国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
史跡名勝天然記念物
主情報
名称
:
志布志のカワゴケソウ科植物生育地
ふりがな
:
しぶしのかわごけそうかしょくぶつせいいくち
志布志のカワゴケソウ科植物生育地(カワゴケソウとウスカワゴロモの混生)
写真一覧▶
解説表示▶
種別1
:
天然記念物
種別2
:
時代
:
年代
:
西暦
:
面積
:
243737.81 m
2
その他参考となるべき事項
:
告示番号
:
特別区分
:
特別以外
指定年月日
:
2010.02.22(平成22.02.22)
特別指定年月日
:
追加年月日
:
指定基準
:
(八)池泉、温泉、湖沼、河、海等の珍奇な水草類、藻類、蘇苔類、微生物等の生ずる地域,(十)著しい植物分布の限界地
所在都道府県
:
鹿児島県
所在地(市区町村)
:
鹿児島県志布志市
保管施設の名称
:
所有者種別
:
所有者名
:
管理団体・管理責任者名
:
志布志のカワゴケソウ科植物生育地(カワゴケソウとウスカワゴロモの混生)
解説文:
詳細解説
急流の水中に生育し,種子植物であるがコケ類のような特異な形態を示し,中国南部・タイから南九州に隔離分布する学術上価値の高い植物で,2種の混生が見られる希少な地域である安楽川と,良好な生育環境である前川との生育地を指定するものである。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
志布志のカワゴケソウ科植物生育地(カワゴケソウとウスカワゴロモの混生)
志布志のカワゴケソウ科植物生育地(安楽川)
写真一覧
志布志のカワゴケソウ科植物生育地(カワゴケソウとウスカワゴロモの混生)
写真一覧
志布志のカワゴケソウ科植物生育地(安楽川)
解説文
急流の水中に生育し,種子植物であるがコケ類のような特異な形態を示し,中国南部・タイから南九州に隔離分布する学術上価値の高い植物で,2種の混生が見られる希少な地域である安楽川と,良好な生育環境である前川との生育地を指定するものである。
詳細解説▶
詳細解説
カワゴケソウ科植物は世界の熱帯~亜熱帯地方を中心におよそ47属約270種が分布し、日本ではカワゴケソウ属とカワゴロモ属が分布している。この仲間はほとんどが急流の水中に生育する植物で、流水中に適応した多様で特殊な形態に変化した植物である。種子植物であるが形態はコケ類・藻類のようで、根は平たい葉状体となり岩の表面に広がり、固着器官で岩盤などに取り付き、葉は小さな針状で光合成は根から変化した葉状体で行っている。 カワゴケソウ属はアジア東部に約7種、カワゴロモ属はインド以東のアジア地域に約10種が知られている。日本での分布は、カワゴケソウ属が鹿児島県の6河川(支流を除く)に2種(かつては4種とされていたが最近2種とされた)、カワゴロモ属は鹿児島県の7河川に3種、宮崎県の1河川に1種が知られている。日本周辺では中国南部(福建省、雲南省、香港、海南島)、タイなどには分布するものの、台湾、フィリピン、韓国などには分布せず、隔離分布している。 志布志市の安楽川にはカワゴケソウ(Cladopus doianus (Koidz.) Koriba, syn. C. japonicus Imamura)とウスカワゴロモ(Hydrobryum floribunadum Koidz.)が、前川ではウスカワゴロモが広い範囲に生育している。この仲間は河川ごとに分布・分化している傾向が強く、一つの河川に2属の異なる種が混生していることは世界的にも希少なものである。 カワゴケソウは根が変化した葉状体が2~4mm幅の羽状で互生状に分枝して岩の上を広がっている。葉は長さ4~8mmの退化した針状葉が葉状体の分枝部分から数枚束生する。花期は10~12月で、10月頃から2~3mmの花茎を伸ばし、先端に切れ込みのある掌状葉を密生させる。デコボコした球状の粒が葉状体の上に密生し、その先端に花弁のない花が1個つく。開花は水位が下がってつぼみが空気中に出たときによく見られる。果実は球形で、その中に0.3~0.4mmの微細な種子が入っている。 ウスカワゴロモはカワゴケソウとは異なり、葉状体が羽状に分枝せず扁平な円形状に成長する。針状葉は葉状体の各所に見られ、長さ5~8mmで数本が束生する。花期は10~12月で、針状葉が脱落しその部分に1個の花がつき、葉状体上に密生する。果実は卵形でその中に多数の微細な種子ができる。 生育地である安楽川は宮崎県都城市に源を発する二級河川、前川は志布志市内に限られる二級河川である。指定対象範囲としては、安楽川では2種が混生する中流域の河口から約8km程の高吉付近から、上流の棚ヶ下橋付近までの約3.6km、前川では生育が良好に見られる河口から約4km程の坂之上付近から、上流の十文字橋付近までの約6.1kmの範囲である。両河川とも、上流域は砂岩・頁岩で構成されている日南層群の山地と谷底平野を、中流域は厚く堆積したシラス台地基底部の溶結凝灰岩層を、下流部では砂泥の沖積デルタを河道が通っている。対象地域となる両河川の中流域では、河川がシラス台地を浸食し河床には溶結凝灰岩の岩盤が露出している。河道の両側は多くが数m~10m程度の急崖となり、人工林、二次林、竹林などが発達している。カワゴケソウ科植物は水質、流速、日照等の環境要因によって生育環境が制限されており、このような中流域では年間を通して地下水が湧出し、水深約50cm以浅で流速が毎秒50cm以上となり、明るく生育に適した環境となっている。両河川ともそれほど大きい河川ではなく、ダム等の構造物の建設はほとんどないものの、生活排水の流入や畜産業の汚水処理の不徹底などにより水質が悪化し生育状況が悪化した時期もあった。近年では、地域住民による保護活動や河川環境の監視活動が行われるようになり、比較的安定した生育状況が維持されている。 このように、通常の植物とはつくりの異なった特異な形態を示し、隔離分布を示す学術的価値が高い植物であり、2種の混生が見られる希少な地域を含む対象地域を、天然記念物に指定し、その保護を図ろうとするものである。