国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
史跡名勝天然記念物
主情報
名称
:
末浄水場園地
ふりがな
:
すえじょうすいじょうえんち
末浄水場園地(園地全景)
写真一覧▶
解説表示▶
種別1
:
名勝
種別2
:
時代
:
近代
年代
:
西暦
:
面積
:
80103.18 m
2
その他参考となるべき事項
:
告示番号
:
特別区分
:
特別以外
指定年月日
:
2010.02.22(平成22.02.22)
特別指定年月日
:
追加年月日
:
指定基準
:
一.公園、庭園
所在都道府県
:
石川県
所在地(市区町村)
:
石川県金沢市
保管施設の名称
:
所有者種別
:
所有者名
:
管理団体・管理責任者名
:
末浄水場園地(園地全景)
解説文:
詳細解説
昭和5年(1930)に開設された金沢市の最初の浄水施設の園地で、昭和7年(1932)に完成した。園地と東屋が浄水場の計画軸線を定めるのに基点を成したことに特徴があり、噴水を活かした近代の浄水場に相応しい洋風整形式の独特の造形意匠が見られる。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
末浄水場園地(園地全景)
末浄水場園地(泉水)
写真一覧
末浄水場園地(園地全景)
写真一覧
末浄水場園地(泉水)
解説文
昭和5年(1930)に開設された金沢市の最初の浄水施設の園地で、昭和7年(1932)に完成した。園地と東屋が浄水場の計画軸線を定めるのに基点を成したことに特徴があり、噴水を活かした近代の浄水場に相応しい洋風整形式の独特の造形意匠が見られる。
詳細解説▶
詳細解説
金沢の中心街から約8km東南に位置する末浄水場は、昭和5年(1930)に金沢で最初に開設された浄水施設である。浄水場への取水井は、寛文5年(1665)に新田開発の灌漑施設として開削された寺津用水の中流域に位置し、浄水場まで約1.8kmにわたって導水管が埋設された。 末浄水場の特質は、金沢における近代浄水施設の嚆矢であることのみならず、噴水施設を持つ幾何学的な意匠の泉水、それと一体の機能を持つ東屋、その周囲に配植された一群の樹木などから成る中央の空間が、浄水場全体の計画軸線及び造園的意匠を定めるに当たって基点を成したことにある。 浄水場の正門へと通ずる道路の直下には浄水場への導水管が埋設され、現在は失われて残らないが、道路の両側に浄水場への軸線を強調してサクラが列植された。導水管は正門の内側で2方向に分岐し、一方は水の質・量を調整する着水井を経て3基の沈殿池へと導水され、他方は正門の北に位置する泉水の噴水施設へと繋がっている。噴水施設から噴き上がった水はアーチを描き、北側の高所に設けられた東屋の漏斗状の頂部へと着水するよう設計されている。泉水は重複する大小3つの楕円形のコンクリート製水槽から成り、水面高の異なる水槽を水が流下するのに従って、水質の管理を行うことを目的として造られたものである。泉水と東屋との間には、石垣や刈込を左右対称に配置し、泉水の西南側にも楕円形状に刈込を施すなど、泉水と東屋を中心とする空間には直線・円・楕円をモチーフとする整形式の造形意匠が採用されている。この空間は、浄水場開設の2年後に当たる昭和7年(1932)に完成した。 東屋の西方に延びる軸線に沿って通路が設けられ、その延長線上の敷地西端に当たる位置には緩速浄水集合井が設けられている。通路の左右には、6基の緩速ろ過池をはじめ、各々に付随して緩速浄水井及びその上屋が左右対称に設けられている。敷地東南端に位置する3基の沈殿池から、敷地中央に位置する東屋の直下を経て、6基の緩速ろ過池及び緩速浄水集合井に至るまで、水が自然流下するのに伴って、機能的かつ効率的に浄化が進むよう施設配置が行われている。 このように、東屋は、正門へと通ずるサクラ並木の道路及びその延長線上に位置する泉水から成る南北方向の軸線と、東屋に端を発して緩速浄水集合井まで延びる通路から成る東西方向の軸線との交点に位置し、浄水場全体における水の機能的な経路及び造園的な空間・意匠の設計に際して要を成したことがうかがえる。 金沢における上水道の全体計画については、京都帝国大学教授であった大井清一の指導の下に、大正12年(1923)に元名古屋市水道技師の石井一夫が調査主任として採用され、昭和3年(1928)から金沢市水道事務所長兼技師長として実施設計に着手した。その過程では、昭和2年(1927)6月に政府に提出された末浄水場の原設計書が大幅に変更され、園地の設置方針が盛り込まれたことから、石井一夫がその設計に深く関わったことが想定できる。石井は名古屋市・函館市・別府市の水道設計にも関わり、特に昭和12年(1937)に完成した名古屋市の稲葉地配水塔においては、水道施設と軸線を揃えて噴水を設置するなど、末浄水場とも共通する空間意匠の設計を行ったことが知られる。 以上のように、末浄水場の泉水・噴水施設・東屋から成る中央の空間には、噴き上がる動的な水の姿を活かし、近代の浄水場に相応しい整形式の独特の造形意匠が見られ、特に東屋は、浄水施設の計画軸線を定める上で重要な基点を成すとともに、浄水場の全体に張り巡らされた水の機能的な浄化経路において象徴的な意義をも持っていたものと考えられる。近代的な造園意匠を取り入れた末浄水場の園地としての芸術上・観賞上の価値は高く、よって全体を名勝に指定し、その保護を図ろうとするものである。