国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
九州地方のきじ馬・きじ車製作技術
ふりがな
:
きゅうしゅうちほうのきじうまきじぐるませいさくぎじゅつ
手斧による製作の様子
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種別1
:
民俗技術
種別2
:
生産・生業
その他参考となるべき事項
:
・公開日:通年
選択番号
:
641
選択年月日
:
2025.03.28(令和7.03.28)
追加年月日
:
選択基準1
:
(三)地域的特色を示すもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
九州
所在地
:
九州地方
保護団体名
:
特定せず
手斧による製作の様子
解説文:
詳細解説
九州地方のきじ馬・きじ車製作技術は、九州地方に広く伝承されてきた、野鳥の雉を象った車型の木製玩具を製作する技術である。子供が紐を付けて曳いたり、上に乗って遊んだりする玩具で、赤色や黄色などを基調に鮮やかに彩色されたものが多く、2つまたは4つの車輪が付く。里山で採取できる木材を材料とし、主に手斧や鑿を使って作られる。製作の工程は、原料となる木材の採取から始まり、材料の切断、切りこみ、仕上げ、着色、車つけの順である。このような製作の工程と技法を基本としながら、形状や大きさ、車輪の数、色彩、模様などに地域的な相違もみられ、樹皮つきの木地のまま彩色しないで木目を活かして仕上げるものもある。
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
写真一覧
手斧による製作の様子
製品
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手斧による製作の様子
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製品
解説文
九州地方のきじ馬・きじ車製作技術は、九州地方に広く伝承されてきた、野鳥の雉を象った車型の木製玩具を製作する技術である。子供が紐を付けて曳いたり、上に乗って遊んだりする玩具で、赤色や黄色などを基調に鮮やかに彩色されたものが多く、2つまたは4つの車輪が付く。里山で採取できる木材を材料とし、主に手斧や鑿を使って作られる。製作の工程は、原料となる木材の採取から始まり、材料の切断、切りこみ、仕上げ、着色、車つけの順である。このような製作の工程と技法を基本としながら、形状や大きさ、車輪の数、色彩、模様などに地域的な相違もみられ、樹皮つきの木地のまま彩色しないで木目を活かして仕上げるものもある。
詳細解説▶
詳細解説
九州地方のきじ馬・きじ車製作技術は、九州地方一円に広く伝承されてきた、野鳥の雉を象った車型の木製玩具を製作する技術である。きじ馬・きじ車は、子供が紐をつけて曳いたり、上に乗ったりして遊ぶ玩具で、細長い胴体に2つ、または4つの車輪が付く形状を基本とし、赤や緑を基調とする鮮やかな彩色が施されていることが特徴である。その大きさは、1メートルを超える大型のものから、2センチメートルほどの小型のものまで大小がある。また、開運や縁結びなどの縁起物としても人気があり、かつては、九州各地の社寺の門前市やえびす市などの露店に並び、参詣者に買い求められ、また、新築祝いや子供の誕生祝いに、きじ馬を贈る習俗もみられた。 その名称と由来については、山中で道に迷った高僧が一羽の雉に導かれて寺院を建立したという縁起に基づく伝承があり、また、山間部で椀などの木製品を製作していた木地師との関わりを説く伝承も色濃く伝えられている。 製作の工程は、原料となる木材の採取から始まり、材料の切断、切りこみ、仕上げ、着色、車つけの順となる。材料となる木材は、ヤマギリやマツ、ホオノキやコシアブラなどで、冬の間に近隣の雑木林などで伐採して作業場に運び、日陰でよく乾燥させておく。材料の準備が整うと、胴体の製作に取り掛かる。材料となる丸太を製作するきじ馬の大きさに応じて鋸で切り分け、木の曲がり具合や断面の木目などをみて、雉の頭にする向きと背になる側を決める。木取りが定まると、切りこみの工程に移る。切り込みでは、手斧や鑿、銑などを用い、荒づくりと称して、胴体となる木材から雉の頭や尾、胸、顎にあたる部分を削り出す。次いで、小刀で残った樹皮を取り除き、表面を鉋や鑢で滑らかにして全体の形を整える。そして、鑿や鋸を用いて、車軸を取り付けるための溝を切る。 仕上げの工程では、車軸の製作と取り付けを行う。車軸は心棒と呼ばれ、胴体とは別の木材を使って作り、溝を入れた胴体部分の下の面に取り付ける。こうして木工の工程が終わると着色の工程に入る。着色は、木地に色を付けていく作業で、胴体に下書きし、木目を活かしながら、雉の目や羽、縞や斑点、椿の花などの模様を描いていく。最後が車つけの工程で、丸太を皮付きのまま輪切りにして作った車輪を心棒に差し込み、クサビで止めて完成となる。 きじ馬・きじ車は、このような製作の工程と技法を基本としながら、形状や大きさ、車輪の数、色彩、模様などに地域的な相違もみられ、その形態上の特徴に基づいて、人吉系、北山田系、清水観音系の3つの系統に分類されている。人吉系は、熊本県人吉市を中心に球磨川流域に伝承されてきた系統で、2輪の形式で、赤、黒、緑、黄、白の5色で彩色され、胴体の背に「大」の字を書き入れることが特徴である。北山田系は、大分県玖珠郡玖珠町北山田を伝承地とし、2輪の形式であるが、背に馬具の鞍を付け、樹皮つきの木地のまま彩色しないで仕上げることが特徴である。清水観音系は、福岡県みやま市瀬高町の清水寺を発祥とする系統で、4輪の形式で赤と緑で彩色される。この系統は、雌型と雄型を作り分けるのが大きな特徴であり、雌型は人吉系に、雄型は北山田系に類似し、九州地方における技術の伝播や交流があったことが推測されている。また、これらの系統にあっても、鶏冠や嘴が付いたり、雉の子や米俵を背負ったりしたものもあり、伝承地ごとの工夫による細微の造形を加えながら、製作技術が伝えられてきたことがうかがわれる。