国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
庄内のモリ供養の習俗
ふりがな
:
しょうないのもりくようのしゅうぞく
庄内のモリ供養の習俗(正常院)
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
人生・儀礼
その他参考となるべき事項
:
公開日:毎年盆あけの8月20日ほか(※選択当時・お出掛けの際は該当する市町村教育委員会などにご確認ください)
記録:『盆行事Ⅴ(山形県・新潟県)(無形の民俗文化財記録第47集)』(文化庁文化財部・平成16年3月31日)
記録:『庄内のモリ供養の習俗調査報告書』(山形県教育委員会・平成21年3月23日)
映像:『庄内のモリ供養の習俗』(山形県教育委員会・平成23年3月)
選択番号
:
1
選択年月日
:
2000.12.25(平成12.12.25)
追加年月日
:
選択基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
山形県
所在地
:
保護団体名
:
特定せず
庄内のモリ供養の習俗(正常院)
解説文:
詳細解説
庄内地方では、里近くにあるそれほど高くない山や樹木がこんもりと茂った森などをモリなどと呼んで、死者の霊が一定期間とどまるところとされてきた。モリ供養は、毎年旧盆あけの8月20日頃から人びとがモリに花や供物などを持って訪れ、有縁・無縁の死者の供養を行うものである。(※解説は選択当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
写真一覧
庄内のモリ供養の習俗(正常院)
庄内のモリ供養の習俗(光星寺)
庄内のモリ供養の習俗(持地院)
庄内のモリ供養の習俗(清水の三森山)
庄内のモリ供養の習俗(清水の三森山)
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庄内のモリ供養の習俗(正常院)
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庄内のモリ供養の習俗(光星寺)
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庄内のモリ供養の習俗(持地院)
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庄内のモリ供養の習俗(清水の三森山)
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庄内のモリ供養の習俗(清水の三森山)
解説文
庄内地方では、里近くにあるそれほど高くない山や樹木がこんもりと茂った森などをモリなどと呼んで、死者の霊が一定期間とどまるところとされてきた。モリ供養は、毎年旧盆あけの8月20日頃から人びとがモリに花や供物などを持って訪れ、有縁・無縁の死者の供養を行うものである。(※解説は選択当時のものをもとにしています)
詳細解説▶
詳細解説
庄内地方は、山形県の中央部を流れる最上川の下流に広がる地域であり、良質の庄内米の産地である庄内平野がその大部分を占めている。北には鳥海山、東には出羽三山で知られる月山・湯殿山・羽黒山などの秀峰がそびえ、平野部は西に展開して日本海に面し直線状の砂丘帯となっている。 庄内地方では、里近くにあり、それほど高くない山や樹木がこんもりと高く茂った森などをモリあるいはモリノヤマと呼んでおり、死者の霊が一定の期間とどまるところと考えられている。 モリ供養は、毎年旧盆あけの8月20日頃からこうした山や森などに花や供物などを持って訪れ、有縁・無縁の死者の供養を行うものであり、モリ詣りとも呼ばれている。盆で送られた霊や未だ清まらない霊はモリに集まり、そこで供養され、やがては月山や鳥海山などさらに高い山々に行き、鎮まるといわれている。 モリ供養の「モリ」とは、「森」や「亡利」あるいは「亡霊」などの諸説があり、地域によってその表記は異なっている。庄内地方には、鶴岡市清水や東田川郡立川町三ヶ沢、西田川郡温海町小岩川、また酒田市日吉町の持地院や飽海郡八幡町の観音寺などにモリと呼ばれる場所があり、この地方を基本的な信仰圏としつつも、新潟県北部や秋田県南部などからの参詣者を集めているところもある。地域によっては、寺院や地区内の地蔵堂などでもモリ供養が行われているが、鶴岡市の清水の森や立川町の三ヶ沢の森などは、モリ供養の古い形態を伝えているとされ、前者は西の森、それに対して後者は東の森とも称されている。 清水の森は、鶴岡市の西南部に位置する小丘陵で、三森山【みつもりやま】とも呼ばれている。清水のモリ供養は、8月22日と23日の両日、山麓にある上清水・中清水・下清水の三地区が中心となって行われる。三森山の尾根上には、優婆堂、閻魔堂、大日堂、観音堂、地蔵堂、勢至堂、阿弥陀堂の諸堂や藤墓と呼ばれる石塔群などが点在し、優婆堂から閻魔堂までは地獄、大日堂から阿弥陀堂までは極楽を表しているとされる。 参詣者は早朝から花や米などを持参して山に登り、思い思いに諸堂や墓を巡拝する。登山道では、無縁仏に扮した、ヤッコと呼ばれる子どもたちが待ち受けていて参詣者に小銭や米をねだる。このモリ供養の期間のみ、3地区にある曹洞宗の善住寺、天翁寺、桑願院、浄土真宗の隆安寺の4か寺の僧侶が受け持ちの堂や墓に詰めており、参詣者は堂の受付にて五色の梵天や木羽仏と呼ばれる小さな経木塔婆を求め、また新仏の歯骨を納めるなどして僧侶に死者供養を依頼する。 参詣者は、堂前につくられた施餓鬼棚に向かって座り、堂内で僧侶が塔婆を読み上げて供養を行う。藤墓は、不慮の死を遂げた者の霊が集まるとされる場所で、ここにも僧侶が詰めており、参詣者の依頼に応じて供養が行われている。一方、立川町の三ヶ沢の森は、曹洞宗光星寺の裏手にあり、8月21日から23日にかけてモリ供養が行われる。参詣者は、光星寺本堂の受付所で木羽仏や梵天を求め、山中にある光明堂まで登り、そこで僧侶に死者の供養をしてもらう。新仏の歯骨を持って登る者も多く、歯骨は光明堂の背後に設けられた納骨堂に納められる。 この習俗は、このような有縁・無縁の死者を供養する習俗であり、庄内地方に色濃く分布しているものである。死者の霊が集うとされる霊山は各地にあるが、モリ供養は、里に近い山や森で行われる死者供養の習俗の典型例の1つと考えられ、わが国の民間信仰や人生儀礼を理解する上で貴重である。いっぽうで信仰圏の縮小や寺院行事化の傾向などがみられ、変貌の恐れの多いものでり、早急に記録を作成する必要がある。 (※解説は選択当時のものをもとにしています)