国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
山北のボタモチ祭
ふりがな
:
さんぽくのぼたもちまつり
山北のボタモチ祭
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
年中行事
その他参考となるべき事項
:
公開日:毎年12月2日(中浜・杉平)、毎年1月12日(岩石)(※選択当時・お出掛けの際は該当する市町村教育委員会などにご確認ください)
記録:『山北のボタモチ祭り』(山北町教育委員会・平成3年3月)
※この行事は、平成11年12月21日に「山北のボタモチ祭り」として重要無形民俗文化財に指定されている。
選択番号
:
1
選択年月日
:
1986.12.17(昭和61.12.17)
追加年月日
:
選択基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
新潟県
所在地
:
保護団体名
:
中浜ボタモチ祭保存会,杉平ボタモチ祭保存会,岩石ボタモチ祭保存会
山北のボタモチ祭
解説文:
詳細解説
この行事は、田畑の収穫や漁業などが無事終了したことを感謝して、人々が鎮守に集まって大きなぼた餅を作って食べてお籠りをして一夜を明かす行事である。例えば、村上市中浜では、念仏堂でトウヤの指揮のもと若い衆がぼた餅を作る。ぼた餅は祭壇に供えられるほか、新婚や婿入りしてきた者にたくさん食べさせたり、新婚や新築の家に届けられる。(※解説は選択当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
写真一覧
山北のボタモチ祭
山北のボタモチ祭
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山北のボタモチ祭
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山北のボタモチ祭
解説文
この行事は、田畑の収穫や漁業などが無事終了したことを感謝して、人々が鎮守に集まって大きなぼた餅を作って食べてお籠りをして一夜を明かす行事である。例えば、村上市中浜では、念仏堂でトウヤの指揮のもと若い衆がぼた餅を作る。ぼた餅は祭壇に供えられるほか、新婚や婿入りしてきた者にたくさん食べさせたり、新婚や新築の家に届けられる。(※解説は選択当時のものをもとにしています)
詳細解説▶
詳細解説
旧山北町は、新潟県の最北端に位置し、中浜は日本海に面した海岸部、杉平と岩石はやや内陸部に位置する集落である。 例えば、中浜では、月遅れで正月を行っていた頃は1月2日に、1月に正月を行うようになってからは12月2日に行っている。かつては田畑の収穫や漁業などの生業が無事に終わったことを感謝するため、各家の主人かあるいは誰か1人が、村の鎮守に集まり、大きなボタモチを作って食べ、お籠もりして一夜を明かしたという。 明治末に現在の消防団である火防組ができてからは、ワカゼが行うようになり、場所も鎮守である吉野神社ではなく念仏堂に変わった。ワカゼは、火防組の若い衆で、現在では中学を卒業すると入会し42歳までの男で組織されている。 12月2日のボタモチ祭り当日、各家では午前中から小豆を煮、昼頃には御飯を炊いてボタモチを作る。ボタモチができると家の神仏に供え、その後夕方までに石動神社と、同じ場所に祀られている十三仏様に重箱につめた団子状のボタモチとお神酒を持ってお参りする。各家では石動様へのお参りをすませると、夕飯時にボタモチを家族で食べ、これで家ごとの行事は終了する。 念仏堂での行事は、夕方6時頃から夜12時頃まで行われる。以前は、祭り前日にトウヤが二合枡と三合枡を背中合わせにしたボタモチ祭り専用の枡を持って、各家から糯米2合と小豆を茶碗1杯、それに大豆3合を集め、これでボタモチと豆腐汁を作った。現在では糯米、小豆、豆腐の購入費として各家からお金を100円ずつ集めている。また、不幸のあった家ではこれら材料の提供をしないことになっている。現在もトウヤはバンマエといわれる回り番で各家がつとめ、祭りの準備、念仏堂での行事の進行役をつとめる。祭りの当日、トウヤで小豆を煮るが、これはトウヤの家の主婦が行うことになっている。このほかトウヤは夕方までに念仏堂の掃除をし、鍋、味噌、醤油、水等の準備をしておく。 夕方6時頃になると、ワカゼの組頭や小頭がやってきて、念仏堂の正面に「石動神社」、両脇に「石動五社大権現」「十三仏」の掛け軸をかけて準備をする。その後一般のワカゼが御神酒、灯明、さい銭、木炭を持って集まってくる。ワカゼが大方そろうと若手が豆腐汁を作り始め、これが出来上がるとボタモチ祭りの行事が始まる。 まず、参加者一同が御神酒をいただく。次にトウヤの引き継ぎが行われる。これがすむと宴会になる。しばらくすると組頭の指示で若手がスリコギ作りを始める。スリコギは念仏堂の近くにある榎の枝で作り、祭壇に供えた後、小頭と若手数人がこれを持ってトウヤの家に行き御飯をついてボタモチを作る。ボタモチはお供え用とお祝い用と食用の3種あり、以前は塩味のボタモチを作っていたが、現在は普通の甘いボタモチを作っている。これを念仏堂に運んで、お供え用とお祝い用のボタモチを祭壇に供え、その後ワカゼ全員でボタモチを食べる。最初に配られたボタモチはすべて食べるが、新婚のワカゼや、特にめでたいことがあったワカゼに対しては、他のワカゼにくらべてより多くのボタモチを盛り、多く食べるよう責め立てる。腹一杯で食べられないというと、両脇から押さえつけて腹を出させ、火のついたスリコギを腹に近づけてむりやり腹をへこませ、まだ食べられると強要する。 この行事は、新婚のワカゼを祝福し、子孫繁栄を祈願する意味があるといわれており、また婿入りしてきたワカゼに対しては仲間入りを承認する意味があるといわれている。 こうしてボタモチを食べ終わると、山形県温海町鼠ヶ関原海の長治郎家へお祝いのボタモチを届けに行き、長治郎家からは酒をいただく。長治郎家が終わると、原海周辺に中浜から嫁や婿に行った者の家を訪ね、同じようにお祝いのボタモチを届け、お礼の酒をもらってまわる。 その後、中浜に帰ってくると、村内の新婚の家や、住まいを新築した家を訪ねお祝いのボタモチを届ける。以前は、起きてこない家などでは、夫婦の寝室にボタモチを投げ込んだり、玄関や窓にボタモチをすりつけたりしてきたというが、現在では行わなくなり、酒をもらうようになっている。 これらの行事がすむと、お供えしてあったボタモチをちぎってそれぞれ家に持ち帰り、家族全員でいただいてすべての行事が終了する。 この行事は、村人の共食により親睦が図られるとともに、ボタモチの強要を通して地区民の社会的容認がなされるなどの特色があり貴重である。 (※解説は選択当時のものをもとにしています)