国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
綾部八幡神社の旗上げ・旗下ろし行事
ふりがな
:
あやべはちまんじんじゃのはたあげはたおろしぎょうじ
選択2_旗揚げ行事
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
年中行事
その他参考となるべき事項
:
・公開日
毎年7月15日、秋分の日の翌日
選択番号
:
636
選択年月日
:
2024.03.21(令和6.03.21)
追加年月日
:
選択基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
佐賀県
所在地
:
佐賀県三養基郡みやき町
保護団体名
:
綾部八幡神社氏子総代会
選択2_旗揚げ行事
解説文:
詳細解説
本件は、佐賀県みやき町の綾部八幡神社に伝承される風占いの行事で、神旗と呼ばれる麻の旗を境内にある神木に取り付け、旗の巻き具合などから農作物への風雨の影響や豊凶が占われる。7月15日に旗上げが行われ、身を清めた氏子の男衆が神木に登り、竹竿の先につけた神旗を樹上高くに掲げる。秋分の日の翌日に旗が神木から下ろされるまで、神社の宮司が毎日朝夕に旗のなびき方、巻き具合などの様子を記録し、天候や作況を予想する。
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
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選択2_旗揚げ行事
選択2_旗下し行事
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選択2_旗揚げ行事
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選択2_旗下し行事
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解説文
本件は、佐賀県みやき町の綾部八幡神社に伝承される風占いの行事で、神旗と呼ばれる麻の旗を境内にある神木に取り付け、旗の巻き具合などから農作物への風雨の影響や豊凶が占われる。7月15日に旗上げが行われ、身を清めた氏子の男衆が神木に登り、竹竿の先につけた神旗を樹上高くに掲げる。秋分の日の翌日に旗が神木から下ろされるまで、神社の宮司が毎日朝夕に旗のなびき方、巻き具合などの様子を記録し、天候や作況を予想する。
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詳細解説
綾部八幡神社の旗上げ・旗下ろし行事は、佐賀県三養基郡みやき町の綾部八幡神社に伝承される風占いの行事であり、神旗と呼ばれる麻の旗を境内にある神木に樹上高く掲げ、旗の巻き具合などから農作物への風雨の影響や豊凶が占われる。 みやき町は、佐賀県東部に位置する三養基郡に属し、筑紫平野の穀倉地帯として稲作や麦、大豆の畑作が盛んに行われてきたが、近年は都市化が進み、生業形態が変わり農業従事者も減少している。綾部八幡神社は、九州北部の交通の要衝であった長崎街道の中原宿に位置し、主祭神の八幡神とともに風神を祀る社として知られ、古くから風除けの信仰を集めてきた。 本行事の起源については、平安時代中期、隆信沙門という仏僧が疫病や風水害に苦しむ村人を救うため当地の石谷山の山頂にて一万部の法華経を読誦したという伝説に由来する。隆信は九千部までの読誦で殉じたが、その遺志を村人が引き継ぎ、山頂に旗を上げて祈るようになったことがはじまりと伝えられている。元禄14年(1701)建立の石造の鳥居には、現在の旗上げ行事のような旗を用いた風占いを思わせる銘文が刻まれており、近世には既に類似した習俗が行われていたことが推測される。また、綾部八幡神社には行事に用いられた明治期の旗が保管されている。 神旗は、縦一尺二寸、横一尺の大きさで、麻製の布で作られており、中央には「謹請風神御祈祷守護之璽」、その左右に年号と月日が宮司によって墨書きされる。かつては、14歳未満或いは60歳以上の女性が一晩で織り上げていたが、現在は麻布を購入している。 本行事は、7月の旗上げ行事と9月の旗下ろし行事の二つから構成される。旗上げ行事の期日については、神社に現存する麻旗に記載された墨書や資料によれば、明治43年(1910)までは旧暦6月15日であり、翌44年からは新暦7月15日となり、現在に至る。 旗上げ行事当日は、綾部八幡神社の社務所において、当社の氏子総代たちが神旗を竹竿に括り付ける紐を三車と称する組み方でつくる。宮司、氏子総代、神旗人と称される氏子の中から選ばれた男性3人によって風水害防除・五穀豊穣の祈祷が行われた後、神旗人が神社東側の小川に設けられた禊場で全身を清め、締め込み姿となり、一人ずつ順番に境内にある神木の大銀杏に登る。神旗は、氏子総代の手で竹竿の先端に結ばれ、神木の下から氏子の人々と神旗人が息を合わせながら、少しずつ引き上げていき、旗が翻るように樹の頂上よりさらに高い位置で結びつける。その後、旗下ろし行事が行われる秋分の日の翌日までの約70日間、綾部八幡神社の宮司が毎日朝夕に旗を見上げ、旗のなびき方や巻き具合などの様子を記録し、天候や作況を予想する。左巻は風の兆、右巻は雨の兆、俵巻きは豊作の兆、逆さ巻は災害の兆など、旗の巻き方は、約30種類にも及ぶといわれている。また、その期間中は「綾部さん参り」と称して、農家を中心とした多くの人が神社に訪れ、二百十日、二百二十日の風日の平穏を祈願し、風除け祈願の神札を貰い受ける。神札は、帰宅後水田などに刺し立てられる。参詣者は、みやき町をはじめ小城市や多久市など県東部の農業従事者が多いが、かつては福岡県など広域からも訪れていた。 旗下ろし行事の当日は神社境内で奉納相撲が行われた後、神旗人によって旗が神木から引き下ろされる。そして、宮司が旗の状態とこれまでの予想を総合し、その年の農作物への風雨の影響や豊凶を判断する。 神木から下された竹には無病息災などの御利益があるといわれており、先端部分の小枝を厄除けのお守りとして持ち帰る人たちも多い。