様にして順次綱の引き合いがある。こうして、最後の綱引きが終わると、綱を川の水に浸したのち小山に捨ててくる。以前は綱をとぐろ状に巻き、海を泳いで引いていき沖へと流していた。これには、ホトケさんが綱に乗って帰られるとの伝承があり、注目される。そのため、海に流す際は途中で戻されないよう難儀したといい、確実に沖へ流しきることが第一とされていた。(解説は選択当時のものです)