国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
山中のお改めとシシ狩り行事
ふりがな
:
やまなかのおあらためとししかりぎょうじ
〇お改め
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
年中行事
その他参考となるべき事項
:
公開期日:毎年旧暦3月13日に近い日曜日(選択当時:お出かけの際は該当の市町村教育委員会にお問い合わせください)
選択番号
:
628
選択年月日
:
2020.03.16(令和2.03.16)
追加年月日
:
選択基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
島根県
所在地
:
保護団体名
:
山中地区
〇お改め
解説文:
詳細解説
山中の「お改め」と「シシ狩り」は、2つの祭事を一連の予祝行事として伝承したものである。前者は、御神体とする米の状態を検分するというもので、稲には神霊が宿るとする、稲霊の信仰を彷彿とさせる。後者は、シシ(猪や鹿など)に見立てた餅を弓で射つというもので、田畑を荒らす害獣の防除を願う行事であり、他に類例も少なく注目される。
「お改め」では、お筥に納められている米を、山中八幡神社裏手の小高い山の上にある、甘ノ宮と称する小社から下げてきて、榊の葉を咥えつつ、神職と宮総代だけで秘かに検分する。米の色艶や虫の付き具合をみるもので、後段の「シシ狩り」が終わった直後に、神主より「虫がたくさん付いていたので、今年は雨が多い」などと、その年の占い事として報告される。
「シシ狩り」は、猪や鹿などに作物を荒らされないよう、その年の豊作を祈願する予祝的な行事で、シシと称して獣に見立てたシトギ餅に向かって、氏子らが順次矢を放っていく。当たれば豊作だなどともいうが、なかなか上手くはいかず、次第に笑い声も高まっていく。最後には料理するとして、シシ肉を分け、人々に配られる。
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
写真一覧
〇お改め
〇シシ狩り
お改め
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〇お改め
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〇シシ狩り
写真一覧
お改め
解説文
山中の「お改め」と「シシ狩り」は、2つの祭事を一連の予祝行事として伝承したものである。前者は、御神体とする米の状態を検分するというもので、稲には神霊が宿るとする、稲霊の信仰を彷彿とさせる。後者は、シシ(猪や鹿など)に見立てた餅を弓で射つというもので、田畑を荒らす害獣の防除を願う行事であり、他に類例も少なく注目される。 「お改め」では、お筥に納められている米を、山中八幡神社裏手の小高い山の上にある、甘ノ宮と称する小社から下げてきて、榊の葉を咥えつつ、神職と宮総代だけで秘かに検分する。米の色艶や虫の付き具合をみるもので、後段の「シシ狩り」が終わった直後に、神主より「虫がたくさん付いていたので、今年は雨が多い」などと、その年の占い事として報告される。 「シシ狩り」は、猪や鹿などに作物を荒らされないよう、その年の豊作を祈願する予祝的な行事で、シシと称して獣に見立てたシトギ餅に向かって、氏子らが順次矢を放っていく。当たれば豊作だなどともいうが、なかなか上手くはいかず、次第に笑い声も高まっていく。最後には料理するとして、シシ肉を分け、人々に配られる。
詳細解説▶
詳細解説
山中の「お改め」と「シシ狩り」は、島根県江津市桜江町長谷の山中地区に伝わる行事で、異なる2つの祭事を一連の予祝行事として継承している。前者は、御神体とする米の様態を検分するというもので、後者は、田畑を荒らす害獣の防除を願うものとされている。行事日は、毎年旧暦3月13日としていたが、今日ではこの日に近い日曜日を当該日にあてている。 江津市は島根県西部に位置し、その市の南端に桜江町長谷がある。かつては、石州和紙の原材料である楮や三椏などの産地で、キリハタと呼ばれる焼畑や、炭焼きも盛んであったが、近年では林業と谷あいを利用した稲作農業が中心となっている。当地は、こうした山間部であることから、猪や鹿などによる被害も少なくなかった。昨今では、勤めに出る者も増えつつある一方、過疎化も看過できない状況にある。山中地区は、旧長谷村の小字のひとつで山中八幡神社を有するが、西・郷・東の3地区からなっており、それぞれより宮総代を1名ずつ輪番で選出し、この3名と神職が主となって諸行事の運用にあたっている。 当日の午後になると、三々五々、氏子らは神社拝殿に集まってくる。「お改め」は、お筥に納められている米(玄米)を社殿後背の小高い山の上にある小祠から担ぎ下げてきて、いったん本殿内に納め、榊の葉を咥えつつ、神職と宮総代だけで秘かに検分するというものである。この小祠のことは、特に甘ノ宮または元宮などと呼んでいる。ここでは米(5合ほど)そのものが御神体とされていて、幾重にも和紙で覆われており、紙には奉納時の年銘も記されている。包紙のひとつに、天明年間の銘があるともいう。検分は、米の色艶や虫の付き具合を諮るもので、後段の「シシ狩り」が終わった直後に、神主より「虫がたくさん付いていたので、今年は雨が多い」などと、その年の占い事として報告される。また、新たに新米の奉納があった場合は、検分の際に榊葉で3回だけすくって加えることになっているが、生産者自身による清浄な米との自認を要するため、例年あるとは限らない。この「お改め」が終わると、米は炙って伸した和紙に再び包み替えされ、元のようにお筥に納め、麻紐で括って神具の鉾と鈴を通したのち、神職以下、頭上に掲げて2回振り鳴らす。こうしたのち、所定の神事が行われ、献饌・玉串奉奠・撤饌と続き、お筥は再び甘ノ宮へと還御し、安置される。なお、お筥以外にも小さな犂や鍬、蓑や草鞋などの農具を模した神具も付随する。また、献饌では「シシ狩り」に用いるシシや弓矢も併せて献じられている。 甘ノ宮から戻ってくると「シシ狩り」がある。イカリ神事ともいう。これは、猪や鹿などに作物を荒らされないよう、その年の豊作を祈願する予祝的な行事で、人々が見守るなか、シシと称し、獣に見立てた二重ねのシトギ餅に向かって矢を放つ、というものである。ここでいうシトギとは、米粉(1升)を湯水で練ったものである。篠竹で作った弓矢(弓1、矢2)で、まずは神職が天井に向かって一矢、次いでシシに向かって一矢を放つ。そして、宮総代が二手ずつシシを狙っていくと、あとは順次、参拝者が同様にして代わる代わる射ってゆく。当たれば拍手喝采、豊作だなどともいうが、なかなかそう上手くはいかず、次第に笑い声も高まっていく。やがて「シシ狩り」は頃合いを見計らって打ち止めとなり、終わると料理するといって、両手で矢を用いてシシ肉を十字に分割していく。これをイカリ分けという。小分けしたシトギは参拝者に配られるが、かつてはその場で大根汁に入れ、直会の定番料理として振る舞われた。こうして、あとは先の神職の報告があって一同一礼して直会となり、御神酒や御馳走に興じつつ、四方山話に花を咲かせる。また、併せてこの際には田植囃子と神楽も演じられて、人々は楽しい夕暮れどきを迎える。