国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
大白木の亥の子さま
ふりがな
:
おおしらきのいのこさま
ワラトビを被る子供たち
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
年中行事
その他参考となるべき事項
:
(公開期日)毎年旧暦十月初亥の日前後の休日の前日
選択番号
:
635
選択年月日
:
2023.03.22(令和5.03.22)
追加年月日
:
選択基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
佐賀県
所在地
:
佐賀県唐津市七山白木大白木地区
保護団体名
:
大白木こどもクラブ
ワラトビを被る子供たち
解説文:
詳細解説
本件は、佐賀県唐津市の大白木地区に伝承される、「亥の子さま」と呼ばれる稲の収穫祝いの行事である。地区の子供たちが、ワラトビと呼ばれる稲藁の束を頭に被って家々を祝福して廻り、その年の収穫に感謝するとともに、子供の無事な成長を祝う。各家では、土間の荒神を祀る神棚の下や玄関の上がり口などに供物を用意して子供たちを出迎える。子供たちは、各家の玄関で、「トービトビトイトイトイ」と大声で唱えながら廻り続け、世話役の合図がかかると外へ出て次の家に向かう。
子供たちを担い手として伝承されてきた特色ある行事であるが、近年は少子化によって、参加年齢の範囲を広げて行事を行うようになってきていることから、早急な記録の作成を必要とするものである。
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
写真一覧
ワラトビを被る子供たち
家の上がり口に用意された供物
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ワラトビを被る子供たち
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家の上がり口に用意された供物
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解説文
本件は、佐賀県唐津市の大白木地区に伝承される、「亥の子さま」と呼ばれる稲の収穫祝いの行事である。地区の子供たちが、ワラトビと呼ばれる稲藁の束を頭に被って家々を祝福して廻り、その年の収穫に感謝するとともに、子供の無事な成長を祝う。各家では、土間の荒神を祀る神棚の下や玄関の上がり口などに供物を用意して子供たちを出迎える。子供たちは、各家の玄関で、「トービトビトイトイトイ」と大声で唱えながら廻り続け、世話役の合図がかかると外へ出て次の家に向かう。 子供たちを担い手として伝承されてきた特色ある行事であるが、近年は少子化によって、参加年齢の範囲を広げて行事を行うようになってきていることから、早急な記録の作成を必要とするものである。
詳細解説▶
詳細解説
大白木の亥の子さまは、佐賀県唐津市の大白木地区に伝承される、稲の収穫祝いの「亥の子」の行事である。地区の子供たちが、ワラトビと呼ばれる稲藁の束を頭に被って集落内の家々を祝福して廻り、その年の収穫に感謝するとともに、子供の無事な成長を祝う。 大白木地区は、九州北部の背振山地の浮岳中腹に位置する山間集落である。生業は稲作を中心とする農業と果樹栽培である。かつて東松浦郡七山村に属したが、平成18年(2006)1月に唐津市に編入されている。 本行事は、毎年旧暦10月の初亥の日前後に行なわれ、当地では「亥の子さま」と呼ばれている。行事の担い手は、地元の小学生を中心とする子供たちである。かつて高学年の小学生と中学生の男子で行なわれる行事であったが、子供の数の減少により、近年では女子や低学年の小学生、未就学児も参加し、大白木こどもクラブの行事として行なわれている。 行事は、前日までに、その年に収穫された長く柔らかい稲藁を用いて、ワラトビを作ることから始まる。ワラトビは、藁束の上方の先端を編み込み、下方を放射状に広げたもので、その名称は、稲刈り後の藁積みの屋根部分を指す呼称に由来する。かつては子供たちだけで作っていたが、近年は参加する子供の親も加わり、地区の公民館で古老に作り方を教わりながらワラトビ作りをする。完成したワラトビは、自宅に持ち帰り当日まで保管しておく。 行事当日は、夕方になると、子供たちがワラトビを持って公民館に集まり、地区の世話役が集落を廻る順路と道中の注意事項などを確認した後、ワラトビを被って地区の家々を順番に訪問する。各家では、土間の荒神を祀る神棚の下や玄関の上がり口などに供物を用意して子供たちを出迎える。供物は、栗おこわや赤飯、ダイコンとニンジンのなます、カマボコ、レンコン、サトイモ、シイタケ、ゴボウなどの煮しめのほか、ボタモチなどを入れた一升枡やお神酒などで、箕の上に乗せ、さらに花瓶にさした菊の花と菓子も供え、柳の箸などを添える。菓子が供えられる以前は、モチやオニギリが供えられていたという。 子供たちは各家に到着すると、その場で選ばれた先ぶれ役の子供一人が玄関に入り、「トービトビトビ」と唱えながら三周ほど土間を駆け廻る。先ぶれ役が供物の菓子などをもらって外へ出ると、今度は子供たち全員が次々に玄関に入り、先ぶれ役と同じように「トービトビトイトイトイ」と何度も大声で唱え、ワラトビの藁を撒き散らかしながら数周廻り続ける。子供たちは世話役の合図がかかると一斉に外へ出て、次の家に向かう。子供たちが去ったあとは、ワラトビの藁が、家の前や土間、玄関に散乱したままになっているが、これは祝い物だといって翌朝まで掃除はしない。このようにして、子供たちは地区の家々を廻り、全戸を訪問し終えると、再び公民館へ戻り、菓子を均等に分けて解散となる。 なお、その年に長男が誕生した家や結婚した家では、子供たちが「祝います、祝います」と声をかけてから玄関に入り、土間で相撲を取ったり、座敷で御馳走を振る舞われたりする。